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KON1134:AIバブル論争・ローマ教皇の警鐘、SpaceX史上最大IPO、原発建て替え方針

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KON1134:AIバブル論争・ローマ教皇の警鐘、SpaceX史上最大IPO、原発建て替え方針

2026.06.11
2026年
KON1134:AIバブル論争・ローマ教皇の警鐘、SpaceX史上最大IPO、原発建て替え方針

ホロウィッツ氏「AIはバブルではない」とAnthropic評価額154兆円──過熱論争の中で見えてきたもの

米大手ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツのベン・ホロウィッツ氏が日本経済新聞のインタビューに応じ、「アプリケーションや基盤モデル、半導体、電力などAI関連のすべての分野で需要が拡大しており、バブルとの指摘は当たらない」との見方を示しました。一方で米国ではAIの負の側面に対する市民の懸念が強く、新規参入を排除するため規制に頼る動きがあるとも指摘しました。並行して米Anthropicは5月28日、シリーズH資金調達ラウンドで650億ドル(約10兆円)を調達し、投資後の評価額が9650億ドル(約154兆円)に達したと発表。直近の年換算売上高(ARR)は470億ドル(約7.5兆円)規模で、2025年末から数か月で5倍規模に拡大しました。6月1日にはIPOに向けた書類を米証券取引委員会(SEC)に提出しています。

ホロウィッツ氏が言っているのは、これはかつてのITバブルとは抜本が違う、新しい時代への期待値であって単なるバブルではない、という見方です。私はこの指摘自体には一定の正当性があると考えています。ただし問題は、AIがこれだけ解き放たれた時に、人間がそれを制御できるのかという点です。ホロウィッツ氏はそこには明確な答えを出していません。インタビュアーがそこを掘り下げなかったのかもしれませんが、いずれにせよ「バブルではない」というのは一つの重要な見解として記録しておくべきです。

Anthropicの売上が短期間で年率7.5兆円規模まで膨らんだのは、産業史でも珍しいスピードです。それでも開発投資が先行し、損失を計上している。AI企業に共通する構図は「需要は無限大、しかし計算インフラへの投資は無限大に近く必要」というものです。この需要と投資の競争に勝ち抜いた企業が、AIの世界を支配する。Anthropicの評価額がOpenAIに迫る規模に拡大したのは、Claude Codeなどの企業向けエージェント領域での成功が背景にあります。日本企業も「AIを誰から買うか」だけでなく「どう自社の競争力に転換するか」を真剣に考える局面に来ています。

ローマ教皇レオ14世が初の回勅「マニフィカ・フマニタス」──AI時代の人間の尊厳を問う

ローマ教皇レオ14世は5月15日、就任後初の回勅「マニフィカ・フマニタス(偉大なる人間性)」に署名し、5月25日に公表しました。回勅は、厳密にはカトリックの司教宛ての書簡ですが、近年では教皇が世界に発したメッセージの性格もあり、、AI時代における人間の尊厳保護をテーマとしています。教皇はAIの技術そのものを敵視するべきではないとしつつ、新たな形で人間の尊厳が脅かされている今、人間性を守り抜くことが責務だと訴えました。これは135年前にレオ13世が産業革命の弊害を指摘した回勅「レールム・ノヴァールム」と精神的に対をなす重要な発信です。

回勅の指摘には、耳を傾けるべきものが多くあります。AIには多くの落とし穴があり、偏見や誤解に満ちた加工画像・動画に私たちは晒されている。AI開発者は特に倫理的・精神的責任を負うべきで、権力者にはAIがもたらす脅威を抑制する責任がある。これが大きなメッセージです。私が特に重要だと考えているのは、戦争におけるAI使用への批判です。人間が兵器を制御する範囲が狭くなり、何が正義か分からなくなる。脅威の予測をAIに任せ、犠牲者を単なるデータとして扱う傾向が強まれば、紛争はますます起こりやすくなる。

もう一つ重要なのは「デジタル奴隷化」への警鐘です。教会はかつて奴隷制への対応に遅れたという反省を踏まえ、今回はAIによる人間の搾取が常態化するリスクに対し、先んじて警告を発しました。レオ14世がここまで踏み込んでAI問題に発言したのは、政治的な指導者の中に十分な抑制者が見当たらないことへの強い懸念の表れでもあると、私は受け止めています。AI規制の議論は技術論を超えて、倫理と統治の領域に踏み込みつつあります。

SpaceXが史上最大のIPO──時価総額283兆円、ただし議決権8割超を1人が掌握

米SpaceXは6月3日、新規株式公開(IPO)に伴う公募で750億ドル(約12兆円)を調達する計画を発表しました。公開価格は1株135ドル、時価総額は約1兆7700億ドル(約283兆円)。米ナスダック市場に6月12日にも上場する見通しで、調達額・時価総額ともに米国IPO史上最大となります。2019年に上場したサウジアラムコ(約290億ドル)を大きく上回ります。注意点として、中国本土・香港の投資家は対象から除外されています。

問題は中身です。SpaceXという一つの上場体に、衛星通信「スターリンク」、ロケット打ち上げ、軍事衛星「スターシールド」、そしてイーロン・マスク氏が取り込んだxAI(AIモデル「Grok」を開発)まで含まれています。これらは性質の異なる事業で、ロケット打ち上げに支障が出ればスターリンクにも波及する、AI事業の不振が宇宙事業の評価を引き下げる。こうした相互依存リスクが投資家には見えにくい。むしろバラバラに分けて、それぞれの将来性を市場に評価させる仕組みを整えてもらいたい、というのが投資家の本音ではないかと思います。

もう一つ重要なのは、ガバナンスの問題です。マスク氏はIPO後も議決権の82%超を保持し、1人で意思決定を握り続ける。テスラを保有していて株価が下落基調にある中、テスラとSpaceXの関係をどう整理するのかも不透明です。「言うことが頻繁に変わる」とも評される経営者が議決権の8割を持つ会社を、ナスダックが上場を認めるという判断には、企業ガバナンスの観点から疑問の声もあります。2025年12月期の最終損益は約7800億円の赤字。それでも283兆円という評価が成立するのは、衛星と宇宙とAIを束ねる「夢」が市場に織り込まれているからです。すべてうまくいけば壮大な物語ですが、現実とのギャップは小さくないと、私は見ています。

マイクロン時価総額1兆ドル超──日本の半導体メーカーが見送った会社が世界を変えた

米マイクロン・テクノロジーの株価が5月26日、前週末比19%高の895ドル88セントで取引を終え、時価総額が1兆100億ドル(約159兆円)の大台に乗せました。AIデータセンター向けの需要急増でメモリーの逼迫が中長期で続くとの見方から、メモリー大手にマネーが殺到しています。同社の時価総額は昨年末比3倍超に拡大し、日本のキオクシア、韓国のサムスン電子・SKハイニックスもこの流れに乗って大幅高となっています。

実は、このマイクロンには日本にとって苦い記憶があります。私がマッキンゼーに在籍していた1980年代、当時のマイクロンは経営難に陥り、買収先を探していました。日本の半導体メーカー5、6社を回って打診したのですが、すべての企業から「いらない」と断られたのです。当時の日本の半導体は世界市場を席巻していて、「我々が世界を制覇する」という空気でした。マイクロンの源流は1978年にアイダホ州ボイシで4人のエンジニアが歯科医院の地下室で創業した小さな半導体設計会社で、1980年にアイダホの著名な実業家J.R.シンプロット氏(冷凍ポテトの開発で世界的に知られる)の出資を受けて事業基盤を固めたという経緯があります。日本の大手メーカーから見れば「素人の半導体会社」に映ったわけです。

それから40年余りが経ち、日本のDRAMメーカーはほぼ撤退し、マイクロンが2013年にエルピーダメモリを買収するという皮肉な構図になりました。そして今、AIメモリーの主役として時価総額159兆円。1980年代に「いらない」と断った企業が、これだけの会社に育つというのは歴史の皮肉です。当時の判断を今さら問うても始まりませんが、技術の本質と市場の将来を見抜く力がいかに重要か、改めて思い知らされる事例です。米国市場で半導体関連の時価総額上位を見ると、NVIDIA、TSMC、ブロードコム、マイクロン、ASML、ARMと続き、東京エレクトロンが末席に入る程度。日本の半導体産業の現在地を直視する必要があります。

ヤマダ・エディオン経営統合──「対等統合」の落とし穴と中国家電への向き合い方

家電量販大手のヤマダホールディングスとエディオンが経営統合する方針が明らかになりました。持株会社を設立し2社を傘下に置く案を軸に検討するとみられ、人口減少で市場の縮小が見込まれる中、両社は統合により商品開発力を強化し、経営の効率化を図る考えです。

率直に言って、私はこの統合だけでは課題は解決しないと考えています。家電量販店の本質的な問題は、日本の家電メーカーから仕入れる商品が国際競争力を失っていることです。今やテレビや白物家電の多くは、中国のTCL、ハイセンス、ハイアール、シャオミ、美的(Midea)など中国系メーカーの製品です。日本ブランドで売られているものも、実態は中国メーカーが製造しているケースが少なくない。家電量販店が生き残るには、香港や中国に強力な購買部隊を置き、中国メーカーに「日本向け仕様」の商品を直接開発させる仕組みを作る必要があります。これは規模の問題ではなく、購買戦略の問題です。

「対等統合」自体にも落とし穴があります。日本の対等統合の多くは、実態として一方が他方を吸収する形に収斂してきました。三井住友、三菱UFJといった金融再編がその典型です。一方、富士製鉄と八幡製鉄が新日本製鉄として一緒になった例は、対等統合の数少ない成功例です。なぜ成功したか。当時のトップが人事を徹底的にフェアに扱い、社長を富士製鉄出身と八幡出身で交互に出すという公平性を貫いたからです。これがなければ、対等は建前で終わります。ヤマダとエディオンが対等統合の難しさを乗り越えて真の効率化を実現できるかどうか。鍵は人事と購買戦略にあると、私は見ています。

政府の14万社「買い叩き」調査──省庁・自治体に必要なのは「聞き取り」より「駆け込み」の仕組み

政府が中小企業14万社を対象に、国や地方自治体による公共工事や物品調達の際の「買い叩き」の実態を聞き取り調査する方針が明らかになりました。発注者の省庁・自治体がどの程度価格転嫁に応じたかを数値化し、ランク付けして省庁・自治体別に結果を公表するというものです。高市首相は「賃上げを事業者に丸投げせず、継続的に賃上げできる環境を整備する」と強調しました。

率直に申し上げて、この仕組みは効果が薄いと私は思います。省庁・自治体による買い叩きは、日常的に発生しているのが現場の実態です。14万社に対して「叩かれていますか」と聞き取りをして、各企業が正直に回答すると本気で考えているのでしょうか。発注者である自治体や省庁に依存している中小企業が、契約を打ち切られるリスクを冒してまで実名で告発するのは、現実的に難しい。

むしろ必要なのは、公正取引委員会のような独立性の高い機関の中に「駆け込み窓口」を設けて、匿名でも通報できる仕組みを作り、そこに集まった情報をもとに発注者の自治体・省庁を直接調査することです。聞き取り型ではなく、駆け込み型に切り替えなければ、買い叩きは温存され続けます。こうした構造的な問題に踏み込まずに14万社へ紙のアンケートを配っても、現場の負担を増やすだけで、根本的な改善にはつながりません。賃上げの環境整備というのなら、まず発注者側のガバナンスを正す仕組みを作るべきです。

原発2〜5基建て替え目標──往復20年かかるプロセスを、AI時代の電力需要に間に合わせられるか

経済産業省は6月5日、原子力政策の行動指針改定案を有識者会議に提示しました。2040年代までに原発を2〜5基、設備容量で220万〜550万キロワットを建て替える目標を掲げ、さらに2050年代までに計11〜14基、1270万〜1600万キロワットを目指す内容です。福島第一原発事故以降、政府が具体的な建て替えの数値目標を示すのは初めてで、AI普及によるデータセンター増設など電力需要の増加が背景にあります。今後パブリックコメントを経て、原子力関係閣僚会議で正式決定する見通しです。

日本の原子炉の現状を見ると、すでに廃止が決定したものが27基、計画中はほぼ停止、建設中の青森・東通や島根周辺も住民の反対などで止まっています。50年を超えた原発、40〜49年経過した原発を順次廃炉すると、2040年以降は深刻な供給力不足になる。だから建て替えるしかない、というのが経産省の論理です。

私が懸念しているのは、時間軸です。経産省の構想では、住民合意のある既存原発の立地に新型原子炉を建てるのが現実的な選択肢です。ところが廃炉には10年、建設にもさらに10年、合計で往復20年かかります。2040年まで残り14〜15年では、計算が合わない。さらに深刻なのは人材です。福島事故以降、原子力工学を志す若者が激減し、現役のエンジニアの多くは2040年までに定年を迎えます。私はかつてMITで原子力工学を学びましたが、米国でもスリーマイル島事故の後、入学者が激減しました。建て替えを本気で進めるなら、原子力を「廃炉・除染工学」や「環境工学」として再定義し、若い世代に魅力ある分野として打ち出す。場合によっては、原発を多数建設しているインドや中国、ロシアから技術者を招くことも視野に入れざるを得ません。それくらいの危機感をもって取り組まなければ、目標達成は難しいと、私は考えています。

26卒の内定率8割が示すもの──大学4年制の見直しが必要な時期に来ている

2027年卒の大学生の5月1日時点の内定率が8割に達し、17年卒に比べて2.6倍に拡大したことが分かりました。就活ルールの見直しは「大学院修了の学生から適用する」ことで早期化と長期化の是正を狙ったものでしたが、実際には逆に内々定の取得時期が早まる結果になっています。

もしも大学3年生のうちに8割が内定をもらってしまうのなら、現実的には大学を3年制にしてしまえばよい、というのが私の見方です。内定をもらった学生が大学4年生でゼミやインターンに本腰を入れて取り組むかというと、現実はそうなっていません。同じことが高校でも起きています。推薦入試で進学先が決まった生徒は、3年生の後半に学力を伸ばす機会を失います。大学2年生で推薦をもらえば、3年生は実質的に「待ち時間」になってしまう。

もう一つ提案したいのは、大学1年生の教養課程の見直しです。教養課程の多くは高校で履修した内容と重複していて、現代の学生にとって新規性が乏しい。教養課程で扱うべき内容は高校段階に組み込み、大学に入ったら最初から専門課程に集中する。そうすれば3年で十分です。実際、私たちが提携しているオーストラリアのボンド大学では、学位取得期間がどんどん短縮されています。学生側も「ディグリーだけもらえばいい」という発想ではなくなり、大学側も柔軟に応えている。日本の文部科学省が「4年制」という枠組みを固守する理由は、すでに見直しの時期に来ていると私は考えます。「いい統計が出てきた」というのは、皮肉ではなく事実として、26卒の内定率がそれを示しているのです。

プーチンがゼレンスキーの首脳会談提案を拒否──「公開書簡」では和平交渉は成立しない

ロシアのプーチン大統領は5日、ウクライナのゼレンスキー大統領が和平に向けて提案した首脳会談について「まだ意味を見出せない」として拒否する考えを示しました。提案はゼレンスキー氏が4日、ウクライナ大統領府のサイトに書簡として掲載したものです。提案の中で高齢を指摘されたことについて、プーチン氏は「重要なのは年齢ではなく能力」と反論したほか、書簡を公にしたこと自体についても「正しくない」と批判しました。並行して、ロシア財務省と中央銀行の当局者が、現行の国防支出水準では財政赤字が危険なほど拡大するとクレムリンに進言したことも明らかになっています。

和平交渉の進め方として、ゼレンスキー氏の今回のやり方には疑問があります。本当に首脳会談を実現したいなら、極秘ミッションを派遣して非公開でメッセージを伝えるのが外交の作法です。それを自分のサイトで「公開書簡」として発信してしまえば、プーチン氏はメンツを潰される形になり、応じる選択肢を実質的に奪われます。米イラン交渉でカタールが、米ロ交渉でかつてトルコが果たした役割のように、第三国の仲介を使うのが定石です。

一方で、戦況は確実に動いています。ウクライナのドローン製造能力が向上し、サンクトペテルブルクなどロシアの中枢都市まで攻撃が届くようになりました。ロシアの財政も限界に近づいていて、財務省と中央銀行が「国防支出を削減すべき」と異例の進言を行ったのは、ウクライナ侵攻以降、最も深刻な政府内対立の表面化です。これにプーチン氏は「紙幣を刷ればよい」という単純な発想で対応しようとしているとされますが、その先にあるのはルーブル危機です。戦況がロシアに不利になりつつある今こそ、和平交渉の進め方を冷静に組み立て直す必要があります。ゼレンスキー氏には、感情ではなく技術としての外交を期待したいと、私は思います。

—この記事は2026年6月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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