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KON1135:IPOラッシュとAI規制が同時に動く──「調達先を一極に置かない」設計の時代へ

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KON1135:IPOラッシュとAI規制が同時に動く──「調達先を一極に置かない」設計の時代へ

2026.06.18
2026年
KON1135:IPOラッシュとAI規制が同時に動く──「調達先を一極に置かない」設計の時代へ

河野洋平・元衆院議長が死去──「対話の自民党」を体現した戦後保守の系譜が一人去る

河野洋平(こうの・ようへい)元衆院議長が6月8日、東京都内の病院で膵臓がんのため死去しました。89歳。神奈川県平塚市出身、父は河野一郎元農相、叔父は河野謙三元参院議長という政治家一家に育ち、長男は河野太郎元外相です。早稲田大学卒業後、1967年に衆院旧神奈川3区で初当選し、以後連続14回当選。1976年にロッキード事件への対応を批判して自民党を離党、新自由クラブを結成し代表に就きました。1986年に自民党復党後、宮沢喜一内閣の官房長官として1993年に慰安婦問題に関する「河野談話」を発表。1994年には自民党が野党だった時代に総裁として細川護熙首相と小選挙区比例代表並立制の導入で合意しました。2003年から5年7か月にわたり衆院議長を務め、これは大島理森氏が記録を更新するまでの歴代最長でした。

河野氏のキャリアは「離党、新党結成、復党、総裁」と異色そのものでしたが、私が最も評価しているのは、外交における近隣諸国との対話路線です。中国や韓国との関係改善に粘り強く努め、最晩年も日本国際貿易促進協会会長として2025年6月に訪中、王毅外相や李強首相と会談していました。二階俊博氏のように経済界から数千人を引き連れて会いに行く形ではなく、河野氏は一人で訪中しても中国側のトップが会いに出てきた。それだけの蓄積を持つ政治家だったということです。

河野談話に対する評価は今も政治的に分かれます。ただ、私が記録しておきたいのは、河野氏のような立ち位置、すなわち米国一辺倒ではなく、過去の歴史については認めるべきものを認め、近隣諸国と粘り強く対話していくという保守の系譜が、現在の自民党にはほとんど見当たらないという事実です。高市政権の対米・対中政策はそれとはまったく異なる路線をとっています。立場の違いはあっていいのですが、選択肢として「対話路線」を担う政治家が薄くなったことは、日本外交の幅を狭める懸念があると私は考えています。長男・河野太郎元外相がその系譜をどう引き継ぐかも、今後の論点になります。ご冥福をお祈り申し上げます。

SpaceXがナスダック上場、初日株価+19%──終値ベース時価総額326兆円の異形上場

米SpaceXは6月12日、ナスダック市場に上場しました(ティッカー:SPCX)。公開価格は1株135ドル、初値は150ドルで公開価格を11.1%上回り、終値は160.95ドル(初日+19.2%)。終値ベースの時価総額は約2.1兆ドル(約326兆円)に達し、サウジアラムコ(約290億ドル)を大きく上回る米国IPO史上最大の上場となりました。調達額は約750億ドル(約11.6兆円)。なお中国本土・香港の投資家は対象から除外されました。日本のSBI証券、楽天証券、マネックス証券、みずほ証券などでも個人投資家向けの取り扱いがあり、申込倍率は数倍に達したと報じられています。

時価総額326兆円という規模感は確かに圧倒的です。米国の時価総額ランキングではNVIDIA、アルファベット、アップル、マイクロソフト、アマゾンに次ぐ第6位前後に位置し、テスラを上回りました。ただし、私はこの会社の構造そのものに違和感を持っています。一つの上場体に、衛星通信「スターリンク」、ロケット打ち上げ、軍事衛星「スターシールド」、AIモデル「Grok」を開発するxAI(2026年初頭にSpaceXに統合)が全部入っている。本来であれば、それぞれの将来性を市場が個別に評価できるよう、事業を分けて上場させてくれた方が、投資家にとってはありがたいはずです。

もう一つ気がかりなのは、テスラとの関係です。テスラはBYDやシャオミなど中国系EVメーカーの台頭で苦戦が続き、株価も低調です。仮にテスラの業績悪化が深刻化した際、SpaceXとの合併・統合という形で救済する可能性は理屈の上では十分にあり得ます。イーロン・マスク氏はクラスA/クラスB株の二重株式構造により議決権の82%超を保持しており、外部株主の声が反映されにくい統治構造です。1人の人物が80%超の議決権を握る企業を、ナスダックが米国IPO史上最大規模で迎え入れたという事実は、ガバナンスの観点から後に評価が分かれるところだと私は見ています。

OpenAIがSECにIPO申請──目標時価総額1兆ドル、Anthropicに追いつき差し戻すための上場

米OpenAIは6月8日、米証券取引委員会(SEC)にIPOに向けた非公開のS-1登録届出書草案を提出したと発表しました。上場時期は未定としていますが、関係者によれば2026年第4四半期(早ければ9月)の上場を目指しています。主幹事はゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー。目標時価総額は1兆ドル規模とされ、SpaceX、Anthropic(6月1日にIPO申請)に続く2026年大型テック上場案件の本命と位置付けられています。

OpenAIが「非公開申請」というやり方を選んだ理由の一つは、Anthropicとの上場競争です。Anthropicの企業価値が9650億ドル(約154兆円)に達し、年換算売上高(ARR)は470億ドル(約7.5兆円)規模で、二次市場ではAnthropicがOpenAIの時価総額を一時的に上回ったとも報じられました。「AI業界の代表」というポジションをAnthropicに先に取られる前に、上場準備を進めたいというのが本音でしょう。

一方、OpenAIには別のリスクもあります。アンソロピックがClaude Code、Cowork、Claude Mythosなど企業向け・エージェント向けで存在感を増す中、ChatGPTを核とするコンシューマー寄りのビジネスモデルが、上場後の収益性で評価されるのかどうか。さらに2026年通期で約140億ドルの赤字予測、キャッシュフロー黒字化は2030年見込みという財務状況も投資家への説明が要ります。SpaceX、Anthropic、OpenAIと相次ぐAIインフラ・AI開発企業の大型IPOで、世界の投資資金が一時的にこの領域に集中する局面が続きます。日本の企業経営者にとっても、AI基盤を「誰から、いくらで、どの程度の独立性で調達するか」を真剣に設計しなければならない時期に入っています。

Anthropic「Mythos 5」「Fable 5」が米政府指令で世界停止──AI規制が一気に経営マターになる

米Anthropicは6月12日、フロンティアAIモデル「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」の全世界での提供を停止しました。米国商務省のハワード・ラトニック長官がAnthropicのダリオ・アモデイCEO宛に書簡を送付し、国家安全保障上の権限に基づき、米国内外を問わず外国籍ユーザー(Anthropicの外国籍従業員も含む)によるアクセスを停止せよと指令したことを受けた措置です。両モデルは6月9日にリリースされたばかりで、Fable 5は一般公開版、Mythos 5は「Project Glasswing」承認済み顧客向けの限定提供版でした。Anthropicは外国籍ユーザーだけをリアルタイムで選別する技術的手段を持たないため、コンプライアンス上の措置として全顧客・全世界で両モデルを無効化しました。Opus 4.8など他のClaudeモデルは引き続き利用可能です。

日本企業にとってこれは他人事ではありません。日本では三大メガバンクや大手企業がProject Glasswing経由でMythos系モデルへのアクセス権を獲得すると報じられていた矢先のことです。それが米政府の一通の書簡で一斉に止まる。先週Anthropicが「上場で良い評価がつきそうだ」と話題になっていたタイミングでの輸出管理指令ですから、上場直前の評価額にも影響が出かねません。

私がここで強調したいのは、AI調達が「経営マター」になったということです。「契約しているからいつでも使える」という前提は、もはや成り立ちません。米国政府が一夜にしてアクセスを止める権限を持っており、それが現実に行使される。日本企業はAIインフラの調達先を米国一極に依存するのではなく、欧州、日本国内、場合によっては中国系モデル(DeepSeekなど)まで含めた多元的な選択肢を確保しておく必要があります。原油の中東依存を多元化したのと同じ発想を、AIにも持ち込むべき局面に入りました。SpaceXもそうですが、上場可能性のある企業が政府の一声で価値を大きく左右される。これがAI時代の新しい現実です。

ルビオ国務長官、台湾追加武器売却2.2兆円を「検討中」──現場には届かない約束

ルビオ米国務長官は6月2日、上院公聴会で台湾への新たな武器売却について「引き続き検討中」と説明しました。トランプ政権は2025年12月に過去最大規模となる総額約111億ドル(約1兆7700億円)の台湾向け武器売却を承認していますが、ルビオ氏はこれとは別に140億ドル(約2兆2300億〜2兆2400億円)規模の武器売却を検討していると述べました。5月の米中首脳会談を経ても米国の台湾政策に「変更はない」と強調しています。トランプ大統領は会談後のテレビインタビューで、台湾の頼清徳(らい・せいとく)総統との直接協議に意欲を示し、武器売却を「よい交渉材料だ」と発言。これに中国が強く反発する中、ルビオ氏は中国の反対が「ホワイトハウスの意思決定を妨げているわけではない」と火消しを試みた格好です。

トランプ氏が「台湾のトップと話す」と公言したことに、中国は猛反発しました。北京の立場では、台湾は中国の一部であり独立した交渉相手ではない、というのが大原則です。米国大統領が台湾総統と直接協議すること自体が許しがたい外交問題になります。ルビオ氏が公聴会で慎重に火消しをしたのは、トランプ氏の発言を抑えながら、米中の正面衝突を避けるためでしょう。

ただ、もう一つ深刻な問題があります。米国の武器供給能力が、対イラン軍事作戦などで著しく逼迫していることです。トマホーク巡航ミサイルは、日本への納入も最大2年遅れる見通しと米国側から伝えられています。台湾への武器売却を「検討中」「承認済み」と言葉で重ねても、現場には武器が届かない。同盟国にとって深刻なのは、「米国に任せておけば大丈夫」という前提が崩れつつあるという事実です。日本としても、防衛装備品の国産化、ライセンス生産の本格化を加速しなければ、有事における同盟頼みのリスクが顕在化します。

東南アジア各国で「迂回貿易」取り締まり──「インド製iPhone」の虚構が露呈する

東南アジア各国が、中国製品を東南アジア経由で米国に輸出する「迂回貿易」への取り締まりを強めています。最大約450万円の罰金を課す方針を打ち出した国もあり、原産地ルールの厳格化が一気に進む情勢です。トランプ政権の対中関税を回避するため、中国メーカーが東南アジアやインドに最終組み立て拠点を設けたり、形式上の「現地企業」を立てたりする動きが目立っていました。

典型的な例がアップルのiPhoneです。これまで主に中国の鴻海(フォックスコン)系工場で生産していた製品を、トランプ関税を回避するためにインド製として米国向けに出荷する流れが急速に強まりました。ただし、部品はほぼすべて中国で作られ、インド側で行うのは最終組み立てや梱包に近い作業が多いのが実情とされています。それでもラベル上は「インド製」とすれば中国製とは別扱いになる。これがトランプ関税時代の現実です。

中国メーカーは、こうした原産地ロンダリングが得意分野でもあります。AIの文脈ではモデルの蒸留・抽出(いわゆる上流からの模倣)が議論になっていますが、貿易の世界では本社や原産地をシンガポール、インド、タイ、ベトナムなどに「移して」しまうという技法が以前から使われてきました。なんちゃって本社、なんちゃって工場、3人の駐在員が本社機能を担うなど、実態と書類上の表記が乖離するケースが少なくありません。東南アジア各国もこの構造をさすがに看過できなくなり、罰則強化に動き始めたわけです。日本企業にとっても、調達網の透明性確保と原産地リスクの再点検は避けて通れません。

上海汽車・BYDが2027年に全固体電池EV投入──日本勢の研究先行を中国が量産で抜きにかかる

中国の自動車大手BYDと上海汽車集団(SAIC)が、次世代電池技術である全固体電池(ASSB)を搭載した電気自動車(EV)を2027年に投入する計画を進めていることが明らかになりました。上海汽車はスタートアップの清陶能源発展(Qingtao Energy)と共同開発した「光啓(Guangqi)」電池を搭載した試作車を完成させ、量産試験段階に移行しています。すでに「つなぎ役」として半固体電池搭載EVを市場に投入済みで、本格的な全固体電池量産は2030年以降を目指す構えです。BYDのCTO・孫華軍氏も2027年デモ導入、2030年量産普及という同様のロードマップを示しています。

全固体電池は、現行のリチウムイオン電池と比較して熱暴走リスクが小さく安全性が高い上、航続距離1000km超を実現できる「EVのゲームチェンジャー」と言われてきました。日本ではトヨタを中心に研究が長く先行してきた領域ですが、商業化のロードマップで中国勢が並走しつつあります。

私が懸念するのは、研究先行と商業化先行の間にあるギャップです。リチウムイオン電池でも、開発・研究では日本が先行していましたが、商業化と量産化では韓国と中国に主導権を奪われました。同じ構図が全固体電池でも繰り返される可能性があります。研究先行は重要ですが、それを「量産・コスト競争で勝ち抜く事業」に転換するスピードと意思決定が、日本の自動車・電池産業に問われています。中国EV勢の躍進は、もはや「価格と政府補助」だけの話ではなく、次世代技術でも先頭を走り始めたという事実を受け止める必要があります。日本国内ではEV普及そのものが遅れていますが、世界市場でEVの占有率は着実に伸びており、グローバルで戦う日本メーカーには、研究を量産に転換する経営判断のスピードが求められています。

シーザーズ買収・MGMにも買収提案──カジノ業界再編と、大阪IRに残る不確実性

米カジノ・ホテル大手シーザーズ・エンターテインメント(Caesars Entertainment)は5月28日、ティルマン・ファーティタ氏率いるFertitta Entertainmentによる買収に合意したと発表しました。買収額は株式ベースで約60億ドル、エンタープライズバリュー(負債含む)で約176億ドル(約2兆6000億円〜2兆7000億円規模)。ファーティタ氏はラスベガスのゴールデン・ナゲットや飲食チェーン「レインフォレスト・カフェ」「モートンズ」などを所有する実業家です。さらに6月初旬、MGMリゾーツ・インターナショナルにもメディア王として知られるバリー・ディラー氏率いるPeople Inc.(旧IAC)が約176億ドル規模の買収提案を行ったと報じられました。

カジノ業界はかつて、スティーブ・ウィン氏(Wynn Resorts創業者)、シェルドン・アデルソン氏(Las Vegas Sands創業者、2021年死去)といった創業者たちが牽引してきた業界でしたが、今日では、シーザーズもMGMも経営の主導権が個人投資家・実業家に移りつつあります。

日本にとって重要なのは、大阪IR(統合型リゾート)への影響です。万博跡地で計画されているIRは、MGMがオリックスと共同で事業主体となる構図です。そのMGMが買収提案を受けている状況で、IR計画が予定通り進むのかどうか。関係者の間に不確実性が広がっています。さらに業界全体の構造として、コロナ禍以降の観光客減少に加えて、オンラインカジノやスポーツベッティング(賭博)の合法化で、リアル店舗型カジノから顧客が流出する潮流があります。マカオも苦戦、ラスベガスもストリップへの集客に陰りが見えるという中で、日本がこれから物理的なカジノ施設に巨額投資するという判断は、私はかねてから疑問を呈してきました。世界の潮流を冷静に読んだ上で、大阪IRの位置付けを再点検する必要があると考えます。

韓国KAISTからスタートアップ574社──NVIDIA・サムスンが投資する産学一体モデル

韓国科学技術院(KAIST)から派生したスタートアップが574社に達し、世界の注目を集めていることが報じられました。米NVIDIAから約120億円の出資を受けたAI半導体新技術の企業や、サムスン電子が子会社化したロボット企業など、基礎研究を起点としたディープテック企業が次々に生まれています。韓国政府もKAIST関連の予算を前年比4倍に拡充し、大企業(財閥)依存からの転換を後押ししています。

KAISTは大田(テジョン)広域市に本部を置く国立研究型大学で、ソウル大学とは異なる位置付けで設立された、理工系トップ校です。私が注目しているのは、KAISTが取っているモデルが、中国の名門大学である清華大学や北京大学などが展開する「校弁企業」(大学が運営に深く関与する企業群)モデルを取り込みつつ、それを企業スポンサーシップで凌駕しようとしている点です。学生時代から起業し、教員も一緒に起業し、学校自体が技術開発を支援する。NVIDIAやサムスンといった企業スポンサーが入ることで、資金も人材も集まる好循環が回っています。

日本にも、慶應義塾大学のSFC(湘南藤沢キャンパス)など、起業を促進するモデルは存在してきました。東北大学なども期待されていますが、KAISTほどの規模感とエコシステムの厚みには至っていないのが現状です。日本の大学が「起業エンジン」として中国・韓国に並ぶには、規制改革、教員の起業参加への柔軟性、企業スポンサーシップの拡大など、構造的な見直しが必要です。1校から574社のスタートアップが生まれるという数字は、単なる数字ではなく、社会システム全体の設計の違いを示しています。日本もここで遅れを取れば、AI時代の人材・技術競争でますます後れを取ることになると、私は危惧しています。

—この記事は2026年6月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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