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KON1140:三菱UFJが時価総額首位、GPIF「令和のPKO」観測、ゼレンスキー内閣改造──金利ある世界の号砲と戦時の人事

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1140:三菱UFJが時価総額首位、GPIF「令和のPKO」観測、ゼレンスキー内閣改造──金利ある世界の号砲と戦時の人事

KON1140:三菱UFJが時価総額首位、GPIF「令和のPKO」観測、ゼレンスキー内閣改造──金利ある世界の号砲と戦時の人事

2026.07.23
2026年
KON1140:三菱UFJが時価総額首位、GPIF「令和のPKO」観測、ゼレンスキー内閣改造──金利ある世界の号砲と戦時の人事

二階堂有希子さん死去──八ヶ岳倶楽部が結んでくれた芸術家たちとの縁

アニメ「ルパン三世」の初代・峰不二子役で知られる声優・俳優の二階堂有希子(にかいどう・ゆきこ、本名・柳生加津子)さんが7月3日、老衰のため死去しました。87歳。俳優の故・柳生博さん(2022年4月死去)の妻で、7月17日に次男の柳生宗助氏が八ヶ岳倶楽部のSNSを通じて公表しました。二階堂さんは劇団俳優座で俳優として活動した後、1964年に柳生博さんと結婚。1989年に家族で山梨県北杜市に移住し、柳生さんが雑木林の中に開いた「八ヶ岳倶楽部」の初代社長を務めました。

私はこのご夫妻に、個人的に大変お世話になりました。蓼科の別荘から八ヶ岳倶楽部にはよく通ったものです。柳生さんは「自然を取り返す」というこだわりの人で、植林ではなく雑木林の再現に情熱を注いでいました。そして二階堂さんは、素晴らしい「目利き」でした。八ヶ岳倶楽部のギャラリーで開かれる展覧会を通じて、私は三人の芸術家に出会いました。家具職人の田原良作さん。六番町の私の住まいの家具は、食堂のテーブルも椅子も講義室の調度も、すべて田原さんの作品です。バードカービングの清水正弘さん。カワセミの彫刻や写真に魅了され、ニューヨークの世界大会で一位になった作品も譲っていただきました。そして名古屋の画家・高泉さんの「月の道」。妻が見つけたこの絵は、義母が最期まで病床で眺めていた、我が家にとって特別な作品です。

ご夫妻の長男で園芸家の柳生真吾さんも、NHKの園芸番組の司会などで活躍しながら2015年に47歳の若さで亡くなられており、いまは宗助さんたちが八ヶ岳倶楽部を継いでいます。一人の「目利き」が見出した芸術家たちの作品が、こうして私の暮らしの中に息づいている。そのご縁の起点となったお二人に、心から感謝するとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。

三菱UFJが時価総額で日本一──銀行首位は1986年の旧住友銀行以来40年ぶり

三菱UFJフィナンシャル・グループの株価が7月13日、3541円で取引を終えて上場来高値を更新し、時価総額でキオクシアホールディングスやトヨタ自動車を上回って国内首位となりました。日銀の利上げに伴う金利上昇を背景に、貸出利ざやの拡大による増益期待から買いが膨らんだものです。金融機関が時価総額で国内首位となるのは、1986年の旧住友銀行以来およそ40年ぶりのことです。

この40年ぶりという数字には感慨があります。1980年代後半のバブル期には、世界の時価総額ランキング上位を日本の都市銀行が独占していました。その後のバブル崩壊、不良債権処理、超低金利の四半世紀を経て、銀行は「成長しない業種」の代名詞になっていた。それが日銀の利上げ局面入りとともに、貸出利ざやという銀行本来の収益エンジンが復活し、再び時価総額の首位に戻ってきたわけです。「金利ある世界」の号砲として、これほど象徴的な出来事はありません。

ただし、中身を見ると手放しでは喜べません。三菱UFJの利益の柱は、銀行単体の貸出収益と、リーマン・ショック時に出資した米モルガン・スタンレー関連の持分利益です。この2つが稼ぎ頭で、その他の事業はまだ収益貢献が限定的です。時価総額も現在28兆円規模で、キオクシアが一時つけた60兆円と比べれば、AI・半導体セクターの熱量とは別次元の評価です。それでも、預金者への金利還元、企業への貸出姿勢、リスクマネーの供給と、銀行が経済の血流として本来の機能を取り戻すかどうか。ここからが本当の試金石だと私は見ています。

GPIFの国債買い増し「令和のPKO」観測──買い手不在の国債市場が映す財政の現実

日本経済新聞は7月14日、「国債、令和のPKO観測」と題する記事を掲載しました。片山さつき財務大臣が10日、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国内資産への投資拡大を後押しすると表明したのを受け、市場で国債買い支え観測が広がっているという内容です。GPIFの運用資産は約293兆円で、うち国内債券は26.9%、国債は約62兆円を保有しています。1990年代に公的資金で株価を下支えした「PKO(プライス・キーピング・オペレーション)」を想起させるとして、市場の価格形成や年金資産運用への影響を懸念する声が高まっています。

この問題の本質は、日本国債の利回りがじわじわと上昇している。つまり、買いたい人が減っているという事実にあります。債券の利回りが上がるのは、買い手を集めるために条件を良くせざるを得ないからです。米国債は米国内の買い手が細り、日本が大量に買い支えている構図ですが、その日本の国債も、買い手確保のために利回りを上げなければならない局面に来ている。政府から見れば、国債の利払い費が予算の中で膨らみ続けるという、深刻な財政問題に直結します。

そこで年金基金に国債を買わせて利回り上昇を抑えようという発想が出てくるわけですが、私はこれを好ましい方向だとは思いません。市場が国債を敬遠しているのは、将来の財政リスクを織り込んでいるからです。その市場のシグナルを公的マネーで覆い隠せば、問題の先送りにしかならず、しかも国民の年金資産をそのリスクの受け皿にすることになります。国債を大量に発行してきた結果の利払い負担を、また公的資金で吸収する。自らの資産で自らの負債を支える構図は、持続可能ではありません。求められているのは買い支えの工夫ではなく、財政規律そのものの再建だと私は考えています。

 

コメ価格が60kg2万円割れ──「猫の目農政」を終わらせる構造改革の好機

コメの供給に余剰感が広がる中、集荷業者が生産者から買い取る価格が大幅に引き下げられています。生産者からは「60kgあたり2万円を下回る水準では再生産が難しい」との声が上がっています。昨年までの「令和の米騒動」と呼ばれた価格高騰から一転、増産と需要減で価格が急落する展開となり、農政の一貫性が改めて問われています。

私のこの問題への意見は、かねてからはっきりしています。価格が上がれば増産を促し、下がれば買い支えを求める。この繰り返しを続ける限り、日本の農業に未来はありません。必要なのは、農業を「産業」として成立させる構造改革です。具体的には、コスト計算に基づく経営ができ、競争力を持ちうる一定規模以上(例えば2ヘクタール以上)の専業農家に政策支援を集中し、それ未満の零細兼業農家には、農業政策ではなく生活保障の枠組みで対応する。この線引きを明確にすべきです。

現在の制度では、「農家」であり続けることに多くの恩典が付随します。農地の相続税評価の優遇、各種の補助・特例。こうした恩典が、経営として成り立たない小規模農地を「保有し続ける」インセンティブになり、農地の集約と大規模化を妨げてきました。規模の大きい専業農家は、60kg1万5000円程度でも十分に競争できるコスト構造を作れます。そういう担い手に農地を集め、産業としての農業を確立する。政治的には支持基盤に関わる難しい判断ですが、価格乱高下のたびに税金で応急処置を繰り返すコストを考えれば、いま構造改革に踏み込むほうが、農家にとっても消費者にとっても、長期的には誠実な選択だと私は考えています。

 

六ヶ所再処理工場、通算28回目の完成延期──原子力人材の枯渇という、より深刻な問題

日本原燃の六ヶ所再処理工場(青森県)の完成が、通算28回目の延期となりました。規制当局は国側に実現性の高い新たな工程を示すよう求めています。最大の技術的難関は、使用済み核燃料の再処理後に残る高レベル放射性廃液を安定保存するための「ガラス固化」プロセスで、フランスの技術支援を受けながらも安定稼働に至っていません。この結果、全国の原発では使用済み燃料を敷地内のプールで冷却保管し続けており、保管容量の逼迫が進んでいます。一方、近畿大学は6月中旬、東大阪キャンパスの原子力研究所で原子炉実習を実施しました。東北大学、福井大学、九州大学など全国から学生11人が参加し、原子炉の起動や放射線量の測定などを2日間学んだもので、大学の枠を超えた人材育成の取り組みとして注目されます。

六ヶ所の問題は「後工程の渋滞」として理解する必要があります。再処理が進まない、ガラス固化ができない、そして仮に固化できても最終処分場が決まっていない。候補地の検討もこれから10年単位の調査が必要です。つまり、原子炉を再稼働すればするほど使用済み燃料は増えるのに、その出口が全部詰まっている。この現実を直視せず「再稼働」「新増設」だけを議論するのは、片肺の政策です。

そして私が最も深刻だと考えているのが、人材の枯渇です。私自身、MITで原子力工学を学び博士号を取得しましたが、米国ではスリーマイル島事故の後、大学院の原子力専攻の入学者が130人規模からゼロになった年もありました。私が役員を務めていた時期に調べたところ、わずかな在籍者はほぼ全員が海外からの国費留学生でした。福島第一の事故後、日本でも同じことが起きています。廃炉は日立や三菱重工にとって長期の事業として成立しますが、「廃炉を学ぶ学部」に若者は集まりません。近畿大学のように実際の研究炉(UTR-KINKI)を持つ大学が、全国の学生に実習機会を開放する取り組みは貴重です。原子力を廃炉・除染も含む「環境・エネルギー総合工学」として再定義し、実機に触れられる教育基盤に投資する。本格的な建て替え議論の前に、まず人を育てる仕組みを立て直す必要があります。

浮体式洋上風力に1kWあたり最大70万円の固定収入──「実証のための大型支援」は理にかなう

経済産業省は7月14日、国が公募した国内6か所の洋上風力発電事業を対象に、1kWあたり最大70万円の固定収入を20年間保証する方針を明らかにしました。現在の上限額(20万円)から最大3.5倍への拡大で、事業者の撤退防止と事業継続を後押しする狙いです。また経産省は、2027年度から浮体式洋上風力発電の実証実験に着手する方針も明らかにしました。水深500メートル以上の、強風や高波など過酷な環境の海域で技術開発を進めるもので、7月15日から実証海域の公募を開始しています。

世界の再生可能エネルギーを見渡すと、太陽光と陸上風力が主力で、洋上風力の比率はまだ小さく、デンマークや英国など北海沿岸の遠浅の海を持つ国に集中しています。着床式の洋上風力は水深数十メートルまでしか設置できないため、沿岸からすぐに水深が深くなる日本では適地が限られる。だからこそ、海に浮かべる浮体式の技術確立が、日本の洋上風力の成否を握っています。

1kWあたり70万円という支援水準は、確かに思い切った金額です。しかし私は、これは「実証フェーズの投資」として理にかなっていると考えています。安値で落札した事業者が採算割れで撤退する事例が相次げば、産業としての洋上風力そのものが立ち上がりません。まず技術を確立し、量産効果とサプライチェーンの成熟でコストを下げていく。発電コストは陸上風力で16円/kWh前後、太陽光14円、原子力12円(再処理費用を含めればさらに上昇)という現状からすれば、浮体式が競争力を持つまでの橋渡しとして、期限と検証を明確にした支援は妥当です。重要なのは、支援を永続させないこと。実証の成果を透明に公表し、達成基準に満たない事業は打ち切る規律とセットで進めるべきです。

 

NVIDIAフアンCEOが語った「セガがいなければ今のNVIDIAはない」──6億円が救った世界一企業

米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが7月15日に来日し、ゲーム大手セガのイベントに参加しました。NVIDIAは1990年代後半、セガからゲーム機用GPUの開発を受託したものの失敗。しかし当時の入交昭一郎(いりまじり・しょういちろう)社長はNVIDIAの技術力と将来性を評価し、約6億円の資金支援を決断しました。フアン氏はイベントで「セガがいなければ、今のNVIDIAは存在しない」と語りました。

これは実話であり、シリコンバレー史に残る美談です。当時のNVIDIAは開発契約を果たせず、資金が尽きかけていました。GPUというプロセッサはゲーム用途くらいしか市場がなく、注目する者も少なかった。その時期に、納品を受けられなかった発注側のセガが、逆に支援を決めた。入交氏の技術に対する目利きと度量がなければ、時価総額世界トップとなった今のNVIDIAはなかったかもしれません。もしセガが6億円を株式で保有し続けていたら、天文学的なリターンになっていたはずで、そこは惜しまれるところですが、フアン氏にとってセガと日本が「命の恩人」であることは変わりません。

フアン氏と日本の縁はそれだけではありません。GPUの初期市場を支えたのは日本のゲーム産業でした。フアン氏は無名時代から何度も来日し、秋葉原の居酒屋にも通っていた。いまも革ジャンにコンビニ中華という飾らないスタイルで知られる人物です。ここから得られる教訓は明確です。技術の将来性を見抜き、失敗した相手にも投資できる企業文化が、10年後20年後のパートナーシップを生む。目先の契約履行だけで関係を切っていたら、この物語はなかった。日本企業がAI時代のスタートアップとどう付き合うべきかを考える上で、入交氏の判断は今こそ参照されるべき先例だと私は思います。

英国、バーナム新首相が7月20日就任──ロンドン一極集中の是正を掲げる労働党の再起動

英国の与党・労働党は7月17日、新党首を選ぶ党首選を実施し、アンディ・バーナム前マンチェスター市長を選出しました。5月の地方選大敗などを受けてキア・スターマー首相が6月に党首辞任を表明したのに伴うもので、バーナム氏は7月20日に首相に就任します。バーナム氏はロンドン一極集中の是正を訴え、首相官邸のあるダウニング街の機能の一部をマンチェスターに移す「10番地ノース」構想など、政府機能の地方移転を掲げています。

バーナム氏は下院議員として閣僚を経験した後、マンチェスター市長として長く市政を担い、地域交通や住宅政策で実績を上げてきた人物です。労働者階級への訴求力があり、「ロンドンのエリート政治」への不満の受け皿となってきたナイジェル・ファラージ氏率いるリフォームUKに対抗できる、数少ない労働党政治家と目されています。世論調査ではリフォームUKが依然首位ですが、ブレグジットを主導したファラージ氏への再評価は厳しくなりつつあり、バーナム新首相の登場で支持構造が動く可能性があると私は見ています。

ただし、政府機能の地方移転は言うほど簡単ではありません。英国内でも、マンチェスターへの移転構想に対して、スコットランドのエジンバラなどから「なぜマンチェスターなのか」という不満が出るのは避けられないでしょう。日本の「副首都」構想が近畿圏内の綱引きを招くのと同じ構図です。それでも、首都機能の分散を具体的な政策として掲げる政権が誕生すること自体、ロンドン一極集中と地域格差が英国政治の中心課題になった証左です。東京一極集中を抱える日本にとっても、バーナム政権の実験は観察に値します。

ゼレンスキー大統領が内閣改造──フェドロフ国防相更迭に国内から抗議の声

ウクライナのゼレンスキー大統領は7月12日、内閣改造の方針を表明しました。エネルギーインフラの防衛、経済の立て直し、防衛産業の強化を加速させる狙いで、ウクライナ最高会議は16日、国営エネルギー企業ナフトガスのセルヒー・コレツキーCEO(48)を新首相に選出しました。ロシアが例年冬季に電力インフラへの攻撃を強めることから、エネルギーに精通した実務家を首相に据え、厳寒期への備えを優先する人事です。一方、ゼレンスキー氏はミハイロ・フェドロフ国防相(35)を更迭し、後任にウクライナ保安庁(SBU)のフマラ長官代行を国防相代行に指名しました。フェドロフ氏の更迭に対しては、市民や兵士らによる抗議デモが各地で発生しています。

コレツキー新首相の起用そのものは、冬を前にしたエネルギー防衛の観点から理解できます。しかしフェドロフ国防相の更迭には、私は疑問を持っています。フェドロフ氏はAIとドローンを駆使した軍の近代化を主導し、年間100万機規模のドローン生産体制、ロシア領内の製油所への長距離攻撃、クリミア補給路の遮断と、この1年でウクライナが戦況の主導権を取り戻した立役者です。軍指導部との対立が更迭の背景と報じられていますが、戦時に最も成果を上げている閣僚を交代させる判断が国民に十分説明されておらず、街頭では「フェドロフを戻せ」というデモが続いています。

戦時のリーダーシップには、有能な部下の成果を自らの脅威と感じずに使いこなす度量が求められます。ゼレンスキー大統領は開戦以来、国民との対話力で国を束ねてきましたが、今回の人事はその強みと逆行しているように見えます。ロシア側は財政悪化と燃料不足で消耗が進み、和平交渉の条件は徐々に整いつつある。この重要な局面で、指導部内の不協和音が戦況や欧米の支援継続に影を落とすことがないか。ウクライナを支援してきた国々としても、注視すべき転換点です。

—この記事は2026年7月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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