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KON1139:リニア静岡工区の着工容認、ファストリが世界2位に、SKハイニックスNASDAQ上場194兆円──国家プロジェクトと企業競争の潮目

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1139:リニア静岡工区の着工容認、ファストリが世界2位に、SKハイニックスNASDAQ上場194兆円──国家プロジェクトと企業競争の潮目

KON1139:リニア静岡工区の着工容認、ファストリが世界2位に、SKハイニックスNASDAQ上場194兆円──国家プロジェクトと企業競争の潮目

2026.07.16
2026年
KON1139:リニア静岡工区の着工容認、ファストリが世界2位に、SKハイニックスNASDAQ上場194兆円──国家プロジェクトと企業競争の潮目

リニア中央新幹線・静岡工区の着工容認──10年遅れで動き出す11兆円プロジェクトの費用対効果

静岡県の鈴木康友知事は7月7日の県議会でリニア中央新幹線静岡工区(約8.9km)の着工を容認すると表明しました。静岡工区をめぐっては、2017年に川勝平太前知事が水資源への影響などを理由に着工反対を表明して以降、着工が停滞。前知事が2024年5月に辞職して鈴木知事が就任してから議論が進み、今回の判断に至りました。JR東海は年内の着工を目指しますが、南アルプストンネル(約25km、最大深さ約1400m)は最難関の工事で、静岡工区だけで完成まで約10年を要する見込みです。品川〜名古屋間の先行開通は2036年以降となる見通しで、事業費は当初想定の5兆円台から現在は11兆円規模へと膨らんでいます。

私はもともと、静岡での議論が「大井川の水資源」に焦点化してきたこと自体、本質からずれていたと考えています。真の論点は、南アルプス地下1400mを掘って直線ルートを通すという計画そのものの技術的合理性です。品川駅の地下40mから発車し、9割以上を地下深く走行し、名古屋の地下20mへ到達する。仮に事故や停電が発生したら、乗客はどう避難するのか。真っ暗な地下を数キロ歩いて出るしかない状況で、実際に乗る人がどれだけいるのか、私は疑問を持っています。

もう一つは、費用対効果です。時速500kmで真価を発揮するには、少なくとも岡山あたりまで路線が延びる必要があります。名古屋までなら現行の東海道新幹線でも1時間半で行きますから、大幅な短縮効果は見込みにくい。しかも大阪までのルートすら未確定です。人口減少とテレワーク定着が進む日本において、これから15年、20年かけて11兆円を投じるプロジェクトが、国際競争力向上にどうつながるのか。私はむしろ、リニア技術そのものは米国のロサンゼルス〜サンフランシスコ間やテキサスなど、比較的平坦な地形の海外市場に売り込む戦略に切り替えるべきだと考えています。国内で山岳部を貫通するプロジェクトを続けることが、日本経済にとって最適解とは限りません。

ファーストリテイリングが世界2位へ──H&M抜き、海外ユニクロが成長を牽引

ファーストリテイリングは7月9日、2026年8月期の売上高見通しを3兆9700億円に上方修正しました。海外ユニクロ事業が好調で、営業利益7300億円、純利益5000億円と過去最高を更新する見通しです。これによりスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)を約8%上回り、衣料品の製造小売りで世界2位に浮上する見込み。世界首位はスペインのインディテックス(ZARA)で、時価総額31兆円に対しファーストリテイリングは約27兆円まで迫っています。並行して同社は、EUが2029年までに企業に対して供給網全体の人権管理を義務付ける方針を打ち出したのを受け、5月末までに国内外の約700工場に新たな監査基準を導入。強制労働・児童労働の確認に加え、各国・地域の法令や固有のリスクを踏まえた独自監査項目を設定しました。

柳井正氏はきわめて堅実で緻密な経営者で、私はこの結果を予想はしていましたが、ここまでの数字はある種の到達点です。ただし、まだ差があるのはインディテックスです。売上でファーストリテイリングの2倍近く、営業利益で2.5倍程度、純利益もほぼ同水準の差があり、営業利益率は20%台。ジーユー(GU)事業やグローバルブランド事業を含めた総合力でも、インディテックスは一枚上手というのが率直な評価です。インディテックス創業者のアマンシオ・オルテガ氏は現在は経営から退き、娘のマルタ・オルテガ氏が会長を務めています。H&Mの創業者アーリング・ペーション氏はすでに他界し、息子のカール=ヨハン・ペーション氏らが経営を担う体制です。

人権デューデリジェンスの体系化は、EU・米国の規制強化への対応として合理的な判断です。ここで注意すべきは、人権基準は国によって解釈が異なる、という現実です。国によっては義務教育が小学校相当の年齢までで、中学生年齢層が工場で働くことは違法ではありません。米国の宗教団体などが「児童労働」と批判する事例の中には、当該国の法制度上は合法という例も少なくない。日本企業が真にグローバル人権基準を運用するには、「各国の法体系を踏まえた独自監査項目」という考え方を欧米にも説明できる論理的な枠組みが必要になります。同時に、中国・新疆ウイグル地区の綿花サプライチェーンについては、国際的に問題視さえており、対中依存の高い日本企業にとって難しい経営判断が続く領域です。

三菱自動車が独立色を強める──パジェロ復活と岸浦新社長体制の意味

三菱自動車は6月18日、定時株主総会を開催しました。総会後、岸浦恵介新社長兼COO(4月1日就任)が取締役に就任、加藤隆雄前社長は代表執行役会長兼CEOに就任し、二人三脚体制がスタートしました。10月には日産自動車や三菱商事など主要株主による株式の売却制限契約が期限を迎えるため、株主からは日産との協業の行方やブランド戦略に関する質問が相次ぎました。同社は先月、7年ぶりに「パジェロ」ブランドを復活させ、新型モデルを年内に発売する方針も発表しています。

私は、三菱自動車は独立色を強めた方が成長余地が大きいと考えています。現在の世界の自動車市場では、トヨタのようなオールラウンド型は非常に稀な成功例で、大半のメーカーは何かに特化することでしか生き残れません。三菱の強みは、パジェロやランサーエボリューションに代表される「悪路走破性」と「ラリー由来の走行性能」です。パジェロは砂漠、沼地、雪道の一部(4WDロックが効く条件下)で他社にはない安心感を提供してきた車種で、パリ・ダカール・ラリーで複数回優勝した実績を持ちます。日本仕様の生産終了が2019年、海外仕様が2021年でしたが、私は当時から「なぜやめるのか」と疑問を持っていました。

株主構成としては、日産が現在26.67%を保有し、三菱商事が続く形です。もともと三菱重工の自動車部門が独立した経緯があり、名古屋工場や商用車事業などがルーツにあります。今回のパジェロ復活は、既存モデル「トライトン」をベースにしたお色直しとも報じられていますが、市場が待望していた選択肢の一つです。日産・ホンダとの3社協業の効果は限定的で、実質的に「有名無実」との見方も出ています。だからこそ、三菱は自社の強みを愚直に磨く方向に舵を切るべきです。株式売却制限解除を機に、三菱グループ内の役割分担も含めた再定義が今後の焦点になります。

Anthropic「Fable」「Mythos」の輸出規制解除とOpenAIの米政府5%株式付与検討

米Anthropicは6月30日、米政府が同社のAIモデル「Claude Fable」と「Claude Mythos」の輸出規制を解除したと発表しました。米政府はFableの高度な推論や自律的なタスク実行能力が悪用されるのを防ぐため、6月に一時的に利用を停止させていましたが、Anthropicが安全対策を強化したのを受け、サービス提供を認めました。並行して、フィナンシャル・タイムズは米OpenAIが米政府に自社株の5%程度を付与する案を検討していると報じました。政府が株主となることで、AI産業の恩恵を米国民に共有し、AI開発やデータセンター建設への反発を和らげる狙いで、Anthropicなど他のAI企業にも参加を呼びかける考えとされます。

Anthropicの輸出規制解除については、6月に発動された規制がわずか3週間程度で解除されたスピード感には正直、疑問があります。この短期間で本質的な安全対策の強化が完了したのかどうかは、外部からは検証できません。ただし、米政府がAI輸出規制を発動すること自体、AIエコシステムのグローバル運用を大きく歪めるため、解除自体は前向きに評価できます。日本の三大メガバンクなどが確保していたアクセス権が再度使えるようになるという意味で、日本企業への影響も限定的で済みました。

OpenAIの米政府5%株式付与案は、私にはかなり無理筋に見えます。第一に、資本主義国家において政府が民間大企業の株式を保有することは、長年の原則に反します。政府の関与を最小限に抑えることが、市場経済の健全性を保つ前提条件です。第二に、実施するのであれば、OpenAI設立時(2015年)や商用化時期(2022年11月)に近い段階で行うべきでしょう。もし将来の税負担軽減という筋書きが本当にあるとしても、時系列的にも仕組み的にも整合性を欠きます。「AIの恩恵を国民に還元する」という理念自体は共感できるものの、この手法は最善策ではないと私は考えます。

中国のEV輸出2026年1000万台へ──日本を追い越し、海外市場では半額戦略で浸透

米コンサルティング会社アリックスパートナーズ(AlixPartners)がまとめた推計によると、2026年の中国の自動車輸出台数は前年比41%増の1000万台に達する見通しです。中国国内では景気減速や購入補助金縮小で新車販売が減少する一方、中東情勢を背景とした原油高でEV・プラグインハイブリッド需要が世界的に拡大しており、手頃な価格を武器に特に欧州・アジアへの浸透が進んでいます。

1000万台という規模感は、輸出台数で日本を明確に上回る水準です。国内市場が飽和した中国メーカーは、輸出でしか成長余地を確保できず、しかも海外では欧州や日本メーカーのおよそ半額で販売するケースが目立ちます。BYDなどは政府補助金が業績を下支えしているとされ、実質的に赤字経営という指摘もありますが、それでも輸出攻勢を止めない状況です。

先行指標として観察に値するのがオーストラリアです。BYDと長城汽車(Great Wall Motor、GWM)傘下のハバル(Haval)のディーラー網が急速に整備され、新車販売の相当部分が中国製に置き換わりつつあります。値段が半分であれば、細かい比較検討を経ずに購入判断が下されるケースが増えるのは自然な流れです。日本の自動車メーカーは、東南アジア・中東・アフリカ・中南米などの新興市場で、この価格攻勢にどう対抗するかが問われています。品質・安全性・アフターサービスといった総合力での差別化が、これまで以上に厳しく評価される段階に入りました。

韓国上半期輸出80兆円で過去最高、SKハイニックスがNASDAQ ADR上場で時価総額194兆円

韓国産業通商資源省が7月1日発表した2026年上半期(1〜6月)の輸出額は、前年同期比4.8%増の約80兆円で過去最高を更新しました。貿易黒字も同5倍の約2兆2300億円と、こちらも過去最高。AI向け先端半導体の輸出が増加したほか、DRAMやNAND型フラッシュメモリの価格上昇が追い風となりました。並行して、韓国SKハイニックスは7月10日、米ナスダック市場に米国預託証券(ADR)を上場。初値は公募価格を14%上回る170ドル、終値ベースの時価総額は約194兆円で、世界の時価総額ランキングで12位前後となりました。調達額は約4兆円で、これは今年6月に上場した米SpaceX(約12兆円)に次ぐ2026年で史上2番目の規模の大型IPOです。

韓国が輸出額で日本を上回る水準まで来たのは、SKハイニックスとサムスン電子など少数の企業の貢献が極めて大きい構造です。伝統的には現代自動車(ヒョンデ)と起亜(キア)が輸出を牽引してきましたが、今回はHBM(高帯域幅メモリ)を中心とする半導体が主役に。ハイニックスがサムスン電子を時価総額で上回るシーンも生まれています。

SKハイニックスのADR上場は、AIサーバー向けHBMで圧倒的なシェアを持つ同社が、米国投資家からの資金調達ルートを確保した意義深い動きです。ただし、韓国経済が半導体という単一産業への依存度を高めていることは、いずれ供給過剰や価格下落局面で大きな下振れリスクをもたらします。この点については、韓国自身も自動車、造船(LNG運搬船など高付加価値領域で中国と競う)、そして最近では防衛産業(欧米への武器輸出増)とポートフォリオを広げつつあります。半導体一本足に見える構造も、実際には複数の輸出産業が支える形になりつつあり、リスクは分散されつつあると評価できます。日本企業にとっては、韓国勢との協業と競合の両面を、戦略的に見極める段階に来ています。

香港に富裕層マネーが集まり始めた──ドバイの安全神話が揺らぐ中東情勢

ドバイ政府は3月と5月、観光業や小売業を中心に計約1100億円の支援策を打ち出しました。イラン情勢の悪化を受け、ドバイはホテル稼働率の低下や物流の混乱に加え、一部の企業や富裕層が拠点や資産を香港などに移す動きを見せているためです。ドバイでは6月にイランからのミサイル攻撃で12人が死亡、224人が負傷する事案が発生。米軍施設への攻撃が主眼だったとされますが、周辺の民間人にも被害が及ぶ形となりました。並行して、中国の不動産不況や中東情勢の緊迫化を背景に、香港に資金を移す動きが強まっています。キャピタルゲインが原則非課税など香港独自の税制が資産運用の需要を引き付けており、国家安全維持法による金融ハブとしての地位低下論を覆す形で、世界の資金が集まっているとの報道が出ています。

ドバイは長らく、中東における「金融・観光の安全なハブ」というブランドで富裕層マネーを引き寄せてきましたが、地政学リスクが直接的な形で顕在化した今、その優位性が揺らいでいます。行き先の候補としては、これまでもスイスと香港が挙げられてきましたが、中東情勢がここまで不透明になると、地理的にも中東から遠い香港の相対的な優位性が高まる構図です。

もう一つの流れとして、中国本土の富裕層が資産の一部を香港に移す動きも継続しています。従来はHSBCなど香港拠点の銀行を経由して海外への逃避を図るルートが機能していましたが、これは近年難しくなりました。それでも、中国本土に置いておくよりは香港のほうが取り扱いの自由度が高い。九龍地区の新開発エリアなどが、こうした資金の受け皿になっているとみられます。今後、中東富裕層と中国富裕層の両方が香港に集まる形になれば、香港の金融ハブ機能は「言論の自由の低下」という別の論点はあるものの、経済的なプレゼンスとしては再拡大する可能性があります。日本の金融機関・不動産事業者にとっても、香港との関係設計を再考する時期に来ています。

中国原潜からSLBM発射訓練──「核クラブ」入り、日本を批判できる立場か

中国海軍が最近、原子力潜水艦から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射訓練を実施したことが明らかになりました。中国政府は「日本の軍事訓練に沿った措置で特定の国を標的としたものではない」と説明していますが、米国側にも約1時間前に通告があったとの情報があります。原子力潜水艦は世界のどこにも展開可能で、180日から場合によっては1年間、浮上せずに作戦行動を継続できます。核弾頭の搭載も可能で、今回のSLBM発射は太平洋の数千キロ先まで飛翔したとされます。

中国は事実上、原子力潜水艦からの核弾頭搭載SLBM発射能力を確立したことになります。米国、ロシア、英国、フランスに続き、いわゆる「戦略核クラブ」入りの実態が見えてきました。中国は日本の防衛費増額に対して「新型軍国主義」との批判を繰り返しますが、自国は日本の10倍以上の国防予算を投じ、原潜も含む戦略兵器を体系的に整備しています。

中国の外交白書(6月17日公表)は、名指しは避けつつ日本の高市政権を念頭に「一部の国で軍国主義が再燃し、国際安全保障は脆弱な局面にある」と警告しました。ロシア、北朝鮮、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーとの共同声明でも同様の表現を盛り込んでいます。しかし桁違いの軍拡を進める中国が、日本の防衛費増額を「軍国主義復活」と批判する構図には、率直に整合性を欠く面があります。中国流の情報戦は、同じ主張を各所で繰り返すことで既成事実化を狙う手法です。日本としては、事実に基づく反論を、複数の言語・地域で継続的に発信する体制を強化する必要があります。

東京都心5区のオフィス空室率1.99%──コロナ禍後の出社回帰と企業余力の回復

オフィス仲介大手の三鬼商事が7月9日発表した6月の東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィス空室率は、前月比0.08ポイント低い1.99%となりました。2%を下回るのは2020年6月以来6年ぶりで、コロナ禍後の出社回帰の広がりや、企業が業容を拡大しオフィスを移転・拡大していることが要因とみられます。

私はこの数字を意外な形で受け止めています。テレワーク定着後の企業はオフィス面積を削減する方向に動くと予想していましたが、実際には企業がスペースを広めに取り直す方向に舵を切っている。賃料も下がるどころか、上昇傾向です。

その背景には、二つの要因があると考えられます。第一に、企業業績の回復と一定の余力です。円安効果や海外事業の伸長で企業に余裕が出て、事務所の刷新に回す資金が確保できるようになった。第二に、AI・データ活用が本格化し、共同作業や会議用のスペースが従来以上に求められるようになったこと。単純な席数削減ではなく、機能を持たせたスペースへの再編投資が広がっています。個人的には、その分の予算を給与に振り向けたほうが従業員のロイヤリティは高まるとも考えるところですが、企業としての戦略的な優先順位の判断が反映されつつあります。日本の労働市場と不動産市場の関係が、次のフェーズに入りつつあるサインだと私は受け止めています。

—この記事は2026年7月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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