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KON1084「NTTの社名変更とグループ再編/パナソニック1万人削減/金融業界の動き:インド進出とデジタル提携/塩野義×JT医薬品/三菱自動車&鴻海/商社の完全子会社化/国際情勢の断面/停戦交渉の行き詰まり」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1084「NTTの社名変更とグループ再編/パナソニック1万人削減/金融業界の動き:インド進出とデジタル提携/塩野義×JT医薬品/三菱自動車&鴻海/商社の完全子会社化/国際情勢の断面/停戦交渉の行き詰まり」

KON1084「NTTの社名変更とグループ再編/パナソニック1万人削減/金融業界の動き:インド進出とデジタル提携/塩野義×JT医薬品/三菱自動車&鴻海/商社の完全子会社化/国際情勢の断面/停戦交渉の行き詰まり」

2025.05.23
2025年
KON1084「NTTの社名変更とグループ再編/パナソニック1万人削減/金融業界の動き:インド進出とデジタル提携/塩野義×JT医薬品/三菱自動車&鴻海/商社の完全子会社化/国際情勢の断面/停戦交渉の行き詰まり」

NTTの社名変更とグループ再編―日本電信電話からNTTへ、“親子上場”解消の狙い―

NTTは9日、社名を正式に「日本電信電話」から「NTT」に変更すると発表しました。改正NTT法により社名変更が可能になったことを受けた措置で、既に一般には「NTT」というブランド名が浸透しており、実質的な違和感はほとんどありません。同時に、NTTデータグループを完全子会社化し、親子上場の解消によって経営の非効率を是正する方針です。NTT本体は売上高10兆円超、利益も1兆円を上回る国内最大級の企業グループで、通信だけでなく不動産やシステム開発など多岐にわたる事業を抱えています。
グローバルで見ると、中国の移動通信会社や米国の通信大手に比べて、NTTの売上高は小さく、国内同業と比べて利益率はやや劣るのが課題とされてきました。NTTデータの海外ITサービス事業をグループ一体で強化することで、世界市場での競争力を高める狙いがうかがえます。今後、完全子会社化のメリットをどれだけ収益拡大に結びつけられるかが注目されるでしょう。

パナソニック1万人削減:家電大手の行方―時価総額でソニー・日立に大差、危機感強まる―

パナソニックホールディングスは9日、全従業員の4%相当する1万人規模の人員削減を発表しました。家電や自動車関連、バッテリーなど多角的に事業を展開している同社ですが、各事業会社に重複する間接部門が多く、効率が悪いと指摘されてきた経緯があります。投資家の視線が厳しくなる中、「体力のあるうち」に抜本的な構造改革を進める意図が見えます。
売上高は日立やソニーと並ぶ一方、時価総額では両社に大きく水をあけられました。ソニーはエンタメやゲーム事業で収益を確保し、日立は企業向けのDXやインフラで稼ぐビジネスモデルを確立。対してパナソニックは主力の家電が中国や韓国勢との競争で厳しく、なお決定的な成長エンジンを打ち出せていない状況です。大幅リストラによるコスト削減だけでなく、新事業の見極めと大胆な戦略転換が急務と言えます。

金融業界の動き:インド進出とデジタル提携―三井住友FGのイエス銀行出資、ソフトバンクとの連携―

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、インドの中堅民間銀行イエス銀行に20%出資し、持分法適用会社とする方針を明らかにしました。金額は約2400億円規模で、日本の銀行によるインド民間銀行への資本参加は初の事例となります。東南アジアに続き、巨大市場インドへの足がかりを築き、法人・個人双方の金融サービス拡大を目指す戦略です。
また、SMFGはソフトバンクとデジタル分野で提携し、三井住友銀行のアプリ「オリーブ」でペイペイが利用できるようになる一方、ペイペイ側でも三井住友カードが手数料なしで使えるようにします。金融と通信・ITが融合する中、業種を超えたアライアンスで顧客基盤を広げる狙いです。ただし「オリーブ」自体が利用者にどれほどのメリットをもたらすかは未知数で、ユーザー体験の向上やポイント還元策の強化が成否を分けるでしょう。

塩野義×JT医薬品:中堅再編の思惑―買収で規模拡大も、開発コスト増にどう対応するか―

塩野義製薬は7日、日本たばこ産業(JT)の医薬品事業を買収し、子会社である鳥居薬品を完全子会社化すると発表しました。JTはたばこ事業が本業で、医薬品は収益が薄い領域となっていましたが、塩野義も新薬開発のコスト増や国際競争の激化により、さらなる規模拡大を求められています。
ただし、JTの医薬品部門は利益水準が低く、「伸びしろの大きいパイプラインが潤沢」というわけでもありません。塩野義としては国内中堅同士の再編で研究開発コストを分散し、新製品投入を加速する狙いがあるとみられます。しかし世界大手製薬企業との競争は厳しさを増すばかりで、買収効果を十分引き出せるかどうかが今後の焦点となりそうです。

三菱自動車&鴻海:EV調達と海外戦略―自社開発負担を軽減、OEM連携で打開策―

三菱自動車はホンハイ(台湾・鴻海精密工業)からEVを調達すると発表しました。三菱は日産との共同開発で軽EVを手がけてきたものの、EV市場が一気に拡大する中、フルラインでの対応には莫大な開発投資が必要です。そこでホンハイが持つOEM生産力を活用し、モデル拡充を図る戦略に踏み切りました。
鴻海はスマートフォン受託生産の実績を背景に、EV生産でもアップルや他メーカー向けに事業を広げたい意図があります。一方、三菱自動車はアセアンと一部の地域でオフロード・SUVイメージが強いものの、国内を含めて市場が伸び悩む状況です。ホンハイからの調達が利益面でどれほど寄与するか、また三菱が独自に強みを発揮できる分野をどう確立するかが問われます。

商社の完全子会社化:三菱食品の例―国内流通網の強化と海外拡販の両立―

三菱商事は8日、食品卸大手の三菱食品をTOB(株式公開買付)で完全子会社化すると発表しました。元々50.1%を出資して筆頭株主でしたが、改めて100%化することで、グループ全体での流通網の最適化と海外顧客網とのシナジーを狙います。
ただし、もともと三菱商事が過半数を握っていたため、経営権は既に握っていたともいえます。完全子会社化によるメリットとしては、意思決定を一本化して動きやすくなる点が挙げられますが、抜本的な流通戦略の変革がなければ成果は限定的かもしれません。ローソンや食品メーカーとの連携など、商社グループ内でも事業領域は広いだけに、流通基盤をどう活かしていくのかが注目ポイントです。

国際情勢の断面:台湾が指摘する「抗日戦争の真実」―中共の歴史観に対抗、「勝利は国民党軍」との主張―

台湾の対中政策機関「大陸委員会」は9日、中国共産党は実質的に抗日戦争に貢献していなかったと強調しました。ロシアのプーチン大統領が習近平主席に「中国共産党の指導の下で戦争に勝利した」と述べたことを受け、台湾側は「最終的に勝利を得たのは蒋介石率いる国民党政府だった」と主張しています。
実際の歴史では、日中戦争末期に中国共産党は奥地に退避しており、主に国民党軍が日本軍と交戦していたのが事実です。しかし中国共産党は「抗日戦争の勝利」を自己正当化の根拠としてきた経緯があり、それをロシアが追認する形で発言している状況です。台湾の民進党政権としても、中国大陸が宣伝する「共産党こそが日本を打倒した」というストーリーに対して、改めて異論を唱えることで国際社会に真相を発信しようとしているのが特徴です。

停戦交渉の行き詰まり:ウクライナとロシア―4州の撤退要求にゼレンスキー窮地、米も安全保障言及せず―

ロシアとウクライナの代表団が16日にトルコ・イスタンブールで行った停戦協議は、2時間足らずで決裂しました。ロシアは既に事実上占領下に置いている南東部4州とクリミア半島を国際的に承認するよう要求し、ウクライナ軍の撤退を求めたとされます。一方で、双方が捕虜1000人を返還する合意に留まり、戦況打開の見通しは立っていません。
ウクライナのゼレンスキー大統領は奪われた領土の回復と安全保障保証を求め続けていますが、米国などから明確な軍事的保証を得られていないのが現実です。ロシアが主張する大幅な領土譲歩を容認すれば、ゼレンスキー政権の正統性は失墜しかねず、停戦合意に踏み切りにくいという政治的ジレンマを抱えています。戦闘は続き、欧米の支援にも限界がある中、ウクライナの今後は極めて不透明な局面に入っています。

—この記事は2025年5月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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