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KON1097「中国経済の過渡期/AI時代の電力問題/日本の自動運転・ライドシェア/半導体の国際競争/AI人材育成をめぐる錯覚/グローバルプラットフォーム不在の理由」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1097「中国経済の過渡期/AI時代の電力問題/日本の自動運転・ライドシェア/半導体の国際競争/AI人材育成をめぐる錯覚/グローバルプラットフォーム不在の理由」

KON1097「中国経済の過渡期/AI時代の電力問題/日本の自動運転・ライドシェア/半導体の国際競争/AI人材育成をめぐる錯覚/グローバルプラットフォーム不在の理由」

2025.08.28
2025年
KON1097「中国経済の過渡期/AI時代の電力問題/日本の自動運転・ライドシェア/半導体の国際競争/AI人材育成をめぐる錯覚/グローバルプラットフォーム不在の理由」

中国経済の過渡期 ― 不動産とEV業界に迫る危機

今、中国経済は大きな転換点を迎えています。最大手の不動産会社・恒大集団の上場廃止が象徴するように、債務危機は深刻化しており、他の不動産企業も連鎖的に経営難に陥る可能性があります。さらにEV市場では数百社が乱立しましたが、生き残っているのはごく一部です。過剰投資と過当競争により淘汰の波が押し寄せており、習近平政権3期目の最大の悩みの一つとなっています。中国はかつて「世界の工場」として経済成長を遂げましたが、そのモデルが崩れ始めているのです。日本企業にとっては、中国依存リスクをどう減らすかが今後の課題となるでしょう。

AI時代の電力問題 ― データセンターは火力頼みか

アメリカではAIデータセンターの電力需要が急増しています。日本でも今後同様の傾向が進む可能性がありますが、再生可能エネルギーは出力が安定しないため、データセンター運営には不向きです。原子力発電の再稼働が進まない現状では、結局火力発電に頼らざるを得ないというのが現実です。環境負荷とのバランスをどう取るのか、日本はエネルギー戦略を抜本的に見直さなければなりません。AIの成長を支える電力インフラは国家競争力そのものに直結する問題であり、早急な意思決定が求められます。

日本の自動運転・ライドシェア ― 事故許容度が最大の壁

タクシー運転手不足や地方交通の衰退を背景に、自動運転やライドシェアへの期待は高まっています。しかし日本では、一度事故が起きると社会的批判が高まり、制度そのものが止まってしまう傾向があります。アメリカのように「事故を積み重ねながら安全性を高める」という工学的発想が浸透していないため、導入が遅れているのです。また、ライドシェアに対する日本人特有の心理的抵抗も障害となっています。新しい技術を社会に受け入れるには、国民的な合意形成とリスク許容度の再設計が必要です。

半導体の国際競争 ― ラピダスの挑戦と不正流出疑惑

北海道で2ナノ半導体試作に成功したと発表したラピダスですが、その裏でTSMCの技術流出疑惑が報じられています。もし事実であれば、日本企業の信頼性を大きく損なう事態です。半導体は国家安全保障と直結する分野であり、日本は「自前主義」に固執するのではなく、むしろTSMCや海外先端企業と連携する戦略を取るべきです。世界の半導体競争は熾烈を極めており、時間と資金を浪費している余裕はありません。日本が取るべき道は「協調と集中投資」です。

AI人材育成をめぐる錯覚 ― アフリカ3万人計画の限界

政府と東大松尾研究室がアフリカでAI人材を3万人育成する計画を発表しました。しかし現実には、AI分野はすでに中国と米国が圧倒的に先行し、研究論文や人材数で日本は到底追いつけません。アフリカでの教育支援は意義がありますが、国際競争の最前線に影響を与えるとは考えにくいのです。AIは「量と質の勝負」の世界であり、すでに世界的論文の大半は中米主導で生み出されています。日本は資源を分散させるのではなく、特定分野での強みを徹底的に磨くべきです。

グローバルプラットフォーム不在の理由 ― 日本の挑戦は可能か

なぜ日本からGAFAのような企業が生まれにくいのか。その背景には規模や資金不足よりも、既存事業への依存と「失敗を許さない文化」があります。歴史を振り返れば、戦後の混乱期や明治維新のように秩序が崩れた時代には松下やソニー、本田といった革新的企業が次々に誕生しました。つまり、イノベーションは「秩序が壊れる時」に芽吹くのです。現在の日本では官僚機構や大企業が既得権益を守り続け、挑戦を阻んでいます。若い起業家が自由に挑戦できる環境づくりが不可欠です。

インドネシア首都移転計画 ― ブラジルの轍を踏むか

ジャカルタからカリマンタン島のヌサンタラへ首都を移転する計画は、完成が近づきつつあるものの停滞しています。公務員の移住はわずか千人規模にとどまり、街としての機能は程遠い状態です。ブラジルが首都ブラジリアを建設した際には100万人規模で都市を形成しましたが、インドネシアの計画は規模不足が明らかです。政権交代で優先度も下がり、今後の実現性は低いと見られます。巨大国家の首都移転は、単なる建築事業ではなく国家的意思の結集が不可欠なのです。

AI検索とブラウザ戦争 ― クローム売却の可能性

米司法省の独禁法判断により、グーグルのクローム事業が分離・売却される可能性が出ています。AI検索を手掛ける新興企業パープレキシティAIは買収意欲を表明しました。従来の検索は大量のリンクを提示する形式でしたが、AI検索は回答を要約し、次の質問へつなげる「会話型検索」へと進化しています。クロームという巨大な窓口をAI企業が手にすれば、検索市場の勢力図は大きく変わるでしょう。検索の主導権争いは、まさに次世代インターネットの覇権争いでもあります。

—この記事は2025年8月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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