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KON1075「老朽マンション/北海道新幹線/コンテナ船大手/トライアルHDと西友/パナマ運河とCKハチソン/カナダ情勢」

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KON1075「老朽マンション/北海道新幹線/コンテナ船大手/トライアルHDと西友/パナマ運河とCKハチソン/カナダ情勢」

2025.03.21
2025年
KON1075「老朽マンション/北海道新幹線/コンテナ船大手/トライアルHDと西友/パナマ運河とCKハチソン/カナダ情勢」

老朽マンション問題: 改正マンション関連法と再生のハードル

政府は4日に老朽マンションの管理や再生を円滑化するため、区分所有法などの改正案を閣議決定しました。従来は取り壊しや売却に全員の同意が必要でしたが、改正により5分の4以上の賛成で可決できるようになります。また、所在不明の所有者については、裁判所の許可があれば決議の母数から外すことが可能となりました。日本では築40年以上のマンションが急増しており、33年時点で274万戸が修繕や建て替えを必要とする見通しですが、管理組合の積立金不足が深刻化しているのも現実です。一歩前進ではあるものの、5分の4のハードルは依然として高く、所在不明の区分所有者の扱いも課題が残ります。改正法の実効性を高めるには、更なる要件緩和や財政支援策の検討が不可欠です。

北海道新幹線: 延伸工事の大幅遅延と地域開発への影響

北海道新幹線の新函館北斗~札幌間は、当初2030年度末の開業を目指していましたが、軟弱地盤やトンネル工事の難航により、2038年度末まで遅れる見通しです。2012年の着工以来、予想外の岩盤や軟弱地帯が見つかり、対応に時間を要していることが主な原因とされています。開業が先延ばしとなると、札幌駅や新駅周辺の再開発にも影響が及び、観光・ビジネス需要を期待する地域経済への打撃も懸念されます。リニア中央新幹線など、ほかの大型プロジェクトでも同様の遅延が相次いでおり、安全性の確保と費用対効果を見極めながら計画を再検討する必要があります。

コンテナ船大手:ONEの巨額投資計画と世界トップ企業との競合

日本郵船・商船三井・川崎汽船のコンテナ船事業を統合して誕生したオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は、2030年度までに約3兆7500億円を投じる大規模な投資計画を打ち出しました。新造船42隻の建造に加え、海運会社の買収や出資も視野に入れ、世界的な運航規模を拡大する狙いです。中国企業の統合やデンマーク系など大手との競争が一段と激化しているなか、グローバルサウスを含む新興国の貿易構造変化に対応することが重要になります。三社連携により世界トップクラスと肩を並べる体制を構築しつつありますが、投資のリスク管理や船員の確保も大きな課題といえます。

トライアルHDと西友:デジタル戦略の融合と大手流通への対抗

九州を地盤にディスカウントストアを展開するトライアルホールディングスは、アメリカKKRとウォルマートが保有する西友の全株式を約3826億円で買収し、完全子会社化すると発表しました。西友は西武百貨店から派生し、ウォルマート傘下で経営改革を進めてきましたが、十分な成果は上げられず、一方でトライアルはIT活用や省人化に強みを持ち、安定した利益を確保しています。今回の統合により、西友の首都圏店舗網とトライアルのデジタル戦略が組み合わされることで、イオンやパン・パシフィックHD(ドン・キホーテ)など大手流通グループと競合しうる基盤が整うと期待されます。

パナマ運河とCKハチソン:ブラックロック連合による港湾事業買収と地政学的影響

アメリカの投資ファンド・ブラックロック率いる投資家連合は、香港系複合企業CKハチソンホールディングスが運営するパナマ運河関連の港湾事業を約3兆4000億円で買収すると発表しました。世界23カ国で港湾を運営するハチソン・ポートの株式80%も取得対象となり、同社にとっては大幅な資本回収の好機です。CKハチソンはイギリス発祥の企業ながら中国系と混同されがちで、欧州や中南米を中心に世界最大級の港湾ネットワークを築いてきました。戦略的拠点であるパナマ運河を手中に収めることで、ブラックロック側は物流の要衝を押さえる形となり、地政学的にも注目される案件です。

北欧郵便事業:デジタル化がもたらす手紙配達終了と事業再編

デンマークとスウェーデンの政府系郵便事業者ポストノルドは、デンマーク国内における手紙配達を年内で終了すると発表しました。過去25年で郵便物が9割減少し、収益が大幅に落ち込んだためです。これにより約400年続いた手紙配達の歴史が幕を下ろすことになりますが、万国郵便条約との整合性や、海外から送られる郵便物の扱いなど国際的な課題も残されています。日本を含む先進国でも電子メールやSNSの普及が加速し、事業構造の抜本的な見直しが避けられない状況です。今後は宅配便やデジタルサービスとの連携をどう図るかが焦点となります。

米テスラ:中国市場での後退とブランドイメージの揺らぎ

テスラの中国販売台数は2023年2月、前年同月比で49%減の約3万台となり、2022年8月以来の低水準を記録しました。急成長中のBYDなど中国EVメーカーの攻勢に加え、イーロン・マスク氏の政治的発言に反感を覚えた消費者による不買運動が広がったことも要因とみられます。アメリカ本土でも新車販売が前年同月比5%減となり、4カ月連続の前年割れが続いています。テスラは若い層の支持や革新イメージで成長してきましたが、競合他社の台頭とマスク氏への批判が重なり、ブランドイメージが低下しつつある状況です。今後は価格政策の再検討やCEOの発信戦略が重要になるでしょう。

カナダ情勢:マーク・カーニー首相就任と金融専門家への期待

カナダの与党・自由党は、トルドー首相の後任として元カナダ銀行総裁・イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏を選出しました。政治経験は乏しいものの、ブレグジット期の金融リスク管理などで実績を残し、国際的にも高い評価を得ています。今後はアメリカとの貿易戦争や近く控える総選挙に向けて、政策手腕を試されることになります。一方、保守党の支持率が依然として強く、自由党が政権を維持するには連立交渉や国内経済改革を円滑に進める必要があります。カーニー氏は金融専門家としての知見をどう政治に生かすのか、そのリーダーシップに注目が集まります。

—この記事は2025年3月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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