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KON1052「自民党総裁選/石破新内閣/兵庫県・斎藤知事/外国人労働者/スイス人口動態」

2024.10.04
2024年
KON1052「自民党総裁選/石破新内閣/兵庫県・斎藤知事/外国人労働者/スイス人口動態」

▼自民党総裁選 新総裁に石破茂氏を選出
安定感はあるが面白みに欠ける新総裁、意欲的なメッセージを期待

自民党総裁選の投開票が27日行われ、決選投票の結果、石破茂氏が次期総裁に選出されました。1回目の投票では高市早苗氏が首位でしたが、決選投票では旧岸田派の議員や小泉氏を推した菅前総理と関係が近い議員を中心に、まとまった票が石破氏に回ったと見られ、石破氏は臨時国会初日に首相指名選挙を経て、新内閣を発足させる見通しです。

今回の総裁選では意外な展開がありました。総選挙が近づいている今、「選挙の顔」として非常に人気のある小泉進次郎氏が当初、総裁選に勝利すると予想されていました。しかし9人の候補者による総裁選が進む中で、小泉氏の政策や姿勢があまりにもお粗末だと評価され、議員票は多かったものの、一般党員の支持は得られませんでした。一方で高市早苗氏が急速に支持を伸ばし、石破氏との決選投票となりました。決選投票が石破氏と高市氏となった場合には、石破氏が負けるとの票読みが行われていたことから、高市氏に固まっていた票を崩す必要があるため、その調整が一晩かけて行われたと聞きます。その調整には、菅氏と岸田氏が重要な役割を果たしたとされ、派閥の強みが生かされたようです。

ただ石破氏は5回目の総裁選挑戦となるため、若干マンネリ感があることも否めません。彼の話は長く、内容が分かりにくいという声もあり、これからは彼が日本をどう導いていくのか、興奮できるような新しい視点が求められています。彼はキャンディーズの熱烈なファンで、カレーやラーメンが好きだと、庶民的なキャラクターであるエピソードも語られますが、これだけでは国民の心をつかむのは難しいかもしれません。

私はとても親しい友人と共に、石破氏とはよくお酒を飲む仲でした。初期の総裁選では、全面的に彼を応援していましたが、次第に彼の話す内容が変わらないことで、次第に退屈になりました。5回も総裁選に出馬しながら、総裁になったら何をするかという明確なビジョンが感じられず、興奮することもなくなり、私は徐々に応援の手を引くようになってしまいました。小泉氏に比べると失点が少なく、安定感のある政治家ではありますが、その安定感ゆえに面白みに欠けるという評価が、早々に出てくるのではないかと感じています。

さらに石破氏はテレビの出演数が多く、よく政策の解説をしていましたが、自分の意見を述べるのではなく、状況説明に終始することが多かったように思います。安全安心が重要だなどといった誰でも言えることではなく、もっと力強く「これがやりたい」という意欲的なメッセージを国民は求めているのではないでしょうか。

今回は9人が立候補したことで選挙戦が盛り上がり、小泉氏だけではなく上川氏など、党内の顔触れが国民に広く知られるようになりました。これにより、立憲民主党に対しても自民党が優位に立つことができたと言えます。今回の勝利に大きく貢献したのは菅氏と岸田氏と言われており、菅氏は副総裁に任命されました。そして高市氏を全面的に応援した麻生氏は敗軍の将となり最高顧問へ、そして高市氏は新たな人事には関わらないと宣言しています。

振り返ると、岸田氏は非常によい首相だったのではないかと思います。彼の言動は明確で、派閥の解消においても自爆テロのような大胆な行動を取り、オールマイティでさまざまな政策を実現させました。岸田氏との差別化を図るためには、石破氏は相当な努力が必要であると感じます。

▼石破新内閣 党役員、閣僚人事に着手
菅氏の副総裁任命は、麻生氏へのお仕置きか

自民党の石破茂新総裁は28日、党役員、閣僚人事に着手し、幹事長に森山裕総務会長、選挙対策委員長に小泉進次郎元環境大臣を起用する方針を固めました。また林芳正官房長官は続投の方向で、週明けに新たな党執行部を始動し、臨時国会を召集する101日に新内閣を発足させる考えです。

この人事は、非常に堅実な選択だと言えるでしょう。今回、石破新総裁を支えた主要な人物が森山氏であることから、幹事長への起用は適任だと考えられます。また小泉氏は党の顔として、選挙で重要な役割を担うため、選挙対策委員長のポジションは妥当です。しかし選挙対策委員長は、各選挙区で推薦候補を決定する責任があり、小泉氏にその役割を一人で担わせるのは難しいかもしれません。そのため、彼を後方から強力にサポートする人物を配置せねばならず、腹話術のような対策が求められるでしょう(笑)。さらに、菅氏の副総裁任命は、麻生氏に対する一種のお仕置きではないかという見方もあります。

▼兵庫県・斎藤知事 失職、知事選再出馬の意向
知事を失職するも、KY行動は改められず

兵庫県県議会から不信任決議を受けた斎藤元彦知事は26日、地方自治法の規定に基づき30日付けで失職した上で、再び知事選に出馬する考えを表明しました。斎藤氏は自身のパワハラ疑惑などを受けた県政の混乱について「結果的に私に大きな責任がある」とする一方で「仕事をしていくことも責任の果たし方」と述べ、再出馬に意欲を示しましたが、県議会の各会派は対決姿勢を強めており、自民党や維新の会などは独自候補の擁立を目指す方針です。

斎藤知事の行動は空気が読めない、「KY」という表現がぴったりで、兵庫県議会の全議員が不信任決議案を共同提出し、全会一致で可決されたにもかかわらず、彼は再出馬の意向を示し、2時間にわたる演説の中で自身の業績を次々と述べました。一部のマスコミは演説内容の全てを流しましたが、その他ニュースではその部分は編集でカットされました。斎藤知事が自身の功績を失職時の会見で語ったことは、事実上選挙運動と見なされるべきであり、その点においても選挙のルールを理解していない、KYな様子がうかがえます。

彼が語った内容は全て事実でしょうが、彼は「こんな素晴らしい功績があるのに不信任案を提出されたなんて、おかしいでしょう?」と県民に訴えたのです。県民の中には、彼の話を聞いて「この人にもう少し続けさせたほうがいいのではないか」と考える人も出てくるかもしれません。しかし、これは明らかに選挙運動の一環です。選挙に出馬を表明した後は、対立候補と同じ土俵で政策を論じ合うべきであり、一方的に自身の功績を語ることは避けなければなりません。この人はKYだけではなく、非常にずる賢いと言えるでしょう。

▼外国人労働者 今後5年間で、日本で25万人就労めざし
優秀な労働者確保には相互認証は必須

来日したインドネシアのイダ・ファウジア労働大臣は16日、今後5年間で日本に25万人の労働者を送り出す目標を明らかにしました。日本政府が在留資格特定技能の受け入れ見込み数を拡大したのを受け、目標を2.5倍に引き上げたもので、イダ氏は看護などの資格を両国で相互認証する必要性を指摘しました。

これには、私は大拍手を贈ります。日本では技能実習生が1年程度働いた後、受け入れ先が優秀だと認めても、漢字や専門用語を含む試験に落ちて帰国を余儀なくされるケースが多々あります。これは非常にもったいないことです。イダ労働大臣の提案のように、インドネシアでの資格取得者を特定条件下で日本に滞在させ、そのまま仕事を継続させればよいのです。例えば1年間の修行中に非行などをせず、問題なく仕事ができていれば継続的に働けるようにするなどの制度が考えられます。

特定技能1号在留外国人数に関するデータによると、インドネシアからの労働者はベトナムに次ぐ約34200人です。また介護分野での在留資格を持つインドネシア人は1160人、特定技能1号で介護に従事している人数は7311人です。フィリピン人は英語が得意なため、世界中で引く手あまたですが、インドネシア人は英語がやや不得手な面があるため、両国の相互認証制度をというイダ労働大臣の提案は非常に意義があるもので、私は強く賛同しています。

▼スイス人口動態 永住人口が初めて900万人超
北海道の成長施策は、スイスをお手本に

スイス連邦統計局が19日発表した20246月末のスイスの永住人口は、9002763人で、初めて900万人を超えたことが分かりました。また、この12年間で永住人口は100万人増加したということで、高い生活水準や安定した経済などを背景に、EU加盟国などから移住する人が増えているほか、移住者の家庭の出生率が高いことなどが人口増加に寄与したと見られます。

12年間で100万人も増加したというのは驚くべきことです。スイスの人口は外国籍の住民が増加しており、現在の総人口は900万人を超えています。国籍別の人口構成を見ると、スイス国籍の割合は70%を下回り、ドイツ語圏、イタリア語圏、フランス語圏のほか、ポルトガルなどからの移住者も見られます。

われわれ向研会が作成した、北海道とスイスの比較資料があります。北海道の成長が、スイスに比べてどれほど遅れているかが分かります。北海道の面積はスイスの2倍ですが、人口は少なく減少傾向にあり、GDPもスイスの4分の1以下です。北海道はスイスに負けないような成長を遂げるべきで、日本国から独立して活性化させるような大胆な取り組みが必要です。以前より、もし私が北海道大統領になったら、移民大国として経済を活性化させるという考えを向研会で提案してきました。

ただ一つ、税金などの面ではスイスに比べて日本は重く、特に相続税などが高いこともあり、富裕層が北海道に集まることはあまり期待できません。これに対して、スイスでは移民や難民の受け入れは少ないものの、富裕層が多数移住してくるため、その点で非常に有利な状況にあります。スキーリゾートなどの観光資源では、スイスと北海道には共通点がありますが、日本がいかに北海道の潜在力を生かし切れず、駄目にしてしまっているかが分かります。スイスの成功例を参考にして、北海道の将来についても考えていただきたいと思います。

—この記事は2024年9月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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