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KON1020「花王/台湾TSMC/英郵便局冤罪事件」

2024.02.09
2024年
KON1020「花王/台湾TSMC/英郵便局冤罪事件」

▼花王 ヘルシア事業をキリンビバレッジに売却
ヘルシア・ブランド存続の鍵は売却条件にあり

花王は1日、緑茶やスポーツドリンクなどのヘルシア事業をキリンビバレッジに売却すると発表しました。2003年に発売したヘルシアは、体脂肪を減らす効果でお茶では初めて特保として国から認定されるなど、花王の看板商品の一つでしたが、近年は競合製品の増加で売り上げが減少していたほか、シェアも落ち込んでおり、事業の選択と集中を進め、業績の回復を図る考えです。

あだ花と言ってしまうとひどいかもしれませんが、花王にとってヘルシア事業はメインの仕事ではありませんでした。しかしヘルシアは人気のシリーズとなり、緑茶をはじめとした製品はよく売れましたが、ビバレッジ事業を単体で運営するのは難しく、結局はキリンビバレッジに売却することになったということです。

かつてニチレイが、アセロラを単体で扱う飲料事業を行っていました。アセロラについてはニチレイが非常に強かったのですが、経営資源投入に難航してサントリー食品に譲渡されました。しかしニチレイは原料であるアセロラをサントリーに提供し、現在でもサントリーが「ニチレイアセロラドリンク」として販売しています。一方、JTでは缶コーヒーの「ルーツ」や清涼飲料の「桃の天然水」等を販売、大ヒットしましたが、ベンディングマシンに対する影響力が小さいこともあり、サントリー食品に譲渡となりました。宣伝費をかけて育てたブランドもありましたが、サントリーは缶コーヒー「ボス」を製造、「桃の天然水」の競合製品も扱っているため、現在はJTから譲渡されたブランドは消滅しています。

ヘルシア・ブランドは今後どうなるか、移譲先であるキリンビバレッジの動向が非常に気になります。JTのようにならないよう、キリンさんにちゃんとお願いして大丈夫だよという確約を、花王さんには頑張って勝ち取ってもらいたいものです。

▼台湾TSMC 第2工場も熊本県菊陽町に
熊本県の力はどれほどか、今後の動向に注目

台湾TSMCが、熊本県の菊陽町に第2工場を建設する見通しが明らかになりました。既に完成した第1工場が回路線幅12から28ナノメートルの半導体を生産するのに対し、第2工場はより先端品となる7から16ナノとなる見通しで、政府も第2工場に、およそ7500億円規模の補助金を充てる方針です。

第1工場と同じく熊本県菊陽町に建設される第2工場は、かなり優れた工場のようです。TSMCは製造ノウハウが進んでいますので日本企業はいい影響を受けるでしょうし、この工場では日本の素材や機械などの供給も見込めます。TSMCの最先端工場は台湾・高雄市に建設中ですが、それまでは新竹の工業団地内の化学品開発団地にある工場1カ所だけに集中していましたので、第2工場は最先端の一歩手前の工場ではあるものの、TSMCの受け皿となる重要な拠点となります。同時に九州にとっては極めてありがたい存在で、ソニーを中心とした日本の客がほとんどだった第1工場とは違い、第2工場では幅広い客が見込めると言われています。

また、この工場建設により菊陽町の様相も変わってくることと思います。既に交通においては大渋滞が起こっているようですし、今は住宅も不足しています。人の確保についてもどうなるのかなど、今、熊本県の力が試されています。

▼英郵便局冤罪事件 被害者への補償を検討
株主に対して、富士通は信用回復できるのか

イギリスの郵便局をめぐる冤罪事件について、富士通は先月31日、独立機関による調査結果を踏まえ、被害者への補償を検討する考えを示しました。これは1999年から2015年にかけて、郵便局長ら700人あまりが横領などの罪で訴追されたものの、その後、富士通の子会社が納入した会計システムの欠陥が原因だったことが判明したもので、富士通の磯部CFOは改めて謝罪した上で、イギリスの政府系事業の入札には当面参加しない方針を示しました。

富士通がかつて買収したICLが持っていたシステムには、イギリス政府系が深く食い込んでおり、富士通にとっては非常にいい買い物だったのですが、そのシステムに恐ろしい問題が潜んでいたということです。この会計システムの欠陥により、郵便局長ら700人あまりが罪を着せられ、自殺者も出たことで、補償は大変なものになることが予想されます。富士通の株価も値が付かないほどの影響が出ており、大きな問題となっています。そして今回の事件にはイギリス政府も加害者側として絡み、それを政府側もよく分かっているため、富士通とイギリス政府との話し合いがどう進んでいくのかが注目されています。さらに富士通は、この問題をかなり前から知っていながら大事件に発展するまで隠していたということで、株主に対する開示責任、企業としての透明性が問われています。

関連した質問をいただいています。
「日本のSIerがグローバルで活躍できないのは英語がしゃべれないことが原因という説明が、先日のライブでありました。私自身システム業界なのですが、技術、英語、発言する意思、全てを持った人というのはだいぶ限られているのを実感しています。解決の手段として通訳を積極的に起用するのも一つの案と思うのですが、いかがお考えでしょうか」

私は無理なことだと思っています。例えば大谷翔平さんの場合は通訳が1人いますが、ほとんど大谷さんの分身のような人物で、そんな人を普通は見つけられないでしょうし、彼の給料は何億円とも言われています。システム開発においてはインドやフィリピン、ロシアやウクライナの人で英語ができる人はたくさんおりますので、通訳を付けたぐらいでは全く追い付かないでしょう。

また以前からお話ししていますが、システム開発においてはカーネギーメロン大学のソフトウェアエンジニアリング研究所が開発した能力成熟度モデルがあります。それにはレベル1から5まであって、Sierにはレベル3から4が必要とされています。しかし日本には、そのレベルに達する企業は多くありません。また、発注する側にしても自分で書き出せないという大きな問題が優れたシステム開発を阻む要因でもあります。システムを作る側にしても、発注する側にしても、人材育成が急務です。通訳がいればできるというような簡単な問題ではありません。

—この記事は2024年2月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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