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TOPAoba-BBT Education Review2050年には“受験なしで合格”が当たり前? 新しい大学入試方式 「総合型選抜」とは?

2050年には“受験なしで合格”が当たり前? 新しい大学入試方式 「総合型選抜」とは?

2025.03.06
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2050年には“受験なしで合格”が当たり前? 新しい大学入試方式 「総合型選抜」とは?

面接と小論文などで合否が決まる「総合型選抜」で大学に入学する生徒が今、増えてきています。名門国立大学でもその動きは加速しており、旧帝大の一つである東北大学は「2050年までにすべて『総合型選抜』に切り替える」との方針を決めています。大学入学共通テストの導入から早4年。日本の大学入試の形態が変わる背景には、一体何があるのでしょうか?

この記事では、現在注目を集めている「総合型選抜」と、その広がりの背景についてご紹介します。

「その大学で何を学びたいか」を重視!総合型選抜の仕組みについて

総合型選抜は旧AO入試とも呼ばれています。その大きな特徴は、「大学が求めている学生を選抜する」ことです。それぞれの大学の学校案内や入試要項にはアドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)という大学の求める学生像が書かれています。総合型選抜では、受験生が各大学の定めるアドミッション・ポリシーに当てはまる人物であるかどうかが重要視される傾向にあります。

それでは、実際に総合型選抜を導入している大学のアドミッション・ポリシーとはどのようなものがあるのでしょうか?以下に実際に掲げられている各大学のアドミッション・ポリシーの一覧を記載します。

大学名/学部・学科

アドミッション・ポリシー

京都大学/教育学部

・教科の学習及び総合的な学習の時間などにおいて学習を深め、テーマを設定して探究活動を行い、卓越した学力を身につけ、成果をあげた者、あるいは、学校内外の活動で豊かな経験を積み、創造的な 熟達を通して、深い洞察を得ている者

・人間と社会、教育や心理について関心を持ち、論理的·批判的に思考し、問題を解決する能力とコミ ュニケーション能力を持つ者 

・将来、教育や心理にかかわる専門的識見を発揮して、社会に貢献する志を持つ者

東北大学

① 専門分野に関する知識及び学問全体への興味関心と幅広い知識に基づく複眼的視野を有し, ② 教養ある社会人としての素養を備え,専門分野特有の技能を生かして社会に貢献でき, ③ グローバル社会において指導的・中核的役割を果たす自覚と展望を持ち,基礎能力を備える人を育成します。 また学士課程教育では,幅広い知識や素養を育成する全学教育科目と専門分野の基盤的知識を習得させる専門教育科目を有機的に連関させたカリキュラムを提供し,授業内外での能動的な学習を推進するとともに,学生の自律的学習力を育成します。 このため,東北大学は,上記の本学理念に共感し, ① 21 世紀の人類社会の課題に対し研究者として真剣に取り組み優れた貢献をしようとする志と ② 豊かな学識とリーダーシップを備える職業人として社会の発展に優れた貢献をしようとする志 を抱き,これを実現する固い意志と学問に対する強い好奇心を持つとともに,上記の本学学士課程教育を受けるにふさわしい高水準の学力を備えた学生を求めています。

筑波大学/人文学類

人文系の学問に関わる専門的知識を主体的に吸収し、自己の判断力を磨いていく能力と創造的な問題解決能力を有する人材を選抜します。 

早稲田大学/創造理工学部

わたしたちの暮らす現代の日本は、地震・台風・大雪などの厳しい自然条件に加え、地球環境問題、少子高齢化、あらゆる分野での国際化などに直面し、安全で快適な生活のために、国内はもとより世界中のそれぞれの地域に根ざした建築や都市のあり方が問われ、多くの国際的な貢献のできる建築の専門家が必要とされています。建築学科では、創造性豊かで、指導力に富み、率先してチームをまとめ上げる活発な学生の入学を期待しています。 

大阪公立大学/医学部医学科

医学科のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーの基礎となっている、「智・仁・勇」の三つの基本理念を理解する素地を有する下記の学⽣を求めている。

・智は医学を推進する旺盛な向学⼼と知識を意味し、これらを有している⼈

・仁は⼈への博愛の⼼を意味し、⼈を包みこむ広い⼼を有している⼈

・勇は医療を実践する決断の勇気を意味し、積極的な⾏動を起こせる⼈

これらの基本理念を有し、⾃ら学習課題を設定し、その課題に向かって勉学に励める⼈の⼊学を希望する。

また、アドミッション・ポリシーに掲げられた学生像と合致した人材を選抜する方法として、書類審査や学力試験のほかに小論文や面接などを組み合わせて一人ひとり丁寧に選考していきます。

学校推薦型選抜・一般選抜との違いとは?

現在国内の大学で採用されている入試形態には、総合型選抜にもいくつかの種類があります。それらと総合型選抜の違いについてご紹介します。

①学校推薦型選抜

出身高等学校長の推薦を受けて出願が可能となる選抜です。公募推薦と指定校推薦の二種類があります。推薦の条件には調査書の学習成績の状況が基準以上を満たしていることや、スポーツに秀でた学生を対象とする「スポーツ推薦」、民間の英語資格や日商簿記などの技能を持つ学生を対象とした「有資格者推薦」、あらゆる社会・奉仕活動、部活動、生徒会活動などの実績によって評価を行う「課外活動推薦」など様々なものがあります。
学校推薦型選抜では、総合型選抜と同様に小論文や面接などの試験が課されることが多いです。しかし、学校推薦型選抜では高等学校での成績がより重視され、大学のアドミッション・ポリシーと合致する学生を選抜する総合型選抜とは異なります。

②一般選抜

これまで「一般入試」と呼ばれていた選抜方法で、受験生の教科学力を重視したものです。受験生は大学、学部ごとにそれぞれ定められた教科の学力試験を受験し、その点数によって合否が決まります。国公立大学では、特に1月半ばごろに行われる大学共通テストの結果と、2〜3月ごろに行われる各大学での個別学力検査(個別試験、二次試験)の結果を組み合わせて選抜が行われることが特徴です。
総合型選抜でも一般選抜と同様に、その大学の研究レベルに見合った基礎学力があるかどうかの学力試験が行われることがあります。しかし、一般選抜では総合型選抜に特徴的なアドミッション・ポリシーに掲げられた学生像と一致した人材であるかどうかを加味する要素がありません。学力を最も重視するという点において、総合型選抜とは異なっています。

なぜ総合型選抜が重視され始めているのか?

それでは、数ある選抜方法の中でなぜ総合型選抜が重視されるようになったのでしょうか?
その理由として、主に二つのポイントが挙げられます。

まず一つ目に、学生の早期確保が可能になるという点です。これまで広く採用されていた一般選抜は1月から3月の間に行われるのに対し、総合型選抜は9月から12月と年内のうちに行われます。合格条件には合格を受けた場合、必ず入学するといった条件がつくこともあるため、少子化の中で学生を確実に確保できるというメリットがあります。さらに、大学によっては入試の試験監督を大学教員が担うことがあります。これまでの一般選抜が行われる時期には、大学内では卒業論文や修士論文の締め切りが設定されている場合が多く、大学教員の負担を減らすことができるという点でも入試の時期を早めることが重要になります。

二つ目に、より多様な人材を確保できるという点です。文部科学省が2024年3月に発表した調査によると、総合型選抜を導入した大学の感じたメリットについて、「他の選抜方法と比較して、アドミッション・ポリシーに敵った入学者を選抜することができた」「他の選抜方法と比較して、学力検査を重視した入試では選抜できない資質を持つ学生を選抜することができた」「他の選抜方法と比較して、主体性・多様性・協同性をもって学ぶ姿勢や態度を持つ入学者を選抜することができた」といった項目において「大変当てはまる」「やや当てはまる」と回答した大学がいずれも7割以上を占めています。面接や小論文といった方法により学生一人ひとりを丁寧に評価することで、大学の特色にマッチしたより高度な人材を選抜することが可能になります。

まとめ

学力検査だけでは測ることのできない多様な能力、主体性を持った学生を選抜することができるという点で注目を集めている総合選抜型入試は、少子化が進む日本においては非常に合理的な入試形態であり、今後もより広まっていくと考えられます。一方、総合型選抜で注意するべき重要なポイントもあります。それは、小論文や面接といった、教科学力では測ることのできない部分を重視する選別方法であるとはいえ、「大学の研究レベルに見合った基礎学力は最低限必要である」という点です。学生の興味関心や能力に見合った大学であるかどうか、受験生だけでなく大学側も評価することが可能となる総合型選抜。より高度な人材が適切な環境で活躍することができるようになるという点で期待が高まりそうです。

 

原稿:鈴木優衣

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