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SEL教育とは?子どもたちの将来を支える新しいカギ

2025.02.27
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SEL教育とは?子どもたちの将来を支える新しいカギ

アメリカを中心にイギリスやカナダなどで行われているSEL(Social Emotional Learning)が日本の教育現場にも導入されるようになってきました。日本語で「社会性と情動の教育」と訳されるこのプログラムはいったいどのようなものなのでしょうか?導入することによるメリットもあわせてご紹介します。

SEL(Social Emotional Learning)とは?

SELは先述の通り「社会性と情動の教育」と訳される教育プログラムです。自尊感情と対人関係能力を育てる教育ともいわれています。これまでの教育では、基礎知識や記憶力、判断力などの認知能力を育成することが主流とされてきました。一方で、近年アメリカを中心に、意欲、関心、自信、協調など心の動きに関する能力(非認知能力)を育成する動きが高まっています。認知能力と非認知能力は絡み合うように伸びると言われており、子どもたちは学力だけでなく、心もはぐくむことがこれからの時代を生きていく上では不可欠です。

SELには、以下の5つの能力領域があり、それらを育成することが目指されます。


1 自己への気づき
自分の感情や考え、価値観を理解し、それらがどのように行動に影響を及ぼすのかを理解する能力。

2 自己のコントロール
様々な状況において自分の考え、感情、行動を効果的に管理し目標や願望を達成する能力。

3 他者への気づき
多様な背景、文化、状況を持つ他者の視点を理解し、共感する能力。

4 対人関係
多様な個人及び集団と健全で実りある関係を築き、維持する能力。

5 責任ある意思決定
様々な状況における個人の行動や社会的相互作用について、思いやりのある建設的な選択をする能力。

 


そして、これら5つの能力の周囲はClassroom, Schools, Families & Caregivers, Communitiesによって取り囲まれており、子どものスキル向上にはこれらの環境と適切な学習環境が必要であるとされています。

 

【川上ら(2024),304より引用】

SELを日本の教育に導入するメリットとは?

SEL教育導入のメリットは、これからの時代を生きていくうえで不可欠な非認知能力の育成を行うことができるという点です。先述したとおり、認知能力と非認知能力は絡み合うように伸びると言われています。そのため、非認知能力を高めることは結果として子どもたちの学力向上や主体性の育成にも貢献できます。

それでは、日本にSEL教育を導入するメリットは何でしょうか?

それは、日本の教育に関する社会問題の解決にSEL教育が貢献しうることがあげられます。現在、日本の教育現場で問題となっていることの一つが、子どものいじめ・不登校率の高さです。日本では年々不登校児童・生徒の数が増えており、その半数以上が学校生活に対する無気力や不安を抱えています。また小中高等学校でのいじめの認知件数も年々増えている傾向にあります。いじめが起きる要因の中には、加害者側が不満やストレスを抱え、その発散方法として他者を傷つけるといった行動に出ることもあるとされています。

小中29万人、不登校児童生徒数が過去最多に 文科省調べ

SEL教育は自信をつけて他者の気持ちを理解し、集団の中で思いやりのある建設的な選択をする能力を培うことが目指される教育です。SEL教育によって培った能力は、まさにいま日本の教育で課題とされている事柄を解決する手だてとなる可能性があります。

まとめ

アメリカを中心に注目が集まっているSEL教育。これからの社会を生きていくためには、他者に共感し、自身のストレス管理やキャパシティの把握といった情緒的なスキルの向上が欠かせません。このような能力を育成することで、自己肯定感が高まり、もともと行われていた学習にもより積極的に参加できるようになることが期待できます。さらに、日本では教育現場でのいじめや不登校といった深刻な問題にもアプローチできる可能性があります。SEL教育の日本での積極的な導入が期待されます。

 

原稿:鈴木優衣

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