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TOPAoba-BBT Education Review【対談】保護者から見た「英国ボーディングスクールのリアルライフ」➀

【対談】保護者から見た「英国ボーディングスクールのリアルライフ」➀

2023.11.29
ニュース
【対談】保護者から見た「英国ボーディングスクールのリアルライフ」➀

新型コロナウィスル感染症の流行が収束方向に向かい、国境を越えた人の移動も再開・活発化が進むなか、海外ボーディングスクールへの注目も高まっています。語学習得、質の高い教育内容もさることながら、親元を離れて寮生活を送ることで人間力を養うことができるのがボーディングスクールの魅力の一つ。その一方で、経験者がまだ少ない日本では、なかなか実態がつかみにくいのが現状です。

そこで今回、英国ボーディングスクールに我が子を送り出した経験を持つeduJUMP!ライター・knockoutが、イギリスで学ぶ小中高生をサポートする企業の日本代表で、自身も現役英国ボーディング生の親でもある黒田よりこさんと対談。保護者から見た英国ボーディングスクールについて、そのリアルな姿を赤裸々に語ります。(全3回)


Yoriko KURODA黒田 よりこさん
1974年生まれ。新卒で婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に就職し、女性誌の編集に携わる。家庭の都合で中東とイギリスに滞在し、国際的な教育に触れたことを契機に教育の記事を国内メディアに寄稿。帰国後Go Beyondを立ち上げ、国内外企業のブランド・マーケティングを支援。イギリスで学ぶ小中高の留学生のサポートを行う英系企業ピッパズ・ガーディアンズの日本代表も務め、現地からの最新情報をもとにイギリスのボーディングスクール留学の情報発信に努めている。

knockout

eduJUMP!ライター knockout
40代・三児の父。主夫として子育て・教育に関わる。地元自治体の教育および福祉分野の審議会委員やPTA活動を通じて教育改革・教育行政に関心を持つ。長子の留学をきっかけに海外の教育事情にも視野を広げ、SNSを中心に情報発信。2.4万人がフォローするX(旧Twitter)アカウントは @knockout_ 。


第1回 ボーディングスクールの理想と現実

スポーツも音楽も充実した設備。寮生にとっては生活の一部であることから、比較的自由に使える(knockout提供)

意外!?ボーディングスクールの質素な生活

knockout 息子は、2年間ボーディング生として在籍したシックスフォーム(高校)を今年6月に卒業しました。

留学前に抱いていたキラキラしたイメージに対して、実際の現地での生活は「思いのほか地味だった」と言います。例えば、食事はシンプルで、栄養基準はしっかり満たされてるのですが、決して高級というわけでもなく、「日によって当たり外れも大きい」と笑いながらぼやいていました(笑)。

黒田よりこさん(以下、黒田)わが家はシニアスクール(中学校)からボーディングスクールに通わせていますが、まさに同じような印象をもっています。「質素」で「規則正しい生活」がボーディングスクールのひとつの特徴ですよね。

富裕層の生徒も多いので、そうした子たちにあえて慎ましい生活をさせる面もあるんだろうと思っています。親元にいるとどうしても甘やかせてしまいますから、恵まれた環境から切り離し、最低限の持ち物や環境で過ごさせる生活はボーディングスクールの良さでもありますね。

knockout 寮では生活リズムへの気配りを感じました。時間になるとwi-fiが切られ、先生が早く休むよう見回りと声がけにきてくれる。夜型生活になりがちな年代ですから、自由と責任のバランスにも配慮しつつ、一定の制約が課されることは、体調管理スキルや自制心を育む面でもプラスに働いたと感じています。

黒田 睡眠時間の確保はかなり重視されていますね。息子は6月まで中学生だったのですが、22時20分にはデジタルデバイスは回収されていたそうです。睡眠をしっかりとるための働きかけは年齢によって段階的に変えているんですね。

knockout 中学・高校という時期は、ある程度自分でやってもらわないと困るし、失敗から自分で学んでもらわなきゃいけない。親があれこれアドバイスするのを少しずつ控えてかなきゃいけないタイミングなんですけど、日本で一緒に暮らしているとそれがなかなか難しい。

とくに熱心な親御さんほど、生活の面でも、学業の面でも、ついつい口を出してしまう。口を出しながらも、親がいろいろ世話を焼く育て方に疑問も思っている。そんなアンビバレントな状況に頭を悩まされている親御さんが少なからずいらっしゃるように感じています。

黒田 留学を考えている親御さんとお話をする機会が多いのですが、わりと皆さん、子離れしやすい環境であることに惹かれるようです。一度ボーディングスクールに入ってしまうと、親はあまり口を出せませんし、お子さんからの連絡もほとんど来ませんからね(笑)。

節度があり生活リズムを重視した生活と、自然に子離れができることをお伝えすると、みなさんとても共感してくれます。

広大な敷地は寮から校舎まで移動するのも一苦労(knockout提供)

恵まれた環境”の本質

knockout 学習面に関してもいい意味で期待外れといいますか。『あらゆる設備が充実していて、最先端の教育手法で、すごく手厚く先生が指導してくれる』という感じではなかったようでした。A level(※)の標準的なカリキュラムにしたがって淡々と毎日が進んでいく。

ただ、最低限のことしかしてくれないのかと言ったら全然そんなことはない。自主的に先生のところに学びを取りに行くと、情熱をもって応えてくれます。学びたい生徒に対しては、その生徒に応じたものを与えてくれる。そこに教育の厚みがあるのは強く感じました

(※)イギリスの高校卒業資格・大学入学資格。イギリスの高校生は大学に進学するために通常2年間、A level向けの勉強をする

黒田 勉強したい子に対しては惜しみないサポートをしてくれますよね。息子もこの本を読みなさいとか、このコンペティションにエッセーを書いて出してみなさいとか、パーソナライズドされたアドバイスを受けているようです。ですが、決して押し付けはしない。そのアドバイスを受け入れるか受け入れないかは、あくまでも個人の判断に委ねられます。

先生のクオリティも全般的に高く感じます。大学で博士課程を修了した先生も多くいて、生徒が質問に行った時にプラスアルファとなるような情報をいっぱいくれるんです。

knockout 先生と生徒のバランスもまったく違いますね。長男が高校で受けた授業では、1クラスの人数は最大でも15人程度だったと言います。イギリスの調査会社ISC Researchの統計を調べたところ、ボーディングスクール全体では先生1人(補助教員を含む)に対する生徒の比率は、1:9となっていました。先生も神様じゃありませんから、1人の先生が見ることのできる人数は限られます。丁寧に見ることができれば、取りこぼしを見逃さないばかりか、良いところを伸ばしてあげることもできる。生徒を集中して見ることのできる環境が整っていると感じます。

それが特に表れていると感じたのが、学期ごとの先生からの講評です。日本だと学期末に渡される通知票には、各教科の評定と観点別評価が数字で書かれ、小さな自由記入欄に学校生活全体の所見が書かれてあるのが一般的だと思います。それがイギリスの学校から渡される講評では、各教科どころか、数学であれば担当の先生が3人も4人もいて、その先生ごとにレポート用紙1枚ずつくらいの講評を渡してくれる。学期が終わるごとにです。読むのが大変なくらいでした。

黒田 授業での疑問やもっと学びたいことも遠慮せず先生に伝えるようにと、口酸っぱく言われるようです。小さな質問でもまずは先生に聞くことを推奨されます。寮には、夕飯の後に先生が教えに来る時間があるんです。日本での塾や家庭教師の機能も学校に組み込まれていて、そこで全部完結できてしまうんですね。

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knockout 息子は最初のうちは言葉の問題もあって先生への質問や授業への積極的な参加が難しかった時期があったようなのですが、それでもどんどん先生に話しかけなさいとレポートに書かれてありました。質問をすることによってその子がどこまで理解をしているかだけでなく、留学生の場合、その分野を学ぶうえでの言語の習得状況も把握できるからというのがその理由のようです。

黒田 例えば日本の場合、進学校ではない学校から難関大学に合格者が出ることはまれですが、ボーディングスクールではアカデミックレベルが下位とされる学校からオックスフォードやケンブリッジなどの難関大学に合格者が出るのは珍しくありません。日本の親御さんは、学校のアカデミックレベルにこだわる傾向がありますが、どんな学校であっても、意欲をもった生徒には、充実した体制と手厚い指導によって最大のリソースを注いでくれます。

knockout 先生のクオリティや、先生と生徒の数の比、そして働きかけの丁寧さを見ると、やはり恵まれた教育環境であることを実感します。ボーディングスクールと聞くと、どうしても校舎の美しさや設備の充実といった表面的なところに目がいきますが、本質はそこじゃなかったんだなと。ソフトやシステムの部分に投資している。今振り返ってみるとそう感じます。

ただ、日本にいるとイメージばかりが先行して、実態がなかなか伝わりにくい。等身大の海外ボーディングスクールを知る機会がもっとあるといいですよね。

黒田 学校によっては寮の設備なんてボロボロのところもありますしね。ベッドも、机も、それこそ数十年以上使っている、なんていうこともよく聞きます。

普段、英国で学ぶ小中高生のサポートの仕事をしているのですが、日本の親御さんがボーディングスクールに抱きがちなキラキラしたイメージを、実態に合ったものへと変えていきたい‐‐。そんな想いが私の中に強くあり、情報発信に力を入れています。

11月4日に開催する『ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア・ジャパン』では、それぞれのボーディングスクールの先生方が来日。等身大の英国ボーディングスクールを知る機会が実現します。こういったイベントをぜひ活用して、情報収集に役立てていただきたいです。(第2回へ続く)

11月4日開催!『ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア・ジャパン』

ピッパズ・ガーディアンズ代表 ベン・ヒューズ氏より

『ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア・ジャパン』は、イギリス国内外で評価の高い15のボーディングスクールとの進学相談会やイギリスの教育をよく知る専門家によるセミナーを提供するイベントです。イギリスのボーディングスクールに関する正しい情報を得て、イギリスの教育の魅力を知ることができます。

私たちは25年にわたり、ガーディアンシップ・サービスを通じて世界中から多くの留学生をイギリスにお迎えしてきました。せっかくイギリスに来たものの、残念ながら学校が適しておらず、悲しい思いをしたり、学力を最大限に発揮できなかったりする生徒も見かけてきました。このような状況を改善するためのひとつの方法として、イギリスの学校に入学する前に、ご家族とお子さまがボーディングスクールと面談をし、その学校がふさわしいかどうかを判断できる機会を日本で設けられればと考えました。

このイベントではイギリスの学校と日本のご家族が、通訳を通して直接話すことができます。お子さまが入学を希望する学校について、より多くの情報を得た上で留学を決断することができれば、学業面での成功の可能性も高くなることでしょう。また、私どもも待機していますので、ボーディングスクール進学に関する前半の質問にもお答えできます。

海外留学に興味関心のある皆さまにこの機会をご活用いただければ幸いです。

ピッパズ・ガーディアンズについて
ピッパズ・ ガーディアンズは、全英約120のボーディングスクールと連携し、遠く離れた両親に 代わって学校と密に連携を取り、留学生に日常のケアとサポートを担うガーディアンサービスと 伝統的なボーディングスクール入学のためのプライベートコンサルティングを提供している英国 の企業です。アジアで実績を積み、日本でも本格的なサービスを開始。すでに慶應義塾大学附属中高一貫校やTazaki財団からの留学生をサポートしています。

原稿:knockout
編集・構成:原知子
Image Photo by Pexels

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