
米FRB次期議長にケビン・ウォーシュ氏指名—「トランプ流」人事の意外な正当性とドル買いの加速
トランプ大統領は、FRB(米連邦準備制度理事会)の次期議長に元理事のケビン・ウォーシュ氏を指名すると発表しました。ウォーシュ氏は35歳の若さでFRB理事に就任した「天才」として知られ、名門エステローダー創業者の娘婿という側面からトランプ氏とも家族ぐるみの付き合いがあります。
特筆すべきは、この人事が単なる「イエスマン」の起用ではない点です。市場はウォーシュ氏を、トランプ氏が望む利下げを無条件に断行するタイプではなく、むしろ規律を重んじる「タカ派」と見ています。この観測により、一時高騰していた金価格は急落し、売られていたドルが買い戻されるという現象が起きました。トランプ氏にしては珍しく、実力と信頼を兼ね備えた人物を選んだと言えるでしょう。通貨の安定こそが国力の源泉であるという基本に立ち返れば、この選択は米経済にとってポジティブなサプライズとなりました。
外国人労働者250万人突破と「鎖国」の危うさ—現場を知らぬ政治家たちの「制限論」を問う
国内の外国人労働者数が過去最多の250万人を更新しました。少子高齢化が進む日本において、製造業や食品加工、サービス業の現場は彼らなしでは一日も回りません。例えばコンビニの弁当工場に行けば、少なくない外国人が勤務しています。
しかし、一部の政治家は依然として「外国人受け入れ制限」を口にします。彼らがいなくなれば、弁当の価格は跳ね上がり、供給網は即座に崩壊するでしょう。今の日本に、彼らに代わって工場のラインに立ち、公園の掃除を担う若者がどれだけいるでしょうか。政府の真の役割は、制限を叫ぶことではなく、彼らを社会の一員として適切に教育し、共生する仕組みを整えることです。フォースバレー・コンシェルジュの柴崎洋平氏が進めるような、現地の大学生に早期内定を出し、日本語や心構えを教育してから受け入れるプラットフォームこそが、これからの日本の救世主となるはずです。
日本の「鉄」の凋落と世界4位転落の現実—62年ぶりの衝撃が示す、内需低迷と中国の圧倒的物量
世界鉄鋼協会が発表した2025年の素鋼生産量で、日本は1963年以来、62年ぶりに世界4位に転落しました 。かつて1億6000万トンを誇った日本の生産量は、今やその半分、8000万トン強にまで減少しています。
この背景には、新幹線や高速道路といった大規模な建設需要の低迷に加え、中国による安価な鋼材の過剰供給があります。現在、世界のトップは中国、次いでインド、アメリカという順列になっています。日本勢では日本製鉄が孤軍奮闘していますが、買収提案を進めるUSスチールは世界29位にまで沈んでおり、そのような「過去の遺産」を抱え込んでどう戦うのか、戦略の再考が求められます。鉄の生産量は「国力の指標」と言われてきましたが、もはや物量で中国に対抗するのは不可能です。日本は汎用品の競争を捨て、より高度な付加価値と効率性を追求するステージに強制的に立たされています。
高市政権下の衆院選と「若者の盛り上がり」の消失—旬を過ぎた参政党と、混迷する野党の争点
高市首相の信任を問う衆院選がスタートしましたが、前回の参院選で見られたような若い世代の熱狂が消えています。SNSを主戦場とした参政党の拡散力は3分の1に減少しました。その理由は明白です。「外国人は不要だ」と叫びながら、自分たちがその労働力に依存している現実との矛盾を、賢明な若者たちは見抜き始めたからです。
一方で、野党側も迫力を欠いています。「中道」を掲げる勢力も生活者ファーストという言葉が空回りし、若者の支持は数%に留まっています。注目すべきは、今回、国民民主党が「103万円の壁」の見直しや消費税減税を掲げ、若者の支持を吸収している点です。しかし、財源の裏付けがないまま「二年限定で減税」といった場当たり的な公約が並ぶ現状は、有権者を混乱させるだけです 。結局、自民党がそこそこの議席を維持するという、消去法的な結果に落ち着く可能性が高いでしょう。
東大教授逮捕と「ふんぞり返る」組織の病理—ガバナンス強化を阻む、特権意識と倫理の欠如
東京大学の教授らが収賄容疑で逮捕された事件は、日本の最高学府が抱える深い闇を露呈させました。学長は謝罪しましたが、問題の本質は単なる「倫理意識の希薄さ」ではなく、東大という組織に染み付いた「ふんぞり返った」特権意識にあります。
「先生のお墨付きがあれば商売が繁盛する」と群がる業者に対し、接待やクラブでの遊興を当然のように享受する構造が医学部などを中心に蔓延しています。彼らは薬価審議会のメンバーなども務めており、その権限は強大です。大学の給与体系が大企業並みに改善されている現在でも、こうした不正に手を染めるのは、外の世界の「悪い大人たち」が周囲でダンスを踊っているからです。形ばかりの頭の下げ方では、この病理は治りません。外部の厳しい目による徹底的な監視と、研究者としての矜持を取り戻す抜本的な解体出直しが必要です。
キヤノン・御手洗氏の「90歳社長退任」に漂う老害の影—院政を敷くCEOと、日本企業の世代交代の嘘
キヤノンが発表した社長交代人事は、一見「若返り」に見えますが、その実態は「老害」と言わざるを得ません。御手洗不二夫氏が90歳にしてようやく社長を退くものの、依然としてCEO(最高経営責任者)として残り、人事権を握り続けるからです。
かつて自ら社長をクビにして会長・社長を兼務した経緯を考えれば、今回の人事が「小川氏に任せられる時期を見極める」という留保付きである以上、実質的な支配体制は変わりません。日本には90歳を超えても現役で活躍する優れた経営者もいますが、御手洗氏のケースは「院政」そのものです。キヤノンの広報は「私の履歴書」の連載に合わせて戦略的にニュースを出し、おべんちゃら的な報道をさせていますが、経営のダイナミズムを奪っているのは他ならぬトップの執着です。企業が真に進化するには、権限を完全に委譲する潔さが必要です。
中国・習近平「一人支配」への決死の告発—張友経氏の「遺書」が示す、独裁の末路と台湾侵攻のリスク
人民解放軍の制服組トップ、張友経(ちょう・ゆうきょう)氏が失脚直前に残したとされる習近平氏への公開書簡が大きな衝撃を与えています。習氏とは幼馴染の盟友であった彼が、死を覚悟して綴った内容は、「共産党の一党支配が、習近平の一人支配に成り下がった」という痛烈な批判でした。
書簡の中で最も重いのは、軍のシミュレーションにおいて「台湾侵攻は中国側の惨敗に終わる」と断言している点です。軍を自分の私兵として扱い、戦争を熱望する習氏に対し、張氏は「軍は国と国民を守るためのものであり、他国を攻めるためのものではない」と説いています。これは北朝鮮化する中国への、内部からの断末魔の叫びです。こうした直言が許されず、抹殺される組織に未来はありません。中国の暴走を止めるには、こうした内部の「良識」がいかに結集できるかにかかっていますが、現状は極めて悲観的と言わざるを得ません。
インド決済網「UPI」の席巻と日本のデジタル敗戦—銀行口座と生体認証が変える、世界金融のパワーバランス
インド政府が主導する即時決済システム「UPI」の勢いが止まりません。2024年度の年間決済件数は前年比42%増の1,800億件を突破し、そのネットワークはフランスやシンガポールなど世界8カ国へと急速に拡大しています。
このシステムの核心的な強みは、インド独自のデジタルインフラである「インディア・スタック」にあります。14億人の国民全員が付与された生体認証付き身分証(アドハー)と銀行口座が直結しているため、スマートフォン一つで、かつ「原則無料」での即時送金を可能にしました。一つのQRコードで、あらゆる決済アプリを横断して利用できる圧倒的な相互運用性は、従来の銀行振込やクレジットカードといった既存の金融システムを根底から覆そうとしています。
対照的に、日本は「〇〇Pay」といった民間のキャッシュレス決済が乱立し、規格の分断や加盟店手数料の負担、さらには既存の銀行システムの高コスト構造という課題を抱えたままです。インドが「デジタルID+公共決済網」という国家戦略で世界標準を握ろうとする中、日本は利便性とコストの両面で後塵を拝しており、まさに「デジタル敗戦」とも言える状況に直面しています。
—この記事は2025年2月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。






