
高市首相の「冒頭解散」と野党再編の行方――高支持率を背景にした勝負手。「中道改革連合」は対抗軸となり得るか
高市早苗首相が通常国会の冒頭解散を決断しました。高い内閣支持率を維持しているタイミングで勝負に出ることで、政権基盤を盤石にし、積極財政や安全保障政策を推進する狙いがあるのでしょう。
これに対し、立憲民主党と公明党が「中道改革連合」という新党(あるいは統一会派的な枠組み)を結成して対抗しようとしています。かつて自民党と連立を組んでいた公明党が、野党第一党と手を組むという構図は、日本の政治における「中道」のあり方が問われていることを示しています。しかし、単なる数合わせの「野合」と見なされれば、国民の支持は得られません。真に日本が必要とする改革のビジョンを提示できるかが、選挙戦の焦点となるでしょう。
トランプ大統領の「グリーンランド買収」構想――不動産王の発想か、地政学的な必然か。欧州への関税圧力という「取引」の手法
トランプ大統領が再びグリーンランドの購入に意欲を見せ、反対する欧州諸国に対して関税をちらつかせています。一見すると突拍子もない「不動産王」の個人的な野心のように見えますが、その背後にはレアアースなどの地下資源や、北極圏における安全保障上の戦略的価値(中国やロシアへの牽制)という冷徹な計算があります。 「国を会社のように経営する」トランプ大統領にとって、領土もまた取引可能な資産であり、同盟国との関係も「ディール(取引)」の材料に過ぎません。日本もこうしたトランプ流の外交手法に振り回されることなく、冷静に国益を見極めて対処する必要があります。
EV市場の覇権交代:BYDがテスラを抜き世界首位へ――中国勢の圧倒的なコスト競争力。欧米勢の「脱EV」論と市場の現実
2025年のEV販売台数で、中国のBYDがついに米テスラを抜き、世界首位に立ちました。テスラが成長の踊り場を迎える一方で、BYDは低コストと高い技術力を武器にシェアを拡大し続けています。 欧米ではEV推進の見直し論も出ていますが、中国市場という巨大な実験場で磨かれた中国企業の競争力は本物です。日本メーカーも「ハイブリッドが好調だ」と安堵している場合ではありません。バッテリー技術やソフトウェア統合において、中国勢が世界のスタンダードを握りつつある現状を直視し、次世代車戦略を根本から練り直す必要があります。
「フィジカルAI」の到来とロボット産業の爆発的成長――現代自やLGも参入する11兆円市場。日本のお家芸は守れるか
CESなどの展示会では、AIを搭載したヒューマノイドロボット(フィジカルAI)が大きな注目を集めています。韓国の現代自動車やLG電子などが相次いで参入を発表し、2034年には11兆円規模の市場になると予測されています。 かつてロボット大国と呼ばれた日本ですが、産業用ロボットの強みにあぐらをかいている間に、AIとハードウェアを融合させた新たなサービスロボットの分野で遅れをとる懸念があります。単なる「自動化機械」ではなく、AIによる自律的な判断能力を持ったロボットが社会インフラとなる時代に向け、技術開発と実装のスピードを上げなければなりません。
ベトナム経済の躍進と「脱中国」サプライチェーン――タイを抜くGDP成長。グーグルやアップルが選ぶ「チャイナ・プラス・ワン」の筆頭
ベトナムのGDPがタイを上回る勢いで成長しています。その原動力となっているのが、米中対立を背景としたグローバル企業の「脱中国」シフトです。グーグルやアップルがスマートフォンの開発・生産拠点をベトナムに移すなど、世界の工場としての地位を着実に固めつつあります。 若く豊富な労働力と、政府による積極的な外資誘致策が奏功しています。日本企業にとっても、ベトナムはもはや単なる「安価な生産拠点」ではなく、有望な消費市場かつ戦略的なパートナーとして再定義すべき時期に来ています。
アルゼンチン・ミレイ政権の「劇薬」改革の現状――インフレ抑制の代償としての国民の疲弊。ポピュリズムのツケを払う痛み
アルゼンチンのミレイ大統領が進める急進的な財政再建策は、インフレ率の大幅な低下という一定の成果を上げました。しかし、その副作用として失業率が上昇し、国民生活は疲弊しています。 これは、長年にわたるバラマキ政策(ペロン主義)のツケを払うための、避けられない痛みとも言えます。「劇薬」を用いなければ治せないほど、国の財政病巣は深かったということです。この改革が持続可能な成長につながるのか、それとも国民の不満が爆発して揺り戻しが起きるのか。ポピュリズム政治の末路と再生のプロセスとして、世界が注目すべき事例です。
JTBの長期ビジョンと観光産業の未来――国内市場の縮小を見据えた「グローバル事業」への転換
JTBが発表した10カ年の長期ビジョンでは、海外市場の開拓に重点を置く姿勢が鮮明になりました。人口減少で国内旅行市場が縮小均衡に向かう中、生き残りをかけてグローバル企業へと脱皮しようとする試みです。
しかし、世界の旅行業界は、ExpediaやBooking.comなどのOTA(オンライントラベルエージェンシー)が支配する激戦区です。リアルな店舗網や日本人ならではのきめ細かなサービスという従来の強みが、デジタル化されたグローバル市場でどこまで通用するか。単なる「日本の旅行会社」から、世界で戦える「トラベル・プラットフォーマー」へと進化できるかが問われています。
—この記事は2025年1月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。






