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KON1102「初の女性首相へ/トランプ氏「ウクライナ全土奪還」発言/プーチン氏の牽制/ガザ停戦案と人質解放同意/国連一般討論演説/米政府機関の一部閉鎖/台湾×米アンドゥリル」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1102「初の女性首相へ/トランプ氏「ウクライナ全土奪還」発言/プーチン氏の牽制/ガザ停戦案と人質解放同意/国連一般討論演説/米政府機関の一部閉鎖/台湾×米アンドゥリル」

KON1102「初の女性首相へ/トランプ氏「ウクライナ全土奪還」発言/プーチン氏の牽制/ガザ停戦案と人質解放同意/国連一般討論演説/米政府機関の一部閉鎖/台湾×米アンドゥリル」

2025.10.09
2025年
KON1102「初の女性首相へ/トランプ氏「ウクライナ全土奪還」発言/プーチン氏の牽制/ガザ停戦案と人質解放同意/国連一般討論演説/米政府機関の一部閉鎖/台湾×米アンドゥリル」

初の女性首相へ—高市早苗氏  マーケットは「継続」を織り込むが、外交・財政は現実解が問われる

自民党総裁選で高市早苗氏が選出され、臨時国会での首相指名が見込まれます。市場は、当面の財政拡張と防衛力強化の継続観測を好感し、株高・円安が進みました。内閣人事は経験重視の布陣が報じられており、短期的には政権運営の安定を狙う構図です。課題は三点に整理できます。第一に、賃上げ・物価・金利の整合を取り、家計の実質所得を押し上げる「成長と分配の同時実現」。第二に、米中・韓国との関係で抑止と対話のバランスを保ち、供給網・データ・先端技術の安全保障を運用レベルで具体化すること。第三に、債務膨張下での政策優先順位の明確化です。イメージ先行の「右傾化」議論に陥らず、物価・実質賃金・投資額・労働参加率などのKPIで成果を検証する現実路線が求められます。

トランプ氏「ウクライナ全土奪還」発言立場変更の真意と、戦況・国際政治の現実性

トランプ氏は「ウクライナは全土を元の形で取り戻せる」と投稿し、従来の「領土放棄を含む和平」論から転じました。もっとも、領土回復は相手国の意思、戦力バランス、同盟国の継戦支援、産業動員の実力が整って初めて現実味を帯びます。相手が拒否する局面での一方的宣言は、期待と現実の乖離を広げ、交渉余地や抑止の信頼性をむしろ損ないかねません。重要なのは、時期・戦線・資源配分の具体設計です。私見では、防空・後方支援の持続性を確保し、限定的な戦域目標の達成を積み上げてから交渉に入る段階戦略が現実解と考えます。

プーチン氏の牽制—トマホーク供与論  長射程兵器がもたらす「エスカレーション管理」の難題

米国の巡航ミサイル供与検討に対し、プーチン氏は「質的に新たな段階」と牽制しました。長射程・高精度兵器は、攻撃と報復の境界を曖昧にし、誤算や過剰反応のリスクを高めます。他方、受領側の指揮統制・標的選別・交戦規則が未成熟であれば抑止が逆機能化します。射程が示唆するのは戦場の拡張(前線→敵中枢のロジ・司令・産業)であり、誤射・過剰破壊の政治コストも跳ね上がります。ゆえに、①使用原則(禁止目標の明確化)、②第三国関与の閾値管理、③ホットライン常設など、事故・誤認を抑える制度設計が不可欠です。供与の是非より、その運用ガバナンスの有無が和平への近道となります。

ガザ停戦案と人質解放同意20項目の合意は「実装計画」と「監視体制」で評価が決まる

米国提示の停戦・戦後統治計画にイスラエルが合意し、ハマス側も人質全員解放に同意したと伝えられています。評価の焦点は、書面ではなく実装力です。①停戦監視(第三者監視団の権限、違反時の即時通報ルート)、②人道回廊と資材搬入(検査の迅速化と透明性)、③暫定統治の治安権限(武装解除・違反時の制裁手順)、④仲介国(例:カタール)の役割明確化――がそろって初めて持続性が生まれます。期待先行に流されず、達成状況を指標で公開し、逸脱時の是正プロトコルをあらかじめ合意することが不可欠です。

国連一般討論演説—米中の対照:多国間主義の信頼回復には「整合的な行動」が要る

トランプ氏は国連で同機関の機能不全や気候変動政策を強く批判し、韓国のパレスチナ承認にも反対を示しました。一方、中国側は「真の多国間主義」を掲げました。国際社会が注視するのは、演説内容と国内外政策の整合性です。停戦案の提示など相反するシグナルが重なると、同盟国・市場・国際機関はいずれの基準で判断すべきか迷います。秩序提供者を自任するなら、①同盟・経済・気候を束ねたロードマップ、②合意の履行率を示す運用、③国内政治の変動に耐える外交継続性――が欠かせません。

米政府機関の一部閉鎖予算政治の「摩擦コスト」が経済統計と景況感を蝕む

与野党対立で暫定予算が成立せず、一部政府機関が閉鎖となりました。多数の職員が自宅待機となり、重要統計の公表が遅延します。金融政策は「データ依存」を前提とするため、統計の空白は市場の変動を増幅し、企業の投資判断や研究助成・許認可の停滞にも波及します。教訓は明確です。①強制予算ルール(自動継続条項)の導入、②基幹統計の独立財源化による「止めない仕組み」、③期初での計画的採決の徹底。ガバナンスの摩擦を減らさない限り、景況感の不確実性は常態化します。

台湾×米アンドゥリル—共同開発ミサイル 低コスト量産とネットワーク化で「拒否的抑止」を高める

台湾は米企業と共同開発した巡航ミサイルを初公開しました。ミサイル同士が通信し、目標を共有するネットワーク化は、一斉飽和攻撃やダミー投入による撹乱を可能にします。狙いは、相手の侵攻コストを段違いに引き上げる「拒否的抑止」の確立です。無人機群との連携を前提に、射程・誘導・電子戦耐性・補給の総合最適を図ることが要諦となります。島嶼側の遠距離打撃能力は、交渉力と被侵攻時の生存性を同時に高める有効策です。

家計金融資産は過去最高 「ため込み」から「回す」へ—資金循環のボトルネックを崩せるか

日銀の資金循環統計(2025年4–6月期速報)では、家計の金融資産が2239兆円と過去最高を更新しました。投信・株式の残高増に加え、新NISAの定着が資金流入を後押ししています。一方で現預金比率の高さは、消費・投資の波及を弱める構造的な制約です。打開には、賃上げの持続性確保、実質金利の正常化、将来不安を和らげる社会保障の見通し提示、そして家計の金融リテラシー強化が必要です。単発の給付や補助よりも、安心と期待を醸成する制度設計が「回る経済」への近道だと考えます。

—この記事は2025年9月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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