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KON1099「アフガニスタン地震/アルマーニ逝去/自民党総裁交代局面/スタートアップ優遇税制の再設計/ドラッグストアのF&D化/外資の不動産流入と富裕層移動」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1099「アフガニスタン地震/アルマーニ逝去/自民党総裁交代局面/スタートアップ優遇税制の再設計/ドラッグストアのF&D化/外資の不動産流入と富裕層移動」

KON1099「アフガニスタン地震/アルマーニ逝去/自民党総裁交代局面/スタートアップ優遇税制の再設計/ドラッグストアのF&D化/外資の不動産流入と富裕層移動」

2025.09.11
2025年
KON1099「アフガニスタン地震/アルマーニ逝去/自民党総裁交代局面/スタートアップ優遇税制の再設計/ドラッグストアのF&D化/外資の不動産流入と富裕層移動」

    アフガニスタン地震と「閉じた統治」の代償―国際支援を生かすための統治能力が問われます

    アフガニスタン東部で発生したM6.0の地震は、クナール州を中心に家屋の大規模倒壊と甚大な死傷者をもたらしました。被災地は山深く、道路・通信の脆弱性が救援を遅らせています。タリバン暫定政権は国際社会に支援を要請しましたが、平時の閉鎖的な統治姿勢が、非常時の受援体制の欠落として跳ね返っているのが実態です。救助犬や重機の展開は「時間との戦い」です。今回を機に、国際機関との常時連携、物資・人員の受け入れプロトコル、地方行政の権限移譲を含む制度的な受援インフラを整えるべきです。自然災害は政治体制を選びませんが、被害規模は統治能力に比例します。封鎖よりも協働へ舵を切れるかが、復旧・復興のスピードを左右します。

    アルマーニ逝去巨匠が遺した「抑制の美学」と事業継承の論点

    ジョルジオ・アルマーニ氏の訃報は、モード史の一章の終わりを告げます。氏は80年代の「パワースーツ」で世界のビジネススタイルを刷新し、香水や化粧品へと水平展開して、ブランドの多角化モデルを確立しました。最大の功績は、装飾過多ではなく「余白」を価値化した点です。他方、創業者主導ブランドの永続性は、創作哲学の継承と資本・ガバナンス設計の両輪が鍵となります。デザイン・コードの体系化、アーカイブ運用、後継クリエイションの評価指標、直営とホールセールの最適ミックスなど、運用面の精緻化が求められます。「抑制の美学」を企業の意思決定にも埋め込めるかが、ポスト創業者期の真価を決めます。

    自民党総裁交代局面「若返り」だけでは解けない政策遂行能力のギャップ

    連敗の後始末としての前倒し総裁選論、そして交代機運。政局は流動化していますが、本質はリーダーの年齢ではなく、物価高・安全保障・成長投資を同時に回す遂行能力です。右派・中道路線の対立構図より、優先度と実行順序を設計できる「プロジェクト型政治」が必要です。若手待望論は理解できますが、危機対応は詩的レトリックではなく、工程管理と合意形成の技芸で決まります。支持率の揺り戻しに安住せず、選挙分析で判明した若年層の離反(賃金・物価・将来不安)へ政策を直撃させること。党内の権力ゲームを縮減し、国家課題を「締切とKPI」で管理する政権運営が、真の若返りです。

    スタートアップ優遇税制の再設計「出資比率」よりも産業成果で測る評価軸を

    未公開株式取得の税優遇を、過半取得から50%以下にも広げる案が浮上しています。大企業の資本・販路・オペ力をスタートアップへ橋渡しする発想は妥当です。ただし「出資比率=貢献度」ではありません。実務ではPoCの採用、共同特許、海外展開の同伴、量産支援など、価値創造は多様です。優遇の適用判断を、資本構成のみでなく「事業協創の実績KPI(売上寄与・知財・雇用・輸出)」に紐づけるべきです。さらにCVCの損金算入・減損ルールの透明化、官民ファンドとの重複投資のガイドライン整備、M&A後のPMI支援までパッケージ化すれば、資本はリスクを取りやすくなります。「税制→資金」だけでなく、「制度→成果」へ舵を切る時です。

    ドラッグストアのF&D化「毎日行く理由」を創る業態は地方の生活インフラへ

    クスリのアオキ等が食品・生鮮を厚くし来店頻度を稼ぎ、粗利はヘルス&ビューティで確保するモデルが浸透しています。大型駐車場×ロードサイドの立地は時短需要に合致し、コンビニとの差別化は「生鮮と医薬の同居」にあります。消費者はワンストップ性を評価し、郊外ではミニスーパー機能が日常を支えます。一方で、卵など目玉商品の恒常値下げ競争は、地域の小規模食料小売を圧迫し得ます。政策的には、医薬適正販売・栄養相談・在宅ケア連携など「地域ヘルスハブ」としての役割を評価しつつ、過度な値引き依存を避ける粗利設計とサプライ網の健全化が重要です。業態進化は、生活インフラとしての責務と表裏一体です。

    外資の不動産流入と富裕層移動「割安日本」の終わりに備える価格と都市戦略

    海外投資家による国内不動産取得が過去最高水準に達し、東京の一等地には100億円級が並びます。背景は収益性の相対高さ、通貨要因、安全・食・自由の総合魅力度です。香港の高額物件との相対比較で「日本は安い」という認識が資金を呼び込みますが、やがて相対割安は解消します。自治体・デベロッパーは、富裕層流入を消費・雇用・寄付へ接続する都市戦略を急ぐべきです。学校・医療・文化の受け皿、国際金融・ファミリーオフィス機能の整備、短期売買の投機抑制と長期居住・投資の優遇の仕分けが肝要です。「資金が来た」段階から「人と事業が根付く」段階へ。価格上昇の果実を都市の厚みへ変換できるかが勝負です。

    AI半導体の勝者と期待の罠NVIDIA独走と「相関で買われる銘柄」を見極める

    NVIDIAは四半期で売上・利益ともに大幅増、株価は時価総額首位級の座を固めました。需要の核はデータセンター向けAI計算。対照的に、ブロードコムの好決算・高時価も注目されますが、収益の質と成長持続性はNVIDIAとは構造が異なります。マーケットは「AI連想」で相関的に買いますが、GPU供給力、ソフトウェアスタック、エコシステムの粘着性が真の参入障壁です。投資家目線では、①供給制約の解消 pace、②中国向けの規制・代替動向、③推論比率の上昇によるミックス変化、④キャッシュフロー配分(設備・R&D・還元)のバランスを注視すべきです。「AIなら何でも上がる」は卒業段階に入り、銘柄ごとのファンダに戻る局面です。

    ガバナンス二題:トップの倫理と会計の透明性信用は一瞬で毀損し、回復は長期戦です

    著名企業のトップに関する不祥事と、名門メーカーの不適切会計疑義。共通項は「説明責任の遅延」と「手続きの軽視」が市場の不信を増幅させることです。個人の倫理リスクはコーポレート・リスクへ直結し、会計の歪みは企業価値の基礎を侵食します。処方箋は明快です。①独立社外の権限強化と内部通報の実効性、②危機時の24〜48時間での一次説明と証拠保全、③第三者委の範囲・手法・開示の標準化、④トップ人事のプランB常設、⑤再発防止策のKPI化。ガバナンスは「理念」ではなく「運用技術」です。市場は厳しくも公平で、迅速・誠実・具体的な行動を取る企業を必ず評価します。信用は最大の無形資産であり、守り切る設計が競争力になります。

    —この記事は2025年9月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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