
火山列島・日本の静かなる脅威―連動する噴火と地殻変動に注意せよ―
日本列島における火山活動が活発化しています。鹿児島県の諏訪之瀬島では爆発的噴火が連続して発生し、気象庁は噴火警戒レベル2を継続中です。周辺の喜界ヶ島や岸良部島でも地殻変動や地震が頻発しており、桜島や新燃岳も活発な状態にあります。これらは点在する火山の単独活動ではなく、地下でつながった構造線の動きに起因する「連動性」が懸念されます。過去には東京都管轄の三宅島や大島でも全島避難を伴う大規模噴火が発生しており、人口の少ない地域でも同様のリスクは無視できません。豊島村は一部住民が戻ってきているものの、依然として予断を許さない状況です。日本と沖縄の境界付近に位置するこの地域は、プレートの潜り込みによる不安定な地盤構造の上にあり、注意深く監視を続ける必要があります。自然災害への備えと冷静な判断が求められる局面です。
異常気象の真実と限界―50度を超える灼熱が迫る世界の現実―
トルコで観測された50.5度という史上最高気温は、単なる記録更新ではなく、地球規模の異常気象が深刻化している証です。サハラ砂漠からの熱風や高気圧の停滞が要因とされ、ギリシャやスペイン、ポルトガルでも40度超の高温が相次ぎ、森林火災や干ばつリスクが高まっています。特に観光地ではアクロポリスを正午前に閉館するなど、経済と安全の両立に苦慮しています。日本も例外ではなく、40度近い体感温度の中で、労働環境や学校運営の見直しが求められる時代に突入しています。問題は、単なる「暑さ」ではなく、これが長期化・常態化することで社会システム全体に深刻な影響を与える点です。道路上の体感温度は50度を超え、バイク利用者にとってはまさにサウナ状態。異常気象に対して、「今だけの異常」ではなく、恒常的なリスクとして制度や生活様式を見直す時が来ています。
政治は「論理」より「空気」―SNS時代の選挙と有権者の選好―
参院選で参政党が大きく議席を伸ばした背景には、SNSによる情報拡散力と「わかりやすさ」の演出があります。若年層や無党派層が「政策」よりも「空気」や「ノリ」に反応して投票行動に移る現象は、もはや日本に限ったものではありません。アメリカのトランプ大統領が象徴するように、スマホひとつで国を動かせる時代に入りつつあります。日本ではかつて田中真紀子氏や小泉進次郎氏が政策論を語らずとも支持を集めた事例が示すとおり、政策重視の政治は有権者の関心を得にくいのが現実です。この構造は、情報発信の巧拙と政治的成果を容易に結びつけてしまう危うさを含んでいます。つまり、政策そのものよりも「誰が、どのように語るか」が重要視されているのです。国民に真剣な政策議論を求める前に、政治家やメディアはこの国民心理を理解し、現実的なコミュニケーション戦略を構築する必要があります。
維新の連立戦略と橋下構想の延命策―副首都構想を巡る政局の駆け引き―
日本維新の会が掲げる「副首都構想」をめぐり、自民・公明との連立政権入りを視野に入れる発言が横山副代表からなされましたが、これは創設者である橋下徹氏の意向が色濃く反映されています。橋下氏は、自らが果たせなかった大阪副首都化の夢を、政権入りという形で実現させたいと考えており、維新の存在感を再び高める戦略とも取れます。現代表の吉村氏は連立入りを否定していますが、政局の流動化が進めば状況は一変する可能性があります。特に衆議院での首班指名が必要となった場合、自民党は国民民主党や維新との協力を模索せざるを得なくなるでしょう。副首都構想をテコに、政権の一翼を担おうとする維新の動きは、単なる政策実現ではなく、存在意義を問われる党の「生存戦略」でもあります。今後の国会運営において、連立の有無が政局の鍵を握る場面が増えることは間違いありません。
外国人受け入れを巡る現実と理想―知事会の提言が突きつけた「地方の声」―
全国知事会が外国人労働者の受け入れ拡大を求める提言をまとめました。これは、人口減少と地方の人材不足という喫緊の課題に直面する自治体の切実な声です。参院選では一部の政党が外国人規制を強調し、排外的な論調が目立ちましたが、知事会は真逆の立場を打ち出しました。これは、地方創生を現場で支える首長たちが、現実を踏まえた建設的なビジョンを示した好例です。グローバル人材の活用は、多様性の促進のみならず、地域経済の活性化にもつながります。欧州では極右政党の台頭により、移民排斥の動きが強まりつつありますが、日本においては「持続可能な地域づくり」の文脈で外国人の受け入れが進められるべきです。知事会の主張は、排外主義に傾きかねない国政への冷静なカウンターであり、国全体の移民政策においても再考を促す重要なシグナルと言えるでしょう。
トランプ関税交渉の「裏」―80兆円の代償と日本外交の限界―
トランプ政権が主導した関税交渉において、日本は「25%の関税回避」と引き換えに、約80兆円もの対米投資を約束したと報じられています。表向きは「国益を守った」合意とされていますが、実態は一方的な譲歩に等しい内容です。特に問題なのは、その投資利益の9割が米国側に帰属し、日本は1割しか受け取れないという不平等な構造にあります。農産物、特に米の輸入枠についても、アメリカの割当が75%拡大されることで、タイや豪州など他国との貿易関係にも悪影響が生じかねません。ボーイングの発注やトマホークの購入といった防衛分野の約束も、納期は10年以上先であり、実効性に乏しい内容です。さらに、日本の説明不足が国民の不信感を招いている点も看過できません。外交は「数字より構造を見抜けるか」が問われます。今回の合意は、対米関係の中で日本がどこまで主権を持ちうるかを突きつけた象徴的な事例と言えるでしょう。
—この記事は2025年7月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。






