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KON1093「参政党の台頭/伊東市長・学歴詐称問題/原発使用済み燃料/美浜原発/AI広告/NVIDIA時価総額4兆ドル突破」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1093「参政党の台頭/伊東市長・学歴詐称問題/原発使用済み燃料/美浜原発/AI広告/NVIDIA時価総額4兆ドル突破」

KON1093「参政党の台頭/伊東市長・学歴詐称問題/原発使用済み燃料/美浜原発/AI広告/NVIDIA時価総額4兆ドル突破」

2025.07.24
2025年
KON1093「参政党の台頭/伊東市長・学歴詐称問題/原発使用済み燃料/美浜原発/AI広告/NVIDIA時価総額4兆ドル突破」

参政党の台頭と自民党の“控え勢力”戦略:過半数割れでも政権を維持する自民党の高等戦術か?

今回の参議院選挙では、参政党が「自民党の隠れ勢力」として機能していたという見方ができます。私の見立てでは、参政党は“安倍政権のさらに右”という位置づけで、外国人労働者の受け入れなど敏感な争点について、有権者の不満を吸収していたように思われます。こうした政党は、ドイツのAfDやフランスのルペン氏率いる国民連合、イギリスのリフォームUKなどと同様、“とんでもないことを言う”こと自体が存在意義となっているのです。10議席程度を確保すれば、自民党が過半数を割っても連立を通じて政権を維持できる構造が成り立ちます。これは細川内閣のような非自民連立政権を回避するための、高度に計算された戦術といえるでしょう。

伊東市長・学歴詐称問題の構造:有印私文書偽造と刑事責任の重み

静岡県伊東市の田久保市長が、学歴詐称疑惑により辞職し、再び市長選に立候補する考えを示しました。この問題は倫理上の問題だけでなく、重大な刑事責任にも関わる可能性があります。市長は東洋大学を除籍されていたにもかかわらず、卒業証書を偽造していたとされており、公職選挙法第235条違反に加え、刑法の有印私文書偽造および同行使に該当する恐れがあります。この罪は懲役3ヶ月以上5年以下の重罪であり、執行猶予が認められない場合もあります。本人が卒業証書を「見せた」と述べながらも、公的に提出できない理由は、偽造が明るみに出るのを恐れているからだと私は推察します。議会による百条委員会の設置により、今後の調査で事実が明らかになれば、司法の判断に委ねられるでしょう。市長選への再出馬は、政治的正当性を再獲得する狙いでしょうが、極めてリスクの高い判断と言わざるを得ません。

中間貯蔵に踏み切る青森県の選択:原発使用済み燃料をめぐる“限定的合意”の意味

東京電力が青森県むつ市の中間貯蔵施設に、福島第一原発5・6号機の使用済み燃料を搬入する計画を提示しました。宮下知事は「不安解消にはつながった」と述べ、事実上の了承を示したと受け取れます。青森県には再処理施設やガラス固化処理設備があり、日本の原子力サイクルにおける重要な位置を占めています。しかし、同県はあくまでも“中間貯蔵”に限定し、“永久貯蔵”は明確に拒否しています。私はこの合意を、日本の原子力政策における“先送り”の典型と見ています。本来であれば、最終処分場の確保と時期についての明確な計画がなければ、青森に過度な負担を強いる構図になりかねません。電力会社と国は、今後責任を地理的に分散させる構想を持ち、全国的な議論と合意形成を進めるべきだと考えます。

美浜原発に見る次世代型原発の可能性:軽水炉リプレイスが日本原子力政策の転換点になるか

関西電力が、福井県美浜原発の敷地内にて次世代型原発の建設を視野に地質調査を開始しました。現在稼働中の3号機が2026年に運転開始から50年を迎えることを受けた措置です。日本では311以前に原子力発電が全体電力の32%を占めていたのに対し、現在は9%前後にとどまっています。私は今回の動きを、日本の原子力政策が“再稼働”から“再建設”へと移行する兆しと見ています。世界ではフランスが原発比率65%、スロバキアやウクライナも高水準を維持しており、日本だけが取り残された状態にあります。美浜で想定されている革新軽水炉やSMR(小型モジュール炉)は、安全性が高く設置の自由度も高いため、今後のエネルギー戦略の鍵となり得ます。私はこのプロジェクトが他の原発リプレイスの試金石になると期待しています。

ベクトル社のAI広告が示す新時代:98%のコスト削減を実現するAIタレントの可能性

PR企業ベクトルが、AIタレントを活用した広告動画制作の代行サービスを開始しました。中国テンセントの技術を活用した動画生成ツールにより、従来の実在タレントを使った場合と比べて、時間とコストを最大98%削減できるとしています。私はこのニュースを、広告業界の“デジタル・トランスフォーメーション”の象徴と捉えています。ベクトルはPR TIMESなども展開し、アジアNo.1、世界でも6位にランクインするグローバルPR企業です。広告は長年「人の手」が中心でしたが、今後はAIが戦略・表現・制作までカバーする時代に入ります。私が注目するのは、同社のように先駆けてAIを導入し、費用対効果を高める企業が市場でどこまで競争優位を築けるかです。広告業界は今、抜本的な変革期を迎えているといえるでしょう。

 NVIDIA時価総額4兆ドル突破の衝撃:世界最大の時価総額を誇る半導体一社の現実

半導体大手NVIDIAの時価総額が4兆ドル(約590兆円)を超え世界最大となり、2位のマイクロソフトを加えると2社だけで、日本の東証全体の時価総額を上回る水準となりました。私はこの現象を、AI技術の波に乗った企業がいかに世界経済の構造を塗り替えているかを示す強烈な事例と見ています。NVIDIAはGPU(画像処理用半導体)の分野で圧倒的なシェアを持ち、ゲーム用途からAI・自動運転へと活用の幅を拡大してきました。製造は台湾のTSMCが担っており、設計と生産の最強タッグが出来上がっています。同社の高い利益率は、既にAppleやMicrosoftと並ぶレベルにあり、2社の時価総額合計は東証全体を上回るという現実を突きつけています。私はこの事例から、日本がどのように「追う側」から「独自戦略を持つプレイヤー」へと進化できるかが問われていると強く感じます。

米中ハイテク摩擦とNVIDIAの輸出再開:「金と英語」に弱いトランプと半導体の外交力学

NVIDIAが中国向けに設計したAI半導体「H20」の輸出を再開する方針を明らかにしました。背景には、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOがアメリカ政府と交渉し、輸出規制の緩和を勝ち取った事実があります。私の見るところ、この件は“交渉力”と“現実的な経済判断”が政治決定を覆した好例です。ファン氏は「我々が出さなければ、ファーウェイが自力で開発する」と説得し、アメリカの競争力維持のために自社の存在が必要だと強調しました。これによりトランプ陣営も輸出再開を容認せざるを得なかったのです。日本の政治家も、こうしたグローバル企業の交渉力や現場感覚から学ぶべきだと私は思います。「国益を守る」という姿勢だけでなく、実利を得るための柔軟な思考が、これからの経済安全保障において不可欠になるでしょう。

—この記事は2025年7月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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