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新・教育論「答えなき時代の教育のあり方とは」vol.4

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新・教育論「答えなき時代の教育のあり方とは」vol.4

2025.03.04
2025年
新・教育論「答えなき時代の教育のあり方とは」vol.4

世界各国の教育改革からの学び

北欧諸国に見る柔軟性

世界各国の教育改革は、時代の変化に柔軟に対応できるシステムを重視しています。北欧諸国では、教育方針を3か月ごとに見直す仕組みを整え、生徒が常に最新の知識やスキルを学べるようにしています。新しいテクノロジーや学習ツールが登場した際には素早くカリキュラムを修正し、教育現場の停滞を防ぐのが特徴です。

一方、日本の教育方針は10年単位で改訂され、中央集権型の管理体制ゆえに意思決定が複雑化しがちです。そのため、新しい教育手法やコンテンツの導入が遅れやすく、北欧諸国のような短い改訂サイクルを取り入れるには制度改革が必要になります。

ドイツの「デュアルシステム」と実地訓練

職業教育では、ドイツの「デュアルシステム」が注目されています。学校での基礎教育と企業での実地訓練を組み合わせることで、若者が座学と実務の両面でスキルを身につけられる仕組みです。この制度によって身につくのは、技術的な知識だけでなく、働くうえで必要な責任感やコミュニケーション能力などのソフトスキルでもあります。日本でもインターンシップをはじめとした企業実習が取り入れられつつありますが、まだ制度として充分に確立されていないのが現状です。

イスラエルや台湾では、地政学的な緊張感や経済発展を背景に、幼少期から英語やプログラミングを重視し、起業マインドを高める教育が行われています。日本ではこうした環境を完全に再現するのは難しいかもしれませんが、教育に危機感や問題意識を持たせる施策は参考にする価値があるでしょう。たとえば、地域の課題や産業構造を踏まえたプロジェクト学習を導入することで、生徒が現実の問題解決に挑む機会を増やすことが考えられます。

アメリカの多様性と移民政策

アメリカが高い競争力を保っている背景には、多様性と移民受け入れによる優秀な人材の集積があります。シリコンバレーやハリウッドの成功例は、この人材の多様性と国としての受け入れ体制に支えられています。一方、日本の外国人受け入れは労働力確保が主眼になりがちで、グローバルリーダーや専門人材を招き入れる制度が十分とはいえません。国内の人材だけでは世界と競争するのが難しくなっている時代だからこそ、留学生や高度人材を惹きつける施策や海外留学への経済支援が欠かせないのです。

このように、他国の事例に共通するのは、教育の柔軟性や実用性、そして創造性を重んじている点です。日本が21世紀型の教育モデルに移行するためには、中央集権型の管理体制から脱却し、地域や民間セクターの力を活用する仕組みを整える必要があります。

—この記事は、11月に開催された向研会での講演『新・教育論』の内容を一部抜粋し、編集したものです。講演内容を全編視聴されたい方は、以下のリンクよりご視聴いただけます。

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