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KON1071「三菱ケミカルグループ/FICTの買収と成長戦略/生成AI開発/東急プラザ銀座/日本の農産物輸出」

TOP大前研一ニュースの視点blogKON1071「三菱ケミカルグループ/FICTの買収と成長戦略/生成AI開発/東急プラザ銀座/日本の農産物輸出」

KON1071「三菱ケミカルグループ/FICTの買収と成長戦略/生成AI開発/東急プラザ銀座/日本の農産物輸出」

2025.02.21
2025年
KON1071「三菱ケミカルグループ/FICTの買収と成長戦略/生成AI開発/東急プラザ銀座/日本の農産物輸出」

三菱ケミカルグループの医薬品事業の今後

田辺三菱製薬の買収と新薬開発の課題

2025年2月7日、アメリカのプライベートエクイティファンド、ベインキャピタルは三菱ケミカルグループ傘下の田辺三菱製薬を約5100億円で買収すると発表しました。田辺三菱製薬は現在、収益の柱であるALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬「ラジカヴァ(一般名=エダラボン」に支えられていますが、2029年には米国での希少疾病用医薬品排他的承認の期間が終了、また、特許が切れた後、将来的には収益性が大きく影響を受ける可能性があります。このため、田辺三菱製薬は今後、新薬開発への資金投入や、既存の海外薬剤の日本市場への導入を進めることで成長を促進する方針を打ち出しています。

しかし、医薬品業界における新薬開発は非常に高リスクであり、特に未開拓の治療領域への投資や新薬の市場投入には多くの不確実性が伴います。新薬の研究・開発には長い時間と莫大なコストがかかり、その成果を市場に届けるまでには多くの障壁が存在します。さらに、ベインキャピタルが買収した後、どのような戦略を取るかも大きな課題となります。ベインキャピタルは多くの資本を持つ一方で、製薬業界のリスクをどのように乗り越えるか、そしてどれだけの期間で利益を上げられるかが今後の重要なポイントです。

FICTの買収と成長戦略

MBKパートナーズによる富士通子会社の買収

2025年2月6日、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズは、富士通の子会社であるFICT(富士通インテグレーテッド・サーキット・テクノロジーズ)を買収すると発表しました。FICTは、スーパーコンピュータ「富嶽」や、宇宙開発向けの基盤などを手掛ける技術力が高い企業で、MBKはその高い技術力と国際ネットワークを活用し、さらに成長を目指す考えです。MBKパートナーズは日本市場においても積極的に投資しており、過去には武田薬品工業の一部事業(現アリナミン製薬や田崎真珠などを買収し、企業価値を高めています。

FICTの買収は、MBKにとっては新たな成長分野を手に入れる意味を持ちます。特に、FICTが得意とするスーパーコンピュータや通信機器向けの基盤技術は、今後の5G通信や自動運転車のシステムにおいて重要な役割を果たすと期待されており、その技術を活用した事業展開が見込まれています。

日本における生成AIの発展

ソフトバンクとオープンAIの共同出資

2025年2月3日、ソフトバンクグループとアメリカのオープンAIは、生成AI技術の日本市場への展開を加速するため、共同出資会社を設立すると発表しました。この新しい企業は、日本国内の企業向けにカスタマイズされたAIモデルを提供することを目的としており、オープンAIのアルトマンCEOは、日本を皮切りにローカルモデルを世界中に展開する意向を示しています。

生成AIは、特に企業の人事やマーケティングのデータを活用して効率化を図るため、企業にとって重要なツールとなりつつあります。しかし、ソフトバンクは法人営業部隊を持っていないため、この分野での成功には適切なパートナーとの連携が不可欠です。オープンAIとソフトバンクの提携が、どれだけ企業ニーズに対応できるかが、今後の展開を大きく左右することになるでしょう。

中国の生成AI開発の進展

中国ディープシークと競争の激化

中国では、AI技術の開発競争が激化しており、ディープシークをはじめとするAIスタートアップが、低コストで高性能な生成AIモデルを開発し、世界のエンジニアから注目を集めています。中国政府は、大学を中心にAI人材を育成しており、アリババなどのIT大手がスタートアップに出資して技術革新を支援しています。今後、中国がAI技術で世界を牽引する可能性が高まり、アメリカの優位性が揺らぐ可能性もあります。

特に、ディープシークはオープンAIの技術を基にした低コストモデルを開発しており、そのアプローチが業界に新たな風を吹き込んでいます。中国のAIスタートアップが今後さらに成長することで、世界的な競争が激化し、AI技術の発展が加速することが予想されます。

東急プラザ銀座の売却と今後の展開

ガウキャピタルパートナーズによる買収

2025年2月7日、香港の投資会社ガウキャピタルパートナーズは、東京銀座の商業施設東急プラザ銀座を買収することを発表しました。東急プラザ銀座は2016年に開業し、東急グループの銀座進出を象徴する施設として注目を集めましたが、新型コロナウイルスの影響でテナント撤退が相次ぎ、業績は低迷していました。ガウキャピタルはこの施設をインバウンド需要の回復を見越して再生を目指すとしていますが、今後の展開が注目されます。

ガウキャピタルがどのように東急プラザ銀座を再生し、集客を回復させるのかは、インバウンド需要を活かした戦略にかかっています。特に、訪日外国人観光客の増加が期待される中で、銀座の商業施設には再び活気が戻る可能性があります。

日本の農産物輸出の好調

農林水産物・食品の輸出額が過去最高

2024年、農林水産省は日本の農産物および食品の輸出額が前年比3.7%増加し、過去最高の1兆5073億円を記録したと発表しました。特に日本酒、和牛、日本茶などが人気を集め、アメリカや欧州向けの需要が増加しました。この結果、輸出額は12年連続で過去最高を更新し、初めて1兆5000億円を超えました。

中国向けの輸出は減少しましたが、アメリカや欧州などの市場での需要が高まり、今後も輸出は増加すると見込まれています。特に、日本産の高品質な農産物や加工食品は、インバウンド需要の増加とともにさらに市場を拡大することが期待されています。

—この記事は2025年2月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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