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KON1050「米大麻規制/米共和党/2024年米大統領選/抗老化研究」

2024.09.20
2024年
KON1050「米大麻規制/米共和党/2024年米大統領選/抗老化研究」

▼米大麻規制 米フロリダ州の大麻使用解禁に賛成
大麻解禁は、国家危機のトリガーとなる恐れ

米トランプ前大統領は9日、自身が住むフロリダ州で娯楽目的の大麻使用解禁を支持すると表明しました。米大統領選挙と同時に行われる住民投票で賛成票を投じる考えを示したもので、若者やリベラル層にアピールする狙いと見られますが、支持基盤の保守層は解禁に反発しています。

トランプ氏は「個人使用目的の少量の大麻のために成人が不必要に逮捕、投獄されるのを終わらせるときだ」とSNSに投稿しました。彼は今、多くの訴訟を抱えているため、この投稿には、不必要に逮捕されるのを終わらせたいという自身の思いが込められているのかもしれません。しかし大麻の解禁は既にいくつかの州で実施されていますが、必ずしもよい結果をもたらしているとは言えず、解禁された州で何が起こっているのかをしっかりと検証する必要があるでしょう。さらに大麻だけではなく、合成麻薬の問題も深刻です。サンフランシスコ市では合成麻薬のまん延により荒廃が進んでいます。これは、アヘン戦争で敗北した中国の清が滅びたときのように、アメリカも麻薬、特に合成麻薬によって深刻な影響を受けており、国家の危機に直面していると言えるかもしれません。

▼米共和党 米大統領の支持候補表明せず
党内の対立問題は、選挙戦に大きく影響するか

米共和党のジョージ・W.ブッシュ元大統領は7日、自身とローラ夫人が11月の大統領選で、どの候補を支持するか表明しない考えを示しました。これについてブッシュ氏の広報担当者は、同氏は大統領選を巡る駆け引きからは何年も前に引退していると説明しましたが、この前日にはブッシュ氏の下で副大統領を務めたディック・チェイニー氏が民主党のハリス副大統領に投票すると表明していました。

ブッシュ氏は、トランプ氏による議会襲撃を「民主主義を破壊する許しがたい行為」として厳しく批判しており、共和党の候補であるトランプ氏には投票しない姿勢を示しています。またチェイニー氏はワイオミング州選出の下院議員、歴代共和党政権の高官を務め、非常に尊敬されていた人物ですが、ハリス氏に投票する意向を表明し、より明確に民主党支持を打ち出しました。このように、ブッシュ氏とチェイニー氏は具体的な支持表明を避けるか否かの違いはありますが、トランプ氏には投票しないという点では一致しています。一方で、ハリス副大統領は歴代の民主党元大統領たちがそろって応援に駆けつけるなど、強力な支持を得ています。

この状況は、共和党がトランプ氏とそれ以前のリーダーたちとの間で大きな分裂を抱えていることを示しています。ブッシュ氏やチェイニー氏といったトランプ氏以前の共和党の指導者たちは、「民主主義の象徴としての大統領」を自認し、民主主義を破壊するような行為を許容できないとの立場を明確にしています。共和党内での対立は、結果として党全体の分裂を招き、大統領選の結果にも影響を与えるかもしれません。

▼2024年米大統領選 ハリス氏、トランプ氏が初のテレビ討論会
支持者の発言が候補者の明暗を分ける

米民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領が10日、初のテレビ討論会に臨みました。これはアメリカABCテレビが主催し、相手候補の発言中にはマイクの音を消すルールで、およそ1時間半行われたもので、経済や人工妊娠中絶、不法移民、外交などについて双方が主張を展開、討論会後CNNテレビが行った世論調査では、ハリス氏がよかったとの回答が63%で、トランプ氏の37%を上回りました。

討論会でトランプ氏は従来の主張を繰り返しましたが、準備不足が目立ちました。彼は相手を攻撃することが得意で、過去の発言ではウクライナ戦争について「私が大統領なら1日で終わらせる」などと主張していたものの、今回の討論会では具体的な方法を何も示しませんでした。また北朝鮮の金正恩氏との会談についても、握手さえすれば問題は解決するといった発言を過去に繰り返していましたが、こちらについても成果が出ているとは言えません。彼は自分を天才と考え、非現実的な幻想を抱いているのでしょう。一方、ハリス氏はトランプ氏の挑発には乗らず、自分の政策を具体的に述べることに努めました。この違いにより、ハリス氏が3分の2、トランプ氏が3分の1という大差がつく結果となりました。

そして討論会でのトランプ氏の「オハイオ州では移民がペットのイヌやネコを食べる」という発言も、事態を悪化させました。事実無根であるにもかかわらずSNSでも拡散されていたこのうわさは、オハイオ州スプリングフィールドやハイチ政府からの反発を招き、トランプ氏にとっては大きなマイナスとなりました。

さらに、副大統領候補のバンス氏が過去に「ハリス氏やオカシオコルテス氏などは子どもを産んでおらずネコ好きだ」と発言していた動画が再燃し、非難が殺到しました。しかしハリス氏は現在の夫の前の結婚からの2人の子どもを育てており、バンス氏の発言は事実と異なるものです。バンス氏の発言を受け、以前から民主党支持を表明していたテイラー・スウィフト氏は自身のインスタグラムで、ネコを抱えた写真と共に「私はネコ好きで子どもはいない」と投稿し、ハリス氏への支持を表明しました。さらに投票を呼び掛ける投稿を行いました。またトランプ応援団のイーロン・マスク氏も「私は君に子どもを与え、人生をかけて君のネコを守るよ」と発言し、大きな批判を受けました。マスク氏の発言は不適切であり、社会的に大きな波紋を呼びました。彼の発言は男同士のプライベートな飲み会での冗談としては許容されるかもしれませんが、それを自社のX(旧Twitter)に投稿するなど、本当にばかなことをしたものです。

今回のテレビ討論とその後の影響はトランプ陣営にとって大きな痛手となり、トランプ氏自身も精神的に大きな打撃を受けていると思います。トランプ氏やその支持者の発言は低レベルであったことは明らかであり、選挙戦への影響が長引くことは確実です。

▼抗老化研究 「不老長寿」は永遠の夢か?
進む研究、不老長寿が現実に?

NHKニュースウェブは3日、「『不老長寿』は永遠の夢か? 健康に生きる時間をどう延ばす?」と題する記事を掲載しました。これは老化を遅らせ寿命を延ばす、抗老化分野の市場規模は2031年までに世界で6兆円を超える見通しだと紹介、健康寿命を延ばすことが高齢化の課題解決につながるとの見方から、世界の著名投資家や財団などが大規模投資を行っており、さまざまな抗老化研究が進んでいるということです。

この記事は普段触れる機会の少ない抗老化研究の最先端に迫ったNHKの番組をまとめたもので、番組の内容は素晴らしく、非常に感銘を受けました。ハダカデバネズミの老化について研究を行う熊本大学の三浦恭子教授や、老化を遅らせる物質「NMN」研究の第一人者のワシントン大学・今井眞一郎卓越教授などが登場し、120130歳まで寿命を延ばせる可能性などについて、確かな研究に基づいて解説していました。この番組を見逃した方は、ぜひ下記サイトをご覧ください。私にとっても大変有益なプログラムでした。

NHK NEWS WEB:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240903/k10014569311000.html

—この記事は2024年9月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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