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KON1048「北陸新幹線/国内観光施設/日本国債/国内経済政策」

2024.09.06
2024年
KON1048「北陸新幹線/国内観光施設/日本国債/国内経済政策」

▼北陸新幹線 敦賀ー新大阪間の延伸費用
建設費試算がまとめられるも、いまだルート決まらず

北陸新幹線の敦賀‐新大阪間の延伸を巡り、国土交通省は先月7日、建設費が最大53000億円に増加するとの試算をまとめました。資材価格や人件費の上昇などが要因ですが、一方、整備新幹線を着工する目安として、国交省が定める費用対効果1以上について、今回は数値を精査できていないとして提示を見送りました。

まず私が言えるのは、費用対効果については1以上の数値にはならないということです。そして今後のルートについて解説しますと、まず現在の北陸新幹線は敦賀まで開通しており、国土交通省による「想定される北陸新幹線ルートイメージ図」によると、敦賀からの延伸ルートについてはいくつかの選択肢があります。常識的に考えれば、敦賀から米原を経由して大阪へ向かうルートが最短距離ですが、このルートはJR東海の既存路線と重なるため、JR東海が反対しています。

そのため、別の案として敦賀から小浜を経由して京都へ向かうルートが検討されています。これは「鯖街道ルート」と呼ばれ、昔はこのルートでサバを24時間かけて小浜から京都まで運んでいたそうです。また、舞鶴経由で京都へ向かうルートも検討されています。現時点では小浜経由で京都へ向かうルートが有力視されており、そして京都から大阪に向かうには、東海道新幹線のルートが使えないため、北側に迂回するか、関西文化学術研究都市線を経由するルートのどちらかになる予定です。

ちなみに興味深かったのは、先日の東海道新幹線の運転見合わせの際、北陸ルートが代替経路として機能したことです。つながなくてもいいのです、敦賀まで来て乗り換えるだけでも十分に役立つことが証明されました。しかし、いまだにルートが決まってないのであれば、われわれが生きてる間は実現しないでしょうね。建設費が何億円でも何兆円でも、変わりはありません。

▼国内観光施設 訪日客「二重価格」は差別?
優遇するのは日本人全てではなく、地元の人だけでよい

時事通信は先月22日、「訪日客『二重価格』は差別?」と題する記事を掲載しました。これは訪日外国人客が過去最高ペースで増加する中、観光施設などで訪日客の入場料を住民より高く設定する動きが広がっていると紹介。観光資源の維持管理費などを確保するため、海外の観光施設では二重価格が導入されているものの、専門家からは差別や偏見につながるとの指摘が上がったということです。

海外では、アンコールワットやベルサイユ宮殿など、二重価格を導入している観光施設があります。例えばニューヨークのメトロポリタン美術館では観光客の入場料は30ドルですが、ニューヨーク州在住者は日頃より支援をしているため、任意の金額となっています。しかし日本人全員を無料にして、訪日客だけから高額の入場料を徴収するという考え方には問題があります。例えば姫路城の場合は、地元の人々がボランティアとして城内の清掃などに携わっているため、姫路市民を無料にするのはあり得るでしょう。靴の裏で地面をこすって汚すのは、日本人も訪日客も同じです。せっかく日本にやってきた外国人を差別し、50ドルなどといった極端に高い料金を設定するなど、とんでもないことです。私は専門家の意見に完全に賛成で、姫路市は何を考えているのかと、私は既に記事にもしています。

▼日本国債 野放図な財政いつまで
利上げ上昇が日銀のインプロージョンを起こし、日本の危機に

日経新聞は先月30日、「野放図な財政いつまで 国債、迫る急落の崖」と題する記事を掲載しました。これは日銀が利上げに踏み切ったことで、国債の利払い費を気にせず財政運営できる時代は終わったと指摘。銀行や生損保は、これまでのように国債を買い支えられる環境ではなくなったほか、国際の売買に占める外国人の比率は5割超に高まっており、2022年にイギリスで大型減税を発表して市場を混乱させ、1カ月半で退陣したトラス政権の悪夢は、日本のリーダーにとっても人ごとではないとしています。

保有者別の日本国債保有比率のグラフによると、日銀が約半分を保有しており、これまでは銀行から日銀が買い進め、安定して消化してきました。一方、国庫短期証券では海外投資家の保有比率が高く、急激な売却があった場合には、市場が不安定になるリスクがあります。また保有者別の日本国債保有比率によると、家計・その他は2.2%しかなく、個人が保有していないように見えます。しかし個人が預貯金を行うと銀行などの金融機関が、そして生命保険などに入ると保険会社がそれぞれ国債を購入するため、間接的に保有しているとも言えます。

私が以前から主張しているように、食い過ぎた日銀がひっくり返る、おなかの中が爆発する「インプロ―ジョン」が起こる可能性があります。今後は日銀の中で利払いが増えるため、インプロ―ジョンが起こる可能性が高くなります。これはかなり危険な状態であり、利息上昇時には日本が危機的な状況に陥ると考えておくべきでしょう。

▼国内経済政策 岸田首相「一定の成果出始め」
次の総裁選は、選挙戦の顔を選ぶためのもの

政府は先月30日、資産運用立国に関する有識者会合を開きました。その中で岸田首相は、貯蓄から投資への転換や経済成長と資産形成の好循環という観点から一定の成果が出始めているとの見方を示しましたが、政権発足時の日経平均株価28000円が711日には史上最高値の42000円まで上昇しており、出席者からも岸田政権の金融経済政策を評価する声が上がったということです。

残念ながら、岸田政権が評価されているのは本当です。岸田氏は自民党内での資金問題に対処していないと言われていますが、派閥解消は彼が最初に動きましたし、金融経済政策もしっかりと行っています。岸田氏が総裁選を辞退したのは自民党内の力学の問題であり、サポートをしてくれる人がいなかったからで、実は彼よりもうまく政治を動かせる人がいるとは思えません。

今、総裁選に向けて11名もの候補者が名乗りを上げていますが、選挙対策という観点では小泉進次郎氏に決まったも同然です。選挙戦では石破氏や上川氏、茂木氏などが応援に駆けつけるより、小泉氏が応援するほうが人気や知名度の点で大いに効果が見込めます。しかし小泉氏はポエムを言うだけで、首相としての実務能力に疑問符が付くため、選挙後しばらくすれば加藤氏や上川氏、林氏といった実務派が台頭する可能性が指摘されています。

現状では、小泉氏以外の多くの候補者が推薦人集めに苦戦しています。上川氏、そして外務大臣や経産大臣を務めた茂木氏のような実力者でさえ、20人の推薦人集めに苦労しています。自民党の中では今、誰が選挙の顔に最もふさわしいかを見極めているのです。最初に手を挙げた小林氏は右過ぎ、統一教会との関係を取り沙汰され、高市氏は発表さえできず、常連の野田聖子氏は派閥がないため20人を集めるのが難しい状況です。結果的に小泉進次郎氏が総裁選を勝ち抜け、そして首相となった後にポエムをいくつか発表、皆に酷評されて引きずり下ろされるというシナリオが、既にできあがっていると私は思います。

—この記事は2024年9月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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