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TOP大前研一ニュースの視点blogKON1043「太陽光パネル/東北大学/オリエンタルランド/三陽商会/パソナグループ」

KON1043「太陽光パネル/東北大学/オリエンタルランド/三陽商会/パソナグループ」

2024.07.26
2024年
KON1043「太陽光パネル/東北大学/オリエンタルランド/三陽商会/パソナグループ」

▼太陽光パネル 2030年以降のパネル排気量 年間最大80万トン
東京都の設置義務化の本当の狙いは何か

太陽光パネルの排気量が2030年以降増加し、環境省の推計では年間最大80万トンとなる見通しが明らかになりました。東日本大震災以降、急速に普及したパネルが、2035年前後に一斉に耐用年数を迎えるためで、政府はパネルのリサイクル義務化に向け、早ければ25年の通常国会にも関連法案を提出する考えです。

耐用年数を迎える太陽光パネルは、このままに放置すると廃棄物が環境汚染の原因になると指摘されています。放置された太陽光パネルは雨水がかかることで、PFASのような未解明の化学物質が発生する恐れもあり、最大の環境汚染になる可能性があります。CO2を発生させないなど、再生可能エネルギーとして環境に優しいと言われる太陽光パネルですが、その廃棄問題は深刻です。同様の問題は電気自動車(EV)でも発生しており、使用済みバッテリーの処理が課題となっています。寿命が20年、25年、30年として、それぞれ使用済み太陽光パネルの排出量推計を行ったグラフによると、30年の寿命のものでは2044年ぐらいから排出量が急激に上がることが予想されています。

小池百合子氏が2期目を迎えたときに太陽光パネル設置義務化を打ち出しましたが、私はその提案に強く抗議しました。巨額予算に見合うメリットはない、低価格のパネルは多くが中国製で、新疆ウイグル自治区で強制労働によって製造されている、東京は日照時間などを鑑みても太陽光発電に最適な地域ではなく、直下型地震が起きた際には破損や火災リスクも懸念される、耐用年数が30年程度とされるパネルの廃棄についてはどう考えているのかなど、多くの指摘を行いました。さらに小池氏の施策では補助金が施主や購入者に対してではなく、住宅メーカーに与えられ、設置義務化で新築住宅の値上がりが予想されます。

▼東北大学 未公開株、不動産に投資
農林中金の二の舞になるな、GPIFを目指せ

東北大学が2024年度中に未公開株や不動産などへの投資を開始することが分かりました。これまでの運用は債券7割、株式3割の配分でしたが、三井住友DSアセットマネジメントに委託運用し、未公開株や不動産、インフラ資産などに振り向ける方針で、政府の10兆円ファンドによる助成に加え、自らの運用力も向上させ、国際競争力を高める考えです。

この投資戦略が成功することを願っていますが、農林中金の失敗例のようにならないことを祈ります。今のところは1000億ほどの運用益を上げているようですが、100兆円規模の運用益を出しているGPIFを参考にしながら進めてもいいのではないかと思います。

▼オリエンタルランド クルーズ事業への参入発表
日本の若者向けクルーズは、寄港地よりも船内の充実を

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは9日、クルーズ事業に参入すると発表しました。これは日本船籍で最大級となる、およそ14万トンのクルーズ船を建造し、2028年度に就航する方針で、テーマパークの顧客基盤を生かし、就航から数年後に年間乗客数40万人、売上高1000億円を目指すということです。

オリエンタルランドはお金持ちの会社ですが、今の東京ディズニーリゾートには拡張余力が限られているため、新たな事業としてクルーズに参入します。ディズニーキャラクターを活用して若者の集客を図るため、短期間のクルーズが中心となるでしょう。日本の場合には東北周遊や伊勢志摩方面に向かうのは時間的に難しいことから、北陸の一部を巡るようなクルーズになるのではと思います。私のお薦めは八丈島や小笠原ですが、若い人が硫黄島や西之島などに興奮するとは思えません。石原慎太郎氏であれば、日本の領土が何キロ増えたなどと生き生きと語り出すでしょうが(笑) 若い人が船の中で楽しみ、出会いの場となることが、クルーズの目的となるでしょう。近距離クルーズを考えるとアメリカやヨーロッパには魅力的な場所が多くありますが、日本では海外に向かうとしても釜山辺りが限界で、釜山港に寄って、北陸のどこかで下船、そして北陸新幹線を利用するというイメージでしょうか。

国内港湾へのクルーズ船の寄港回数のグラフによると、コロナ禍では激減しましたが、外国の船も今かなり戻ってきました。オリエンタルランドとしては、物言う株主が京成グループに対して株を売れと迫っていますので、ディズニーの発展余力として生きたお金を使わなければならず、そのためクルーズ事業への成功を目指すということでしょう。

▼三陽商会 連結売上高613億円
バーバリーは三陽商会の力を見誤った

三陽商会の20242月期連結決算は、売上高が前期比5.3%増加の613億円、純利益は同29%増加の27億円と、3年連続で黒字となったことが分かりました。百貨店の売り上げが伸びたほか、販管費の抑制などコスト削減が寄与したものですが、英バーバリーのブランド力に頼ってきたこれまでの体質を改善したことなども要因だということです。

これはアパレル業界の喜怒哀楽の一つです。三陽商会はバーバリーを日本で展開するときに、ブルーレーベルという自社でデザインを行ったブランドを発売しました。ブルーレーベルは中国などでも非常に人気を集め、私が経営していたビーナスフォートでも中国の方によく売れました。しかしそれがイギリス本国では面白くなかったようで、本国のデザインを採用するよう要求するも三陽商会はそれを断り、その結果、バーバリーの契約は打ち切られました。その後、三陽商会は赤字に転落し、地獄の苦しみを味わいましたが、売り上げは減ってはいるものの、やっと今、黒字に転じています。現在の三陽商会は、向研会メンバーでもある八木通商が輸入するMACKINTOSHのセカンドラインのライセンス展開をしており、その他にもPaul Stuartなど多くのブランドを地道に展開しています。

一方、イギリスのバーバリーは配当ができないほど株価が落ち込んでいます。バーバリーはイギリス発祥のブランドですが、アジア太平洋地域での人気が高く、しかし三陽商会が手を引いてからは大きく売り上げを落としています。海外ブランドは、日本に任せてうまくいったものは、自社でもうまくやれると常に思っているようです。ブルーレーベルは、アジア人の体形、体格、趣味に合わせて行った三陽商会だからこそのデザインなのです。ざまあ見ろということでしょう。三陽商会は「バーバリー」というブランド名は使えませんが、「ブルーレーベル」は使用できます。ブルーレーベルを復活させることも可能ですが、あえてMACKINTOSHなどに置き換え、再成長を図っています。

▼パソナグループ 連結純利益13億円見通し
本質的な問題を払拭するには、人材派遣業界の変化に対応を

パソナグループは12日、20255月期の連結純利益が前期比99%減少の13億円となる見通しを明らかにしました。福利厚生サービスのベネフィット・ワンを5月に売却した反動が出るものですが、ベネワンの売却益1120億円のうち、6割から7割を健康関連の新規事業やデジタル投資に充てる方針で、ベネワンなき後の成長戦略作りが急務の現状です。

人材紹介、人材派遣の事業は今、大きく変わろうとしています。隙間時間だけ、正規雇用やアルバイトなど、さまざまな会社から、いろんな形態の仕事が提供され、リクルートグループのインディードは転職にいいと評判です。パソナは総合人材サービス企業として人材サービスをけん引してきましたが、現在、新たな戦略を模索しています。

パソナのセグメント別業績のグラフによると、人材派遣やBPOでは売上高は何とかなっていますが、営業損益では苦戦しています。人材派遣には3年以上となれば直接雇用を派遣先に依頼せねばならず、パソナにとっては痛い法律です。そしてアウトソーシングの売り上げは落ち込み、それ以外についても厳しい状況となりました。またパソナは淡路島で地方創生に挑戦しましたが、新聞などは随分はやし立てたものの、赤字を出しています。政府から補助金を得て行った事業でしたがうまくいかず、パソナは本質的な問題をかなり抱え込みました。

—この記事は2024年7月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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