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TOP大前研一ニュースの視点blogKON1042「米トランプ前大統領/東京都知事選/公職選挙法/フランス総選挙」

KON1042「米トランプ前大統領/東京都知事選/公職選挙法/フランス総選挙」

2024.07.19
2024年
KON1042「米トランプ前大統領/東京都知事選/公職選挙法/フランス総選挙」

▼米トランプ前大統領 演説中のトランプ氏に銃撃
今回の銃撃は、トランプ氏の銃規制への考えを変えるきっかけとなるか

米ペンシルベニア州バトラーで13日、トランプ前大統領が演説中に銃撃されました。発砲音の直後、複数の警察官が壇上でトランプ氏に覆いかぶさって保護し、命に別条はないということですが、トランプ氏はその後、自身のSNSで右耳の上部を貫通する銃弾を受けた、銃声が聞こえ、すぐに銃弾が皮膚を裂くのを感じたと説明。大統領警護隊によると、容疑者は会場の外の高い位置から数発発砲し、警護官に制圧され死亡したということです。

犯人は20歳の男で、約150メートル離れた場所からトランプ氏の演説中に銃撃を行い、聴衆の1人が死亡、2人が重傷を負いました。トランプ氏自身も耳たぶをかすめる銃弾を受けましたが、幸いにも命に別条はありませんでした。アメリカの放送局によるニュースで再現された銃弾の軌跡によると、トランプ氏の体の向きが少しでも違っていたら銃弾は頭を貫通していたかもしれず、非常にラッキーな状況だったと言えます。トランプ氏は銃撃を受けた後、フォーレターワードを犯人に向かって3度も叫び、犯人に対する激しい怒りを示しました。共和党内ではこれをトランプ氏の強さと捉える向きもありますが、私は銃規制の必要性に目を向けるべきだと考えます。

オバマ前大統領をはじめとする民主党は長い間、銃規制の強化を主張してきましたが、トランプ氏はライフル協会からの支援を受けているため銃の規制に反対してきました。この事件は、銃の自由な所持がいかに危険であるかを痛感させるものであり、トランプ氏自身にとってはその危険性を認識するきっかけとなったはずです。アメリカでは過去にもレーガン氏、エドワード・ケネディ氏、ジョン・F・ケネディ氏など多くの政治家が銃撃されました。アメリカの政治家は、常に命がけです。会場への入場時にはX線での検査を行っていたようですが、今回の狙撃は会場外の別ビルの屋根からであったことから、150メートルの距離から狙撃できる腕のいいスナイパーの存在を考えると、会場の設定に問題があったのは明らかです。

この事件を契機に、アメリカは銃規制に向けた真剣な議論を進めるべきです。今回の銃撃事件を反省材料とし、銃の規制強化を進めることが、今後の安全を確保するために必要だと考えます。犯人の精神状態を非難することに終始するのではなく、銃規制強化へと進むことを私は強く期待します。

▼東京都知事選 小池百合子氏が3選
政策論争がない選挙が当たり前になってはいけない

東京都知事選の投開票が7日行われ、現職の小池百合子氏が3選を果たしました。ちょうどこの番組の放送中に投開票が行われ、番組が終わる頃には早くも小池氏の当選確実が報じられました。小池氏圧勝となりましたが、何が争点だったのかが不明瞭で、少し退屈な選挙だったと感じました。

かつて「2位じゃ駄目ですか」と発言した蓮舫氏は、その言葉どおりに3位で結構じゃないですかという結果となりました(笑) 2位になった石丸氏はネット選挙の手法を活用して注目を集めましたが、その後の討論で性格に問題があると批判され、石丸氏は旋風とバッシングの両方を受けることとなりました。三菱UFJ在籍時には為替トレーダーとして知識も豊富で人に教える能力に優れていたことから、元上司として石丸氏を見ていた人にとっては、そんなに悪い人ではなかったという情報もあります。

私も1995年に都知事選に出馬した経験がありますが、当時は『いじわるばあさん』を演じたことで知られる青島幸男氏が圧勝しました。私はそのときの選挙戦でプロジェクションテレビを搭載したトラックで自身の政策を訴えましたが、集まった人々は話を聞いてくれるものの、マスコミも都民も私の政策には関心を示しませんでした。青島氏は選挙期間中、スポーツ紙の記者を自宅に招き、ビールとおつまみを提供しながら「ちゃぶ台をひっくり返す」などのサービストークだけで支持を集めました。つまり真面目に考えらえた政策ではなく、勢いが勝利の鍵だったのです。過去に選ばれた都知事には湯河原で温泉に浸るだけの人や、石原慎太郎氏は週に2回、2時間程度しか都庁に姿を見せないなど、知名度だけのろくでもない人物がいたものです。

文藝春秋社から出版した『大前研一敗戦記』で、このときのいきさつを書いていますが、私自身は政策論争が評価されない現実を目の当たりにし、すがすがしい気持ちでさよならできたことは逆によかったのかもしれません。マッキンゼー時代から日本を良くしたい、私にはそれができるという思いから知事選に挑戦しましたが、結果的には未練なく足を洗うことができたのは良い経験でした。もう30年も前の話です。

▼公職選挙法 現行の公選法は時代遅れ
ネットを活用した選挙へと切り替える時期か

日経新聞は11日、「選挙の抜け穴、現行の公選法は時代遅れ」と題する記事を掲載しました。これは東京都知事選で問題視されたポスター掲示について、公設の掲示場以外で貼ることを禁止しているのは、民主主義の先進国では日本だけとする識者の指摘を紹介。また人口が少ないにもかかわらず、県知事選には政見放送がある一方、横浜市のような大都市の市長選には政見放送がないのは問題とし、選挙管理委員会のホームページで候補者の動画を掲載するなど、代替手段の議論が必要との指摘も上がったということです。

総選挙時のベニヤ板の看板製作だけでも相当な費用がかかっています。このような無駄はやめて、ネットを活用した選挙活動に切り替えるべきです。政見放送もNHKや民放で放送されていますが、これも廃止してネットで興味のある候補者の動画を見るという形式に変更すればよいのです。テレビに出られるんだから300万円の供託金は安いと考える人が出るのは、ばかなことをすればするほどYouTubeで稼ぐことができるからで、公選法の見直しは必ず必要です。岸田首相は今、総裁選が迫っているので、この問題に取り組む時間はなさそうですが、次の選挙までには解決をしてほしいと思います。

▼フランス総選挙 左派連合が最大勢力に
面白みのない選挙戦の次は、組閣の問題へ

フランス国民議会選挙の決選投票が7日行われ、左派連合・新人民戦線が182議席を獲得し、最大勢力となりました。これにマクロン大統領率いる与党連合が続き、当初第1党になると見られていたル・ペン氏率いる国民連合は第3勢力にとどまったもので、左派と中道連合が多くの選挙区で候補者を一本化したことなどが功を奏したものですが、どの勢力も政権を担うのに必要な過半数に届かず、政策面での隔たりも大きいことから、連立交渉は難航しています。

パリ・オリンピックまでに間に合わせることは難しいため、現首相は辞表を提出してはいるものの、オリンピック終了までは留任させる方向で進んでいます。現在の右派、左派、中道の勢力の方向性には、はっきりとした違いがあります。右派はル・ペン氏の父親の時代から続く極右の強いイメージを変えるため、党首としてバルデラ氏を前面に押し出しました。バルデラ氏はAIのように人に好かれ、話し上手で長身、ハンサムな、誰もが投票したくなる人物です。初回の投票では圧勝しましたが、この成功が逆に左派と中道派の結束を強めたためか、最終的には左派が第1党となる結果となりました。スナク氏がイギリス選挙で必要のない解散総選挙を行って自滅したのと同様に、マクロン氏も危い状況です。

仏下院における党派別議席数のグラフによると、左派が大幅に議席を伸ばし、第1党となりました。マクロン氏の党は過半数を維持していましたが、大幅に減少しました。そして極右勢力は初回の投票では好調でしたが、最終的には議席を減らしました。しかし極右勢力が議席を減らしたことを残念がる人もいるようですが、三つの勢力が拮抗する状況をつくっています。そして中道派は、どの勢力と組むべきかが不明瞭な状況となっています。極左の不服従のフランス、社会党、緑の党、共産党からなる左派連合の中で、それぞれがまとまってはいないため、マクロン氏は何とかできるのではと思われる緑の党などを拾って、首相を任命する権利を利用して、首相に組閣をしろという方向で進めることが考えられます。あまり面白みのない結果に終わった今回の選挙ですが、今後はこちらの問題に関心が移っていくのではと思います。

—この記事は2024年7月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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