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TOP大前研一ニュースの視点blogKON1033「量子コンピューター/大型物流施設/国内家電市場/国内スタートアップ/ローランドDG」

KON1033「量子コンピューター/大型物流施設/国内家電市場/国内スタートアップ/ローランドDG」

2024.05.17
2024年
KON1033「量子コンピューター/大型物流施設/国内家電市場/国内スタートアップ/ローランドDG」

▼量子コンピューター 米エヌビディアと量子計算システム開発へ
開発者メンバーは話題先行、組み合わせに疑問

経済産業省所管の研究機関、産業技術総合研究所が米エヌビディアと協力し、量子計算システムを開発する見通しが明らかになりました。産総研がスーパーコンピューターと量子コンピューターをつなげた計算基盤を運用するもので、量子コンピューター単独では計算ミスが多いものの、スパコンとつなぐことでミスが解消され、複雑な計算処理にも活用できるということです。

量子コンピューターと、例えば富岳のようなスパコンとをつなぐことには極めて意味があり、大変素晴らしい研究だと思います。しかしエヌビディアはチップを作っている会社で、この分野での実績はあまりなく、今話題のメンバーというだけの産業技術総合研究所とエヌビディアという組み合わせは間違っているのではないかというのが、私の意見です。

▼大型物流施設 首都圏施設の空室率9.7%
大型物流施設の次に危険な空室率となるのはデータセンターか

首都圏の大型物流施設の空室率が20241月から3月期に9.7%となり、前年同期比1.5ポイント上昇したことが分かりました。新型コロナ禍で物流需要が増加し、新たな施設の竣工が相次いだ一方、足元では巣ごもり消費が一服し、施設の供給が物流需要を上回っていることなどが要因で、施設の供給は来年にかけて続くと見られ、空室率は当面高水準となる見通しです。

私は軽井沢を訪れるときに圏央道を通りますが、物流施設ばかりを見掛けます。私が埼玉県のアドバイザーを行っていた頃、物流センターとデータセンターが埼玉県の進むべき道だとアドバイスしたことがありますが、現在では物流センターを建て過ぎた結果、首都圏の大型物流施設の空室率は9.7%となり、かなり危ないレベルになっています。

エリアごとの空室率は、首都圏全体では8%で圏央道エリアは十数%、そして外環道エリアはまだ少ないですが、マルチテナント型の物流施設の空室率は心配な動きを見せており、今後大きな値崩れが起これば大変な事態となるでしょう。サーバーなどを置いているデータセンターについては、過剰だという話はまだ聞こえてきませんが、いずれ物流施設のような話が出てくるのではないかと私は思っています。

▼国内家電市場 家電の「白高黒低」鮮明
「白高黒低」に乗り遅れた日本は巻き返せるか

日経新聞は先月23日、「家電の『白高黒低』鮮明」と題する記事を掲載しました。これは洗濯機の価格が10年間で3割上昇した一方、テレビ価格は大型サイズで、およそ4割下落したと紹介。共働き世帯が増え、家事の負担を減らす高機能の白物家電が売れている一方、動画配信の普及でテレビを持たない世帯が増えたことで、テレビ需要が低迷していることなどが要因だということです。

かつてテレビなどのAV関連については茶物家電と呼ばれた時期もありましたが、黒物家電の部品であるパネルなどは作りやすいものであるため大幅に値崩れしやすく、そして中国が今、その値崩れの原因となっています。一方、白物家電は家庭の中では王様のような存在で、冷蔵庫や洗濯機などを製造しているのはアメリカでも老舗が多く、またスウェーデンのエレクトロラックスなどはなかなか値下げをしません。家庭では白物家電を20年以上も長く使い続ける一方、ドラム型洗濯機に乾燥機能も付けますよといった技術革新が入ってきても、二つの家電が一つにまとまるならばと値段が高くても売れてしまいます。

現在この領域はエレクトロラックスや韓国のLGの勢いが強く、日本製は失敗したと言わざるを得ません。日本国内では日本勢が中心ですが、海外では悲哀を味わっています。そもそも日本のAV機器が全盛であった時期でも白物家電の立場は弱いものでしたが、世界的にはあっという間にLGに抜かれ、そしてエレクトロラックスはこの領域を今もしっかりと守り続けています。日本でもうまく白物家電の領域に入ることができれば値崩れは少ないのでしょうが、残念ながらそれはかないませんでした。韓国ではサムスンは黒物、白物はLGです。「白高黒低」は世界的な現象であり、家庭の中を見てもそれはよく分かります。

▼国内スタートアップ 就労者数が2年間で5割増
増加数は巨大企業に及ばないが、スタートアップ企業の可能性は未知数

日経新聞がスタートアップ132社の就労者数を集計したところ、3月時点で計およそ18000人と2年間で5割増加したことが分かりました。DX需要や新型コロナ禍からの経済再開に伴う飲食、物流、観光などの求人需要に対応するビジネスが人員を増やしているもので、大手企業からの転職者も増えているということです。

しかし5割増加とはいうものの、スタートアップ企業ですので仕方がないことですが、全体で見れば小数点以下の増加です。タイミーの増加率は4倍、SmartHR91%ということですが、増加数を見るとそれぞれ844人、507人といった人数です。巨大企業のほうが従業員数の増加は大きく、そういう企業に比べれば少ないですが、スタートアップ企業が人を吸収してくれるのは喜ばしいことです。昔は起業から3年、4年といった実績のないスタートアップ企業は敬遠されていましたが、今の若い人はむしろ面白いと感じて抵抗感がありません。就職する側も変わってきたということです。

▼ローランドDG TOB価格を引き上げ
業務用プリンター狙いの同意なきTOBは失敗に終わる

業務用プリンター大手のローランドDGは先月26日、アメリカの投資ファンドと進めるMBO、経営陣による自社買収で、TOB価格を1株当たり5370円に引き上げると発表しました。ブラザー工業がローランドの同意を得ないままTOBを実施すると表明しているのを受けたもので、ローランドは価格の引き上げにより株主の応募を促す考えです。

ローランドDGがマネジメントバイヤーと経営陣がファンドを使ってMBOを進めようとしていたところに、ブラザー工業がローランドDGの業務用プリンター事業を狙って仕掛けたもので、それを阻止すべくMBO陣営がTOB価格を300円引き上げました。ブラザー工業はそれに追随せず、マネジメント側のバイアウト、非上場が可能となったということです。

 

—この記事は2024年5月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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