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シリコンバレー視察研修レポート(Day1〜3)【前編】GXとデザインが生み出す“変革の現場”

シリコンバレー視察研修レポート(Day1〜3)【前編】GXとデザインが生み出す“変革の現場”
本研修の目的
●GX・生成AI等、ホットトピックの産業・企業を横断的に視察し、スタートアップと新事業開発に関する最新の知見を得る
●現地 VC/CVC・起業家とのネットワーキングや、協業・投資の具体的なイメージを持つ

Aoba-BBT主催「2025年度 シリコンバレー視察研修」
GXと生成AIの最前線で、“新規事業を生み出す思考”を学ぶ5日間の記録

自ら学び、変化を創り出す未来へ。
GX(グリーントランスフォーメーション)と生成AI――世界が同時に直面する2つの変革軸は、いまやすべての企業に「新たな事業機会」を問いかけています。
Aoba-BBTは2025年10月、5泊7日の「シリコンバレー視察研修」を開催し、参加者が現地の最前線で“新規事業を生み出す思考”を体得する機会を提供しました。現地では、テクノロジー・資本・人材がどのように結びつき、産業変革を推し進めているのかを横断的に学びました。
本レポート前編では、GXを実装する気候テック企業、そしてデザイン資本やCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に象徴される新しい価値創造の潮流をお伝えします。

Day 1|結団式 ― “挑戦する仲間”との出会い

サンフランシスコ・ユニオンスクエア近くのホテルに集合しました。
到着後に行われた結団式では、研修責任者の宇野令一郎より、「自ら学び、変化を創り出す」ことをテーマに開会のメッセージが伝えられました。参加者は、業種も役職も異なる24名。ウェルカムディナーでは、早くも活発な議論や情報交換が始まりました。同じ志を持つ仲間たちとの出会いが、5日間の学びのスタートを力強く後押ししました。

Day 2|GXを実装する気候テックの現場

― 環境課題を“制約”ではなく“市場機会”に変える ―

視察初日は、Natel Energy/Heirloom Carbon Technologies/Japan Energy Fund/Leapの4社を訪問しました。いずれの企業にも共通していたのは、環境課題をビジネスチャンスと捉え、テクノロジーと資本を組み合わせて新たな産業をつくり出している点です。
(協力:Deloitte,Japan Energy Fund)

  • Natel Energyは、魚類保護が求められる水力発電分野で、環境規制を成長機会に変えた企業です。自社製造を持たず、設計とソフトウェア開発に特化するモデルにより、持続的な成長を実現しています。
  • Heirloom Carbon Technologiesは、石灰石を用いて大気中のCO₂を回収するDAC技術を開発しています。リーン・スタートアップの手法をハードウェア開発に応用し、小規模な試作と検証を高速で繰り返すことで、技術の精度向上とコスト低減を同時に進めています。
  • Japan Energy Fundは、日本の脱炭素投資会社として、北米の気候テック企業と日本企業をつなぐ役割を担っています。短期的なリターンよりも、10年単位の産業共創を重視する姿勢が印象的でした。
  • Leapは、分散型エネルギー資源(蓄電池やEVなど)を束ねて電力市場に接続するB2Bプラットフォームを展開しています。非競合型のエコシステム戦略により、パートナー企業と協働しながら市場を広げています。
Aoba-BBTシリコンバレー視察研修2025 Natel Energy工場見学の様子①
Aoba-BBTシリコンバレー視察研修2025 Natel Energy工場見学の様子②
Natel Energy工場見学の様子

Day 3|生成AIがもたらす新しい共創モデル

― テクノロジーと創造性が融合する、価値創造の最前線 ―

視察二日目は、Zypsy/MODE/Vertex Ventures/Saison Capital/Fujitsu Ventures/Fujitsu Research of Americaの6社を訪問しました。AIの発展が、いかに産業構造と共創のかたちを変えているかを、実地で学びました。
(協力:Deloitte,Fujitsu)

  • Zypsyは、スタートアップのブランド構築やUI/UXを手がける「デザインキャピタル」企業です。デザインを株式と交換するモデルを通じ、スタートアップとリスクと成果を共有しながら成長しています。この“クリエイティブが資本になる”という発想は、AI時代に求められる創造的思考×事業構想力の融合を体現していました。
  • MODEは、IoTと生成AIを融合し、建設・インフラなどの現場を可視化・効率化しています。AIが現場映像を解析して危険を検知し、日報を自動生成することで、熟練人材不足などの社会課題を解決しています。大手企業と連携しながら、AIが現場で「共に働く」仕組みを実装する姿は、AIによる共創型DXの代表例といえます。
  •  Vertex Venturesは、シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングス傘下のグローバルVCとして、地域特化とネットワーク投資でスタートアップを支援。大企業の資金・顧客基盤とスタートアップのスピードを掛け合わせ、“資本を通じた共創”を推進しています。
  • Saison  Capital(Saison Technology International)は、自社のデータ連携プラットフォームを基盤に、外部スタートアップをエコシステムに組み込んでいます。特に、生成AI企業Vectaraと協業することで、同社の強みであるデータソースとVectaraのRAG技術を掛け合わせ、AI導入の課題であるハルシネーション(誤情報生成)の抑制という新たな付加価値を顧客に提供しています。
    ※Saison Technology International, Inc. CEO丸山 昌宏氏(ビジネス・ブレークスルー大学院修了生)からお話を伺いました!
  • Fujitsu Venturesから、CVC(Corporate Venture Capital)としての役割と仕組みを学びました。同社は、外部のイノベーションを迅速に取り込み、自社事業の変革に結びつけることを目的に、投資・M&A・社内ベンチャー支援を一体化。投資先との間では、情報権や共同研究開発権を確保し、単なる資本関係に留まらない“戦略的共創”を推進しています。特に生成AI分野では、協業投資と先鞭投資の二本柱で、外部の先端技術を自社事業に取り込む活動を進めています。
  • Fujitsu Research of Americaは、富士通研究所で生まれた先端技術を外部スタートアップと共にビジネスとして実装するオープンイノベーション拠点です。研究成果をライセンス提供し、レベニューシェアや株式連携など柔軟なモデルで協業を展開しています。AIや量子、ネットワークなど多様な技術を市場に接続し、新しいビジネスを立ち上げる活動を進めています。

スタートアップの機動力と大企業の信頼性が交わることで、シリコンバレーでは、共創から新規事業を生み出すOSが進化し続けています。

Aoba-BBTシリコンバレー視察研修2025Vertex Ventures 志賀 元気氏のレクチャー(Fujitsu Office)
Vertex Ventures 志賀 元気氏のレクチャー(Fujitsu Office))

研修責任者

宇野 令一郎
Aoba-BBT常務執行役員
法人研修事業本部 副本部長 兼 Aoba-BBT Learning Hub 部門長
BBT Online Global Inc. 社長
慶應義塾大学経済学部 卒業、McGill大学(カナダ)MBA、熊本大学大学院 教授システム学修士号取得。 東京銀行(現三菱UFJ銀行)にて海外進出支援業務、バイアウトファイナンス業務、プロジェクトファイナンス業務、三菱UFJキャピタル業務に従事。2009年にビジネス・ブレークスルー入社。BBT大学学部事務局長、アオバジャパン・インターナショナルスクール理事、ムサシインターナショナルスクール理事長等を歴任。

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