人材育成マガジン
【MentorMe Lab】現場の声で見えた“壁”の正体 ― 新規事業プログラム実態調査2025
「MentorMe」は、新規事業の成功率を飛躍的に高める“伴走型メンタリングサービス”です。
目次
本レポートの対象者
- 新規事業プログラムの運営に携わる方
- 新規事業開発部に所属される方
- 新規事業開発を管轄する経営層の方
1.はじめに
近年、多くの企業が持続的な成長を目指し、新規事業開発に力を入れています。その中心となるのが、社内起業家精神を醸成し、革新的なアイデアを事業化するための新規事業プログラムです。
MentorMeは、企業の新規事業プログラム運営者の皆様が抱える悩みや課題を明らかにし、解決策を提示することで、企業のイノベーション創出を支援したいと考えています。
ヒアリング調査で得られたプログラム運営者が共通して抱える課題を整理し、具体的な解決策と成功事例を提供します。
2.調査概要
- 調査目的:企業の新規事業プログラム運営者が抱える悩みや課題を明らかにし、解決策を提示していきます。
- 調査対象企業:メーカー、通信会社、飲料メーカー、ソフトウェア開発会社、金融機関など計6社
- 調査方法:インタビュー形式
- 調査期間:2025年3月〜5月
3.ヒアリング調査から見えた新規事業プログラムの目的
多くの企業が「人材育成・文化醸造」を目的に、ボトムアップ型のプログラムを実施しています。
その結果として、「将来柱となるような」事業が生まれて来ることを期待している企業が多いと同時に、将来柱となるような事業を創造するために、ボトムアップ型プログラムだけを運営していて良いのか、疑問を抱えている企業もありました。

4.ヒアリング調査から見えた新規事業プログラム運営者の主な悩みと課題
本調査で明らかになった、新規事業プログラム運営者が共通して抱える主な悩みと課題は以下の通りです。
4-1. 応募者数の増加 ― 参加の火を灯す難しさ
多くの企業が、プログラムへの参加者をどうやって増やしていくのか課題を感じていました。
「火」を付ける方法
- プログラムへの応募者数を如何に増やしていくのか、を課題に上げた企業が非常に多かったです。「応募数を増やしたい」「社内起業家の卵をうまく発掘したい」「行動変容を起こす仕掛けを創りたい」「社員の火をつけたい」といった声が多く聞かれました。
- 応募を検討している「潜在層」を如何に囲い、増やしていくのか、そのコミュニティ創りに注力されている企業も見られました。
- また良いターゲット(例:研修参加者)へのアプローチ方法に課題を感じている企業もいました。
参加インセンティブの設計
- 「プログラムに参加するとどんな得があるの?」といった参加インセンティブの設計、新規事業企画への面白さに気づけていない層へのアプローチに課題を感じている企業もいました。
4-2. 優れた事業アイデアの創出 ― “小粒”にとどまらない発想へ
質の高い事業アイデアを継続的に生み出すことを、多くの企業が目指しています。「小粒なアイデアしか出ない」「短期的な視点でのアイデアが多い」といった課題に苦慮する企業が多く見られました。また中長期的な視点でのアイデア評価基準の明確化や、多様なアイデアを創出するための工夫に悩まれている声も多く聞かれました。
大きな絵を描くための方法:小粒な事業アイデアの成長(質)
- 「小粒な事業アイデアが多い」という課題を上げる企業が多く見られました。「実現性は高いが、大きな売上げは見込めなさそうなアイデアが多い」など、いかに大きな市場をねらいにいくのか、数十年後の未来から逆算したような事業計画を出してもらうにはどうしたら良いのか、悩まれていました。
- 短期的に人気な技術ではなく、中長期的に活用できる技術や商品にしたいがどうしたら良いかまだ見えていないという課題もありました。
事業アイデアのブラッシュアップ方法
- 「プログラム選抜者に対してワークショップを開催したものの、効果があまり見えなかったものも多く、プログラムを通じてどんな成長を求めるのか、またそれを計測していくのかも課題の1つ」という声もありました。
4-3. 事業化に向けた支援 ― 制度・仕組みの不足
優れた事業アイデアを創出するだけでなく、それを事業化するための仕組みや制度に悩みを持つ企業も多かったです。人事制度との連携、事業への移管方法、子会社化・既存事業での巻き取り、出向・退職、株式付与など、事業開発ルールの整備に課題を感じている企業が多く見られました。
起案者が走りやすい環境:社内制度の整理(人事面)
起案者の評価方法や、稼働時間などについて悩まれている企業が半数以上ありました。メイン業務との兼ね合いから辞退する起案者がいたり、時間を割いても自身にメリットが少ない制度設計になっているなど、応募時およびプログラム中のインセンティブや環境設計に苦慮している声が多く聞かれました。
スムーズな事業化の実現:社内制度の整理(事業化)
事業化をする際の制度設計に悩まれている企業が半数弱に上りました。スピンアウト、スピンオフ、既存事業内など、その事業化方法及び、その際の人事権や報酬設計などについて、課題を抱えている企業が多く見られました。
プログラム卒業後のさらなる成長:プログラム後の支援体制
- ゲートの後半〜事業化後の社内起業家の支援体制について、困っている、または困ることが予測される企業も一定数いました。
- 社内には該当領域のスペシャリストや経営経験者がいないため、いかに彼らをサポートしていくのかに課題感を持っています。
メンタリングの質と独立性
- 社内起業家からは、「会社にアサインされたメンターと馬が合わない」といった理由でポケットマネーで外部サービスを利用する声も聞かれました。本業との兼ね合いでただでさえ時間の少ない起案者にとって、「自身で選んだ、信頼できるメンター」とのセッションが重要です。
- また、「相談内容が会社に報告されるので、本質的な相談ができない」という声もあり、会社役員やチームメンバーに本音で相談ができないケースも存在します。レポート有無や範囲は、メンタリングの目的やフェーズに合わせて検討する価値があると考えられます。
4-4. 新規事業プログラム運営者向けエコシステム ― 孤独を支える仕組み
新規事業プログラムの運営において、自社にあったプログラムの設計が非常に重要です。その方法や経験について、学んだり、社外で相談したりできる場があればと答える企業も多かったです。
新規事業プログラム担当者が相談できる場
- 新規事業プログラムの運営方法にまつわる悩みについて、他社プログラム担当者との情報交換を希望する声は多い一方、自身でのつながりには限界があるため、そう言ったネットワークを作れる座談会などがあればぜひ参加したいと言う声が多かったです。
- ただし、一方的に情報が吸い取られるのではなく、両者学びがある場の設計が大事と言う声も聞かれました。

5.インタビューを通じた気づき
インタビューで見えてきた悩みは、簡単に解決できる課題ではないと考えています。MentorMe Labでは以下2つの課題に着目しました。
各企業、直面している悩みの共通点
フェーズによる違いはありますが、同じ道を辿っている印象をうけました。特に人材育成を考えた時に「どれだけ多くの社員に体験してもらうのか」「どう社員の心に火をつけるのか」「それをどうやって継続し、文化に浸透させていくのか」は共通の課題であると言えます。
エコシステムの不足
新規事業プログラム運営者が社外の情報を得る場合、個人的なネットワークから相談するケースが多く、企業を横断したエコシステムはまだ弱い印象をうけました。例えばスタートアップ界隈では、起業家・先輩起業家・投資家から学ぶことは多く、そのエコシステムも多く存在します。そういったエコシステムの構築は「車輪の再発明」を避けるためには、有意義だと考えています。

6.MentorMe Labの活動
今回ヒアリングした悩みは多くの企業に共通する課題であり、簡単に解決できる課題ではありません。上記で見えてきた課題に取り組むために、MentorMe Labでは以下の活動に取り組む予定です。
コミュニティの立ち上げ
知見を共有したり、ともに考える場は非常に有効な一方で、新規事業プログラム運営者を支援するエコシステムはまだ少ないことがわかりました。そこで、新規事業プログラム運営者が意見を交換し合えるコミュニティの立ち上げを目指していきます。まずは座談会形式で、本音で学び合える場を企画する予定です。
リサーチと発信
各社が共通して持つ課題について、インタビューやリサーチを行い、発信してまいります。具体的には、まず起業家や社内起業家の起業ジャーニー(特に0→1フェーズ)を調査し「心に火がついた瞬間」「行動変容が起きた瞬間」を調査していく予定です。
Aoba-BBTおよびMentorMeの活用
Aoba-BBTやMentorMeが持つアセットを活用して、各社さまの課題解決ができるソリューションを開発していきます。

7.おわりに
本レポートは、企業の新規事業プログラム運営者の皆様が直面する課題を共有し、MentorMe Lab および株式会社Aoba-BBTが提供できる支援の方向性を示すものです。
新規事業の創出やプログラム運営における課題は、画一的なフレームワークを使用するだけでは解決することはできません。それぞれの企業の状況や課題、参加者、起案者の特性に合わせて、取り組みやプログラムを柔軟に変化させていくことが、成功率向上に繋がると考えられます。MentorMe Lab および株式会社Aoba-BBTは、これまでの知見やネットワークを活かし、各企業に合わせた最適なソリューションを提供することで、新規事業開発を支援してまいります。
この情報を元に、皆様と議論を深め、より効果的なプログラム運営に貢献できれば幸いです。
また、本ヒアリングにご協力いただいた企業の皆様に、改めて感謝申し上げます。