
人材育成マガジン
不確実な時代を生き抜く「次世代経営者育成」のための思考訓練「RTOCS®」とは

経営環境が急速に変化する今、「次世代経営者育成」の重要性がかつてなく高まっています。特に、不確実性が高い今の時代においては、ビジネスの未来を創造できる人材の育成が企業の命運を分ける要素となっています。しかし、日常業務の中でこれらを体系的に鍛える機会は限られており、従来型の研修では対応しきれない現実もあります。
そこで本記事では、次世代経営者育成のための思考訓練である「RTOCS®(Real Time Online Case Study)」について解説します。
1. RTOCS®とは?—Aoba-BBT独自のケーススタディ
RTOCS®(アールトックス)は、「Real Time Online Case Study」の略称であり、当社創業者の大前研一が20年以上のコンサルティングや世界各国のトップリーダーへのアドバイザリー経験から編み出した思考法を体系化した革新的なケーススタディ手法です。
従来型のケーススタディが「過去の事例分析」に重きを置くのに対し、RTOCS®では「現在進行形の企業」における生きた課題に挑戦します。
「あなたが○○社の社長であれば、現在のビジネス環境下でどのような戦略・解決策を立案し実行するか?」
この問いに向き合うため、受講者は対象企業の事業構造だけでなく、市場動向や競合状況まで幅広く自ら調査し、根本的な課題を見極めた上で戦略を構築します。
RTOCS®では必要情報があらかじめ提供されることはなく、学習者自身が情報収集の段階から主体的に取り組む必要があります。また、毎週新たな企業課題が提示されるため、迅速な思考力と効率的な時間管理能力も同時に鍛錬されます。

2. RTOCS®の特徴と進め方
現代のビジネス環境では、過去の成功事例は急速に陳腐化します。
真に価値があるスキルは、「最新の状況に即した情報をいかに収集・分析・精査し、的確な意思決定につなげるか」にあります。
RTOCS®は日本経済における注目企業の現在進行形の課題を題材に、経営者視点での思考を徹底的に深めるプログラムです。題材となる企業は製造業、IT、スタートアップ、伝統的産業、地方自治体など多岐にわたり、受講者は自身の会社が属する業界の枠を超えて、最新のビジネス動向や異業種の戦略思考に触れる機会を得られます。
明確な答えがまだ存在しないリアルタイムの課題に対し、受講者は独自の見解を持ち寄り、建設的な対話を通じて思考を発展させていきます。この繰り返しが未来の経営力を鍛える基盤となります。
RTOCS®の実践プロセス

RTOCS®では、一連のプロセスをすべてオンラインで実施します。解説講義については動画をダウンロードして視聴することも可能なため、移動中や隙間時間の活用も可能です。時間や場所を選ばない柔軟な学習環境は、多忙な受講対象者にとって大きなメリットとなります。
①情報収集と分析
まず、経営者として的確な判断を行うために、様々な情報源から必要なデータを集めます。
インターネットだけでなく、業界誌や専門機関の論文なども活用し、対象企業の事業構造、市場環境、競合状況などを多角的に分析します。この段階で、企業の現状と直面している課題の全体像を把握します。
②課題を特定
次に、表面的な問題にとどまらず、構造的・根本的な課題を見極めます。
収集した情報を整理・分析し、表面的な問題と根本的な課題を区別します。経営者として取り組むべき核心的な課題を特定し、短期的な課題と長期的・構造的な問題を識別します。経営者には、単一部門にとどまらず、全社やグループ全体、さらには社会的な影響を含めた検討が求められます。そのため、分析や戦略立案の過程で自然と全社構造に目を向ける必要が生じます。
③解決策を立案
そのうえで、戦略的な打ち手を発散・収束させながら組み立てていきます。
特定した課題に対して、経営者として実行可能な解決策を検討します。アイデアを広く発散させた後、実現可能性や効果を考慮して絞り込み、総合的な戦略として自分の言葉でまとめ上げます。解決策の検討においては、他の受講者との議論も重要なプロセスの一部です。受講者が互いに意見交換しながら、異なる視点やアプローチで、自身の解決策を再検討・再構築する機会が生まれます。
④解説講義を受講
最後に、大前研一による解説講義で、自身の思考と比較・照合しながら振り返ります。経営コンサルタントである大前の思考プロセスと自分の思考を照らし合わせることで、経営者としての視点や判断基準、思考の組み立て方を学びます。この振り返りが、次回の課題に取り組む際の糧となります。
3. RTOCS®が育む「次世代経営者育成」に必要な実践的スキルセット
RTOCS®の育成プロセスは、次世代経営者に不可欠な以下のスキルを鍛える設計になっています。このプロセスを通じて、受講者は理論だけでなく、実際のビジネス現場で即座に活用できる実践的能力を獲得します。
①戦略的思考力 ~対象企業の事業構造を深く理解する~
対象企業の収益構造、ビジネスモデル、組織体制などを徹底的に分析することで、企業活動の全体像を把握する能力を培います。
<習得スキル:戦略的思考力>
- 各事業要素の相互関連性を理解し、システム思考を身につける
- 事業ポートフォリオの強みと弱みを評価できる分析的視点を獲得する
- 財務・組織・オペレーションを統合的に捉える経営者視点を習得する
②環境分析力と洞察力 ~最新の市場動向や競合状況を独自に調査する~
外部環境を包括的に調査・分析するプロセスで、変化の激しいビジネス環境に対応するための重要な能力を育みます。
<習得スキル:環境分析力と洞察力>
- 効率的な情報収集と情報源の信頼性を評価する判断力
- 市場のトレンドを理解し、将来的な変化を予測する力
- 競合戦略を分析し、持続的な競争優位性を特定する能力
③本質的問題発見力 ~根本的な課題を見極める~
表層に現れた課題だけではなく、その背後にある根本的な原因を特定。問題解決者としての能力を磨きます。
<習得スキル:本質的問題発見力>
- 表面的な症状と根本的原因を区別する分析力
- 短期的課題と長期的・構造的問題を識別する判断力
- 複雑で錯綜した状況から核心的要素を抽出する能力
④戦略策定力 ~実行可能な戦略を構築する~
具体的なアクションプランへと落とし込むプロセスは、戦略を現実に変える実践力を養います。
<習得スキル:戦略策定力>
- 具体的なアクションプラン作成能力
- 限られたリソースの最適配分を判断する力
- 実行過程で生じうるリスクと対策を想定する先見性
⑤ビジネスの未来を創造する力 ~構想力の醸成~
RTOCS®の総合的なプロセスを通じて、これからの経営人材に特に重要な「構想力」が育まれます。構想力とは、単なる戦略立案を超えた、ビジネスの未来像を描き出す創造的能力です。構想力は、「今」の課題解決にとどまらず、「これから」の時代において自社や産業全体をどのように位置づけ、発展させていくかという長期的な視野を持つことを可能にします。RTOCS®では、現在進行形の企業課題に即して考えることで、抽象的な未来予測ではなく、実行可能性を伴った構想力を養うことができます。
<習得スキル:ビジネスの未来を創造する力>
- 既存の枠組みにとらわれない、革新的なビジネスモデルの創出
- 社会・技術・環境の変化予測に基づいた、長期的な事業展望の形成
- 事業の社会的意義と価値を再定義する思考力
- 多様なステークホルダーを巻き込む共感的ビジョンの構築
- 不確実性を受け入れながらも明確な方向性を示すリーダーシップ
受講者は繰り返しこのRTOCS®プロセスに取り組むことで、断片的なスキルではなく、一貫した経営者としての思考法と判断力を体得します。 特に、構想力を軸とした総合的な経営力は、不確実性の高い環境下でも、将来を見据えた経営判断を行う”実践値”として結実します。
4. 「次世代経営者育成」にRTOCS®を活かす
企業が直面する経営課題に対し、柔軟かつ全社的に思考できるリーダーの存在は、今後ますます重要になります。RTOCS®は、現場感覚を持ちつつ構造的に物事を捉える力を養う設計となっており、若手からの次世代経営者育成や幹部候補研修としても導入いただきやすい内容です。
次世代経営者育成の仕組みを社内に構築することを検討している企業にとって、RTOCS®は極めて実践的な選択肢となるでしょう。
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