人材育成マガジン
未来を拓くリーダーの言葉から紐解く「構想力」
私たちは、常に変化し続ける未来の中で生きています。この不確実な時代を切り拓くために、必要不可欠なスキルが「構想力」です。「構想力」とは、現状を超えて未来を見据え、新たな価値を創造する力を指します。本記事では、各分野のトップランナーの言葉を通じて、「構想力」の重要性とそれを育む方法について考えます。
藤井聡太名人に学ぶ未来を読む力
将棋界の若き天才、藤井聡太名人は、2024年の名人戦で豊島将之九段と激闘を繰り広げました。この対局で、藤井名人は豊島九段の「構想力」に感銘を受けたと語っています。
特に話題となったのは、豊島九段が指した「9五角」から「4四角」への一連の手順です。藤井名人はこれを「未来を見据えた高度な構想だ」と評価しました。
将棋における「構想力」は、現局面の局所的な最善手を見つけるだけではなく、数十手先を見据えて全体の流れを描く力を指します。この力は、単なる読みの深さを超え、局面を戦略的に再構築し、新たな形勢を作り出す能力を含みます。駒の配置や相手の応手を予測しながら、複数の手順を組み立てる「プランニング」の側面が重要なのです。
将棋の世界では、未来を描き、それを実現する計画を立てる力が勝敗を分ける鍵となります。この「構想力」は、局面を超えた長期的な視野を持つ力として、将棋界のみならずさまざまな分野で活用できるスキルといえるでしょう。
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稲盛和夫氏に学ぶ構想力の実践アプローチ
京セラやKDDIを創業し、数々の経営哲学を残した稲盛和夫氏は、構想力についてこう語っています。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する。」
この言葉は、未来を大胆に描きつつ、計画の段階では慎重さを忘れず、最後は行動力を持って実現に向かうという構想力の本質を端的に表しています。稲盛氏の成功は、このビジョンを実現する力があったからこそ成し得たものです。
稲盛氏は、創業初期の京セラにおいて次のような実践を通じて、この原則を体現しました。
ビジョンを描く:未来への楽観的な構想
稲盛氏は京セラ創業当初、「稲盛和夫の技術を世に問う場を作る」という明確な目的を掲げました。しかし、従業員たちから将来の生活保障を求められ、創業からわずか一年で会社の理念を大きく見直しました。
新たに掲げたのは「全従業員の物心両面の幸福を追求し、人類社会の進歩発展に貢献する」という壮大な理念です。この一見達成が困難に思えるビジョンは、未来を大胆に描く稲盛氏の「楽観的な構想力」そのものです。稲盛氏は、この理念を定めたことが京セラ発展の最も大きな原動力となったと語っています。
計画する:慎重さを持った現実的な準備
一方で、稲盛氏は計画を立てる際、現実を直視し、目標を徹底的に細分化する姿勢を貫きました。例えば、年間の売上目標を部門別、さらには月単位にまで分解し、全従業員がそれぞれの役割としてその目標を共有できるように工夫しました。
「今日一日を尽くしてやれば、明日が見える。この一か月必死で生きていけば、来月が見える。それが確実なのです」と語っているように、稲盛氏は目の前の課題に全力を注ぐことで、着実な前進を実現してきました。
実行する:行動力を伴った楽観的な実践
さらに、稲盛氏が強調する「実行力」は、潜在意識にまで浸透するほどの強烈な願望を伴っていました。稲盛氏にとって、願望は必ず実現するものであり、それは宇宙の摂理でした。稲盛氏が強烈な願望を描き、誰にも負けない努力を積み重ねることで、京セラは地道な一歩一歩を基に世界的企業へと成長しました。
「偉大なことは、最初は尺取虫が尺を取るように進むもの。それを誰にも負けない努力で積み上げ、統合したときに偉大な成果へと発展するのです」との稲盛氏の言葉通り、強烈な願望が伴う「実行力」こそがビジョンを達成する鍵となったのです。
※Aoba-BBTオンライン映像講座「アタッカーズ・ビジネススクールアワー74『京セラの成功要因』講師:稲盛和夫氏」より作成しています
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建築界の革新者:安藤忠雄氏が示す構想力
建築界の巨匠、安藤忠雄氏は「構想力」の実践者として知られています。安藤氏は「何かやったら次を考える」という言葉で、自身の建築活動や社会貢献の哲学を表現しています。例えば、直島プロジェクトでは廃れた島を世界的な美術館の島へと再生させ、未来を見据えた価値創造を実現しました。また、子供の図書館の設立では、次世代に向けた教育環境の提供を目指し、「未来の子供たちのために、私は何ができるかを考えた」と語っています。
安藤氏の取り組みは、現状維持ではなく、常に新たな価値を模索し続ける姿勢に支えられています。安藤氏にとって「構想力」は、青いリンゴ。例え未熟であっても明日への希望に満ち溢れ、行動し続けることを意味します。青いリンゴは、安藤氏が情熱と行動をもって育んできた「構想力」の象徴ではないでしょうか。
※Aoba-BBTオンライン映像講座「会社を変える発想創出プログラム 01『構想力』講師:安藤忠雄氏」より作成しています
サミュエル・ウルマンの詩「青春」をモチーフに、安藤氏がデザインした屋外オブジェの「青りんご」(兵庫県立美術館)
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構想力を育むための3つの具体的な方法
未来を見据えた「構想力」を育むには、以下のポイントが重要です。
1.未来を想像し、具現化するトレーニング
構想力の基盤は、理想的な未来を具体的に描き、それを実現する方法を設計する力にあります。現在の延長線上ではなく、新たな可能性を創造するために、以下のような訓練を取り入れることが有効です。
- 未来のビジョンを描く: 10年後の理想的な自分や組織の姿を文章や図で表現し、その実現に必要なステップを考える。
- 複数のシナリオを検討: さまざまな未来の可能性を想定し、それぞれのシナリオが現実化する場合の影響や対応策を分析する。
2.新たな視点を融合する
構想力を身につけるには、自分自身の視点だけでなく、多様な観点や経験を取り入れることが重要です。新たな発想を生み出すための具体的な取り組みとして、以下の方法が挙げられます。
- 成功事例と失敗事例の分析: 他分野のビジネス事例を深掘りし、独自の目的やプロセスを検証することで、新しいヒントを得る。
- 異業種や多文化との交流: 異業種交流プログラムや国際的なイベントに参加し、異なる分野の視点や考え方を学ぶ。
3.具体的な行動を通じた試行と応用
構想力は、行動を通じて試行錯誤し、学ぶことで真価を発揮します。理論を実践に落とし込み、現実の課題に取り組むことで、応用力を身につけることが可能です。
- 仮想の課題を設定: 例えば、「競合が新製品を発売した場合、どのように対応するか」といったシナリオを設定し、チームで対応策を考える演習を行う。
- 実務プロジェクトへの挑戦: 実際の業務に関連した新規事業の立案や業務改善のプロジェクトに参加し、結果を評価しながら改善点を抽出する。
- フィードバックと振り返り: 実践結果を基に振り返りを行い、次に活かすための具体的な行動計画を立てる。
「もしも私が『自分株式会社の社長』だったらどうするか?」というテーマに取り掛かるのも、構想力を鍛えるトレーニングの一つになる。経営コンサルタントでAoba-BBT創業者(当時は、ビジネス・ブレークスルー)の大前研一は「人間が変わるためには、具体的な行動の変化が必要であり、決意だけでは不十分である」という考えを提唱している。この考え方は、大前の著書や講演で頻繁に語られており、特に「時間配分」「住む場所」「付き合う人」の三要素の重要性を強調している。
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RTOCSを活用した実践的アプローチ
社員の「構想力」を養うためには、座学を超えた実践的な学びが必要です。その代表的な例が、Aoba-BBTが提供する「Real Time Online Case Study(RTOCS®)」です。このプログラムは、受講者が実際の経営課題に取り組みながら、「構想力」を鍛えることを目的としています。
現実の経営課題を題材にする
RTOCSでは、受講者が「私が○○会社の経営者なら」と実際の経営者視点で現実的な課題を分析し、解決策を立案します。これにより、単なる知識の習得ではなく、未来を見据えた戦略を実践的に学ぶことができます。
リアルタイムの意思決定力を養う
異業界・異業種の経営者の立場で考えるシミュレーション形式での課題解決を行うことで、受講者は即応的な判断力や実行力を身につけます。これにより、急激な環境変化にも対応できる能力が育まれます。
800人以上の起業家を輩出
Aoba-BBTグループが提供するプログラムからは、800人以上(うちIPOを果たした企業は20社以上)の起業家を輩出。ほかにも新規事業の立ち上げや既存ビジネスモデルの刷新など、さまざまな成果を上げています。これらの実績は、プログラムが現実のビジネス環境での成功につながるものであることを証明しています。
RTOCSは、大前研一が実践してきた「思考法」をプログラム化した実践トレーニング。2005年以降実在する企業や団体900件以上をRTOCSで扱い、公開情報を基に現在進行形の課題を発見し、その解決策を提案している。
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構想力が未来を創る原動力に
藤井名人が豊島九段の構想力に感銘を受けたように、現代のビジネスでも、未来を見据えたビジョンと戦略を描く「構想力」は、成功を左右する鍵です。企業が変化の激しい環境で生き残るためには、社員一人ひとりが構想力を身につけ、未来を形作るためのリーダーシップを発揮する必要があります。
Aoba-BBTの実践的プログラムを活用することで、企業は構想力を備えた人材を育成し、競争力を強化することが可能です。未来を見据え、企業、そして社員の新たな成長の道を切り拓く準備を始めてはいかがでしょうか。構想力こそが、企業の未来を創る原動力となるのです。
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